Takahiko Shirai Blog

記録「白井喬彦」

中国の反日デモ余聞

2005-04-13 11:48:42 | 国際
北京をはじめ、日本人ジャーナリストは中国各地に大勢滞在しているはずであるが、ようやく今日(2005年4月13日)になって、現地から生々しい報告が入ってきた(Sankei Web、産経新聞)。「生々しい」といっても反日デモ行列に混じって取材したというわけではなく、現地の反日サイトの掲示板を丹念に分析したものだった。

現地の反日サイトの掲示板なら日本からでも見ることができる。中国語が読めれば、このような報道は日本にいても十分にできたわけだ。インターネットの掲示板なら、世界中どこからでも自由に閲覧することができる。これがインターネット時代というものだ。

この記事は産経新聞北京駐在員の福島香織記者が書いたものであるが、この中で「(インターネットの)掲示板の内容などを総合すると、デモの目的は、反日サイトが展開する日本の国連安全保障理事会常任理事国入りの反対署名と連動させ、メディアを使って国内外にアピールすることだった。中国当局が、当初、デモを許可したのも、この狙いに対するデモの効果を認めたためと思われる」としている。

やはり、反日デモの第一の狙いは、中国が日本の国連安全保障理事会常任理事国入りに反対であることを国内外にアピールすることだったのであろう。

中国外務省の秦剛副報道局長は、4月12日の定例会見で日本側にはまったく陳謝せず、「(反日デモは)日本政府の歴史問題に対する誤った態度について不満を表したものだ」とした(産経新聞)。

また、温家宝首相も、同日、訪問先のニューデリーで記者会見し、日本の国連安保理常任理事国入り問題について、「歴史を尊重し、責任を負う国だけが、アジア、世界人民の信頼を勝ち取り、国際社会でさらに大きな役割を果たすことができる」と述べ、歴史問題の解決が前提となるとの見解を示し、日本は中国の反日デモを教訓とするよう求めた(毎日新聞)。

たまたま北京を訪れていた共同通信社の山内豊彦社長と同日会談した唐家璇国務委員は、中国での反日デモで揺れる日中関係について、「肝心な問題は靖国(神社参拝)問題だ。関係改善にはこの問題は避けて通れない」と述べた(共同通信)。

中国の要人たちのこれら一連の発言から、「歴史認識」、「教科書歪曲」、「小泉首相の靖国参拝」など、日中間に横たわる諸問題について、彼らは日本の国連安保理常任理事国入りの問題とほとんど同一視していることがわかる。つまり、彼らの真の狙いは日本の安保理常任理事国入りの阻止にあり、その背後に台湾問題があるのではなかろうか。


Sankei Web

中国の反日サイト“反省”
「デモ予想外の暴走」

 北京、広州などで発生した大規模反日デモの暴徒化を受けて、中国の反日サイト上で反省を含めた興味深い議論が続いている。企画側の当初の目的は、日本の国連安保理常任理事国入り反対をアピールするため、統制のとれたデモを国内外メディアに報道させることだった。しかし、参加者の暴走により、経済への打撃や社会不安を引き起こすことへの懸念が高まっている。(北京 福島香織)

◆ 続々書き込み

 北京デモは当初、警官の先導に従い海淀区の学生街を二時間で一周し正午に解散の予定だったが、シュプレヒコールを続けているうち興奮した学生や観衆が、警官やリーダーの制止を振り切り、ルートからはずれ出した。そのうちいくつかのグループに分かれ、暴力行為に走ったとみられている。

 北京デモで中核的役割を果たしていた組織のひとつ「中国918愛国ネット」は十一日、反日デモ参加者に「過激な行動は停止せよ」と訴える声明を発表。

 また「中国民間保釣(尖閣諸島防衛)連合会」の掲示板も「反日デモの変質を防ぐための提案」など反省を促す書き込みが相次ぎ、今回のデモ暴徒化は反日活動家内部では予想外だったことがうかがえる。

 連合会の掲示板では、メンバーが「デモの不協和音を防ぐため、学生自身に規律隊を組織させるべきだ」と主張していた。

 その上で今後のデモについて、(1) デモ参加者の制限、(2) デモ参加者の言行の監督管理、(3) 意図的なトラブルの防止、(4) スローガンの整理と規範化、汚い言葉の禁止、(5) 警察との協力と秩序維持、(6) デモルートの厳格な制御、(7) 学生と観衆の感情制御失調への警告と対応手段の確保-という七項目の措置を提案した。

◆ 大学も厳戒

 共産党機関紙・人民日報電子版に設置されている掲示板、強国論壇では「大学生の知能はますます弱くなっており、簡単に人に利用される」「学生は不幸だ。駄々っ子にもなりきれず、人形になっている」など、今の学生が自分の意見ではなくムードに流される傾向を問題視する声が見られた。

 北京デモ後、市内の大学に日本関係の講義、活動を自粛するよう通達があった。ある学校関係者は、個人の主義主張がはっきりしている反日活動家よりも学生の方が制御が難しい、という。

 北京大学の日本人学生は「友達も何人かデモに参加していた。日本人留学生が受ける視線が急に厳しくなっている」と話している。

◆ 狙いと結果

 掲示板の内容などを総合すると、デモの目的は、反日サイトが展開する日本の国連安全保障理事会常任理事国入りの反対署名と連動させ、メディアを使って国内外にアピールすることだった。

 中国当局が当初、デモを許可したのも、この狙いに対するデモの効果を認めたためと思われる。

 ただ、思わぬデモの暴走は中国のカントリーリスクも露呈した。強国論壇には「(デモによる反日機運の高まりで)中日合資企業が破産すれば、何万もの出稼ぎ農民が餓死する」と日中経済関係の深さを指摘する書き込みもあった。

 連合会サイト掲示板は「大規模反日抗議活動が政府に対する突然の攻撃となってはならない。でなければ、結果は制御が難しくなる」と、内政攻撃、社会不安を招くことに強い懸念を示している。

【2005/04/13 産経新聞(東京朝刊)から】
(04/13 08:58)


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