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[映画] 太陽

2007-04-08 | 映画

070407 レンタルDVDにて観賞

終戦の直前辺りから「人間宣言」を行うに至るまでの昭和天皇の数ヶ月間を描いたロシア映画です

まともな戦争映画すら作られなくなってしまっていたつい最近までの日本映画界では、天皇を主人公に据えた映画作品などとても考えられない状況で、この映画も日本の劇場での一般公開すら危ぶまれていました

厄介事をタブー視してあえて触れないようにすることは、いい意味でも悪い意味でも日本人の特性だと思いますが、その意図が悪意に基づくものではない限り、どんな問題でも表現の自由は保証されて然るべきだと思うんですけどね…イーストウッドの「硫黄島からの手紙」にしてもそうですが、どうしてこういう日本人が作るべき映画を外国人が作っている現状に甘んじて、悔しい思いをしないといけないのか…orz

まあ、ようやく好転の兆しの見えてきた日本映画界を嘆いてばかりいても仕方ないので、今後に期待ということで

で、この「太陽」ですがロシア映画です…ロシアの映画だとオレは最近、「ナイト・ウォッチ」という作品を見ました
あれは随分とハリウッドナイズされたSFアクション映画でしたが、それまでのロシア(旧ソ連)映画というとオレは「惑星ソラリス」くらいしか見たことがなかったもので、どうしても”眠い芸術作品”というイメージしかありませんでした

「太陽」も、確かにそんなイメージ通りの”眠い”作品ではあったんですが、やはり題材が題材だけに興味深く見ることが出来ましたね

今の日本にあって、天皇が神の系譜に連なっていると本気で信じている日本人はほとんどいないと思いますが、少なくとも周囲が本気で”神”として祭り上げていた”裕仁”という人間がかつて存在していたことは事実で、そんな昭和天皇が徐々に”人間”としての立場を獲得していく様子が淡々と語られています

イッセー尾形は舞台のひとり芝居で有名で、昨今の映画やテレビではあまり見かけない役者ですが、非常に愛嬌のある昭和天皇を演じているのが素晴らしかったですね
日本中が空襲で焼かれている悪夢のファンタジー性をはじめ、他人との会話ひとつとってもまさに”浮世離れしている”という表現がピッタリの昭和天皇ですが、誠実で教養深くて、それでいてちょっとユーモラスで…マッカーサーが直接会談に臨んで、すっかり煙に撒かれている様子は(物凄く逼迫した状況なのに)どこか痛快ですらあったです

こう表現してもいいものかわかりませんが、丸っきり”オタク”のそれだったのが何とも…w
他者との人間関係が極度に薄い人生を歩んでいる人間として、共通するものがあったりするんでしょうか

あの口をパクパクさせる仕草や、”あ、そう”という口癖はオレでも知っている昭和天皇の特徴ですが、実際にどこまで似ているんですかね?
マッカーサーとの会談内容についても実際はそのほとんどが非公開らしいので、この映画で語られている内容はほぼ推測でしかないんでしょうが、とても”らしい”と感じました
特に前半の展開なんかは非常に”眠い”んですが、その辺りの丁寧な積み重ねがこの不思議なリアリティを発生させてるんでしょうね

そして終盤になって初めて登場する、桃井かおり演ずる皇后がまた良かったです…正確には昭和天皇とのやり取りが素晴らしいんですが、これは映画の最後のヤマ場なので内容については触れないでおきます

この映画で唯一、残念に感じたのが、焼け野原の描写が日本の風景には見えなかったこと…もちろんオレ自身、焼け野原になった都市を実際に見たことがあるわけではありませんが、資料写真やらこれまでの日本映画に登場した光景と比べると”何かが違う”と、どうしても違和感を拭えませんでした
…ひょっとしたら監督の何らかの意図だったのかもしれませんが

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