[映画] 攻殻機動隊 新劇場版

「攻殻機動隊 新劇場版」を川崎TOHOシネマズにて観て来ました

シリーズの前日譚として、一昨年から劇場にて四部作で公開された「攻殻機動隊ARISE」の流れを引き継ぎ、最終的に草薙素子やバトーらが公安9課に所属して ”攻殻機動隊” が誕生する迄が描かれるのが今回の「攻殻機動隊 新劇場版」です

「攻殻機動隊」は25年前に発表された士郎正宗の漫画版を祖とし、20年前の押井守による劇場アニメ版によって世界的な知名度を獲得したのを契機に、TV版の「SAC」シリーズやゲーム版といった派生作品が次々と生み出されて来たワケですが、それぞれのバージョンでそれぞれが似て非なる世界観を表現しているのが特徴でして、今回の「ARISE」もまた新たな世界観を持つシリーズ作品という事になります

ですが、原作である漫画版に登場する設定やエピソードの多くが各シリーズで重複しているのも事実で、今回の「攻殻機動隊 新劇場版」に登場する要素も、後の”攻殻機動隊” 設立後に繋がる設定やギミックがそこかしこに出て来るカンジでして、旧来のファンであればあるほど、細かい部分で面白さが何倍にも感じられる内容になってるのではないでしょうか

そして「ARISE」のborder3のラストにて脅威のウィルス ”ファイヤスターター” の核心部分に素子が絡んでると示唆された状態のまま、border4やテレビ版AAAでずっとモヤモヤしっぱなしの放置プレイ状態(^0^;)だった観客・視聴者へ、全ての ”解決” が示されます

また従来のシリーズ作とは決定的に違う象徴的な要素として、素子たちがまだ若さやチーム結成前の未熟さ故に、イロイロと迂闊な行動を取ったり敵に翻弄されっぱなしな部分が多い事からか、”「ARISE」はちょっと…”といった声もネットで結構見受けられるんですが、そういった汚名を返上する展開も満載なので「攻殻機動隊 新劇場版」は是非見ておくべき！と声を大にして言いたいですね



以下ネタバレ感想：
いやー、まさか「攻殻機動隊」でこんなに哀しい物語が綴られることになるとは…(ノД`)

今回のラストで押井版「攻殻機動隊」の冒頭シーンへと見事に繋がるというカタルシスで（更に2ndGIGのラストの要素まで！）、何だか感極まってしまった～というのも事実なんですが(^_^;)、「ARISE」から続いて来た今回のストーリーの最大の特徴として、（旧来のシリーズでは表現され得なかった）”素子の成長要素” が語られたというのが非常に大きかったと思います

「失うモノが無いんじゃない
　あいつは失うモノを持った事が無いんだ」

記憶力だけで書いてるのでセリフの細部は違うかもしれませんが、このバトーのセリフが全てを象徴してますよね……素子が事あるごとに仲間達を ”パーツ” 呼ばわりする事に、トグサを筆頭にメンバーは大なり小なり反感を覚えますが、あれが素子なりの最大の ”愛情表現” だったって事が少しずつ観客にも伝わって来る構造になっているのが実に上手い脚本だと思いました（素子の過去や人生を構成している全てであり、最も大事な存在が ”パーツ” なんですよね）

素子の前髪がぱっつんなデザインだったのも（幼さ故の）”無防備性” を象徴していたんですな……確かに「ARISE」から（前髪を下ろす）劇場版の終盤に至るまで、素子はひたすら電脳戦でもやられっぱなしでしたしねえｗ

501機関のクルツという存在もあくまで遠隔操作義体の一つという事なので、”本人” についても便宜上、クルツと呼びますが、おそらく素子と同様のアイデンティティの欠落感を持っていたクルツはクルツで、独自に生存戦略を練って行動していたんですな…(T_T)

ラストまで見て、”ファイアスターター” がウィルス名なのか人名なのかという問いに対して、
「違いがあるのか？」
とクルツが答えた事について納得が行きましたが、なんて哀しい境遇だと、劇場を後にしてからじわじわと涙がこみ上げて来て仕方が無いです(´；ω；`)

そしてそのファイアスターターですが、”罪悪感みたいなツラい過去や哀しい想いを核として疑似記憶をパッケージングする”～といった仕組みだと荒巻が解説していたかと思いますが、何故そんな仕組みになっているのか？……それは制作者のクルツ自身がそういう風な記憶や想いしか知らなかったからではないか、とか考えちゃうともう、益々涙が止まらなくなってしまって…(ノД`)

今回は ”第三世界” へと旅立つクルツを見送る立場だった素子ですが、いずれ（遠回りをするだけで）素子も同じ道を辿ることになる事を知ってるオレら観客にとってまた複雑な味わいを残す素晴らしいオチだったと思います

映画感想一覧

攻殻機動隊ARISE第一章、攻殻機動隊ARISE第二章、攻殻機動隊ARISE第三章、攻殻機動隊ARISE第四章