人事を尽くして天命を待つ
所得控除は、所得税の計算において
”もうけ”を減らす
効果があることは以前述べた。そこで疑問が湧く。
所得控除が多すぎたらどうなるの?
結論を言おう。’もうけ’は
マイナスにはならない
つまり、多すぎる所得控除は切り捨てられそれ以上役に
立たない。まあ、厳密に言えば全く効果がないとは言え
ないが、所得税に関して言えばこれ以上税金を減らす効
果はない。
だったら、こうは考えられないだろうか?
切り捨てられる部分があるくらいなら、
その部分を誰か他の人に使えないだろうか?
そのとおり。それは可能である。こんな例がある。
ここに自営業者の男がいる。彼の奥さんは会社員である。
そして子供さんが2人。今年は、彼の事業の業績が悪く、
利益があまりでなかった。そこで、彼は確定申告のため
税額の試算をした。以下にその計算過程を示す。
①事業所得 100万円
②所得控除
社会保険料控除 30万円
生命保険料控除 5万円
扶養控除 101万円
基礎控除 38万円
合計 174万円
③課税所得金額(税法でいう’もうけ’)
①-②=0
税金は、③の金額の千円未満の端数を切り捨て、
その大きさに応じた税率をかけて計算する。
(もちろん厳密にはこの先にも計算することは
あるが、ここでは話をわかりやすくするために
省略する。)
彼は、税金が出ないと喜んだが(業績が悪いんで
大手を振って喜んだわけではない)、果たして
これでハッピーエンドだろうか?
申し訳ないがそうではない。事業所得という税法
の世界からみた事業の利益は、100万円しかな
い。なのに、そこから引ける所得控除額は174
万円。74万円も無駄になっている。
自営業者にはありがちなパターンである。税理士
さんに決算から申告まで丸投げしている人は、
この無駄に気づかない。会計事務所がもし、彼の
家族の状況をもっとちゃんと把握していれば、
この無駄は避けられたかもしれない。しかし、
専門家といえども、神様ではない。万能ではない
ということだ。自営業者自身も、専門家にどんな
ことをちゃんと伝えれば、最善の処理をしてもら
えるかわかっていない。当然といえば当然である。
それでは、専門家がもし状況を適切に把握できて
いればどうだったのか?
子供を奥さんの扶養にすること
で奥さんの所得を圧縮できたはずだ。彼と奥さん
両方の所得から認められるすべての所得控除が差し
引けるようにできればその家族全体でみれば所得税
を最小に押さえることができたのだ。
あなたは、所得控除を使い切っていますか?
それでは、またお会いできる日を楽しみに。
