1167話)燕雲十六州

万里の長城は南の農耕地帯と北の遊牧地域との境界にあたります。地図でみると、北京市、河北省、山西省のあたりで、北側の外城と南側の内城とで二重になっています。
農耕民族、つまり漢族の力が強いときは外城までが勢力範囲になり、力が弱まると内城が境界になりました。内外長城に囲まれた範囲は支配民族が何度も入れ代わったわけですね。
代表的なのが遼・金の時代。遼代は契丹族、金代は女真族がここを支配し、南には漢族を中心とする宋があり、内外の長城が囲む部分を中心に燕雲十六州と呼ばれていました。燕(幽)州は北京の一帯、雲州は大同の一帯です。そしていまの蔚県と大同市の広霊県、霊丘県一帯が蔚州で、燕雲十六州に属していました。
宋にとって燕雲十六州の回復は悲願でしたが、奪回どころか、金によってさらに南に追いやられました。漢族は戦には弱いんですね。何度も征服されました。でもそこからがすごいところで、征服したがわがいつのまにか解体吸収され、民族そのものが消えてなくなることも少なくありません。
宋にあって例外的に強かったのが楊業とその息子たちで、その活躍の物語『楊家将』は中国では人気です。『水滸伝』の青面獣楊志は楊業の子孫という設定ですし、北方謙三がさらに『楊令伝』、『岳飛伝』と物語をつないでいったのは、この時代を背景としています。
写真は南隣りの(保定市)涞源県の烏龍溝長城です。

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