活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

マクドナルド 安さの訳  原田泳幸CEOに聞く

2009-10-05 02:35:44 | Weblog
2009年10月1日(木) 毎日新聞夕刊 2面夕刊ワイドより
インタビュイー:原田泳幸(日本マクドナルド 最高経営責任者(CEO)) 
インタビュアー:小松やしほ(毎日新聞記者)
サブタイトル :「基本」見直しただけ
        100円マックは低価格戦略でない
                    -客の想像超える提案だ


さて、マクドナルド。
言わずと知れた、日本ファースト業界の雄である。


記事には、グラフが一つ添付されている。
「マクドナルドの営業利益の推移」とタイトルが付けられた、このグラフ。
2003年までは、フリーフォールもかくやとばかりの急降下のラインを
描いている。

00年の営業利益が約300億円だったのに対して、03年のそれは僅か
30億円ほどなのだから、その落差の激しさの凄まじさがよく分かると
いうものだ。

※ 数値は、グラフからの読み取りのため、精度はおおよそである。

もっとも。
02、03年がかろうじて黒字でいるのは、02年から連結決算とした
ためであり、日本マクドナルド単体でみると両年とも赤字だったことが
インタビューの冒頭で示唆されているので、実態は更に過酷だったという
ことだろう。


インタビューは、04年の就任以降、ほぼV字回復を実現している原田
CEOに対して、まず業績回復の種明かしを求めるところから始まる。


その問いに対する、氏の回答はシンプル。

一言で言うと、「当たり前のことをまじめに」やるということ。

氏は、レストランビジネスの基本を、「おいしいものをお出しする」と
定義する。

では、おいしいハンバーガーとは何か?

作り置きではなく、注文があって初めて作ることによって、常に出来たてを
提供できるようにすること。


昔、知人がマクドでバイトしていたことがあった。
彼に聞いた話では、確か作って5分すれば廃棄するようなルールが、当時は
あったと思う。

そうした仕組みを見直して、常に受注後の生産方式(モスバーガーでは既に
既定路線だが)に切り替えた、ということである。


まあ、そこ止まりなら、目新しくも何ともない。

面白いのは、ここから。

お客のニーズと価値観を分析し、もっとも訴求力のある価格帯と品質を
徹底的に分析。
そこから導き出されたのが、100円という価格。

その100円という価格に、如何にハンバーガーの値段を押し込めるか?
ではない。

それを低価格路線と称して、氏は真っ向から否定する。

その上で氏が推し進めたのが、お客の予想を上回る付加価値を付与していく
という戦略である。

その具体策の例として、もっとも分かりやすいのが「プレミアムロースト
コーヒー」の100円での登場である。


インタビューの中で氏も言及しているとおり。

殆どの人は、マクドのコーヒーに期待なんかしていない。

ファミレスと同様に、サーバーの中で煮詰められたような液体が出される
だけというくらいにしか思っていない人が、僕を含めて大半のはずだ。


それでも。
甘いものは欲しくない。
眠気覚ましにカフェインが欲しい。

そういった時の、消極的消去法の結果としてのコーヒーの注文があったに
過ぎないのではないか?


そこを、氏は見直し、マクドのコーヒーはおいしいというコンセンサスを
生み出した。
しかも、それを100円で提供した。
これが、商品の付加価値化戦略であり、お客の期待値以上のものを提供する
ことにより、満足感を生み、引いてはリピート率を向上させる、というもの
である。

ここまで読んだとき、以前に書き起こしたキーエンスの製造戦略の話しを
思い出した。

あの会社も、オーダーメイドでものを作る際に、徹底した汎用化検証を行う
ことで、少々開発期間を犠牲にしても、安価な製品を生み出し、かつ再販率を
高めることで投下資本回収の効率向上を図ることを実現したとあった。

両社、ともに。
客の注文に対して、その期待値以上のものを提供するという戦略を取ることが、
引いては自社の経営体質強化に繋がるという話しは、とても説得力があった。


最近、特に。
仕事の上で、供給されるアウトプットの品質に悩みを抱えている身としては、
特に、である(苦笑)。



ここまでは、非常に共感を持って読んだのだが、ここから先は少し話しの
毛色が違ってきた。


記者は、数年前にマクドナルドで問題となった名ばかり店長の話を取り上げる。

相手が嫌がる話しをぶつけて、その感情の動きから本音を聞きだすという
戦略を取っているのだろうが、そのストレートさに危うさも感じるぞ(笑)。


果たして、氏は。
店長への残業代支払いにより、店長のES向上とともに店長の質も向上。
更に店舗のクルー(アルバイト社員)を14万人から16万人へと、1割以上
増加させることで、店長とクルーの業務の棲み分けの明確化を実現。

その結果、クルーの数倍の時間外費用のかかる店長が、クルー代行として
行っていたような無駄な時間外が削減され、かつ店舗に与力が出来てきた
ことでクルー全体のESも向上。

それにより、店舗全体の意識の向上という、好循環を実現したと語る。


その語りの最後には、マクドくらいの規模を誇る会社で、ただ働きをさせる
ような経営をしているような見解を持つなど、ありえない。大変失礼な
質問だと記者を切って捨てさえするのだ。


だが。
その後、マクドではどのようなことが行われているのか?
名ばかり店長と称せられていた人々の処遇は、どう改善したのか?

ネットでの、根拠も不明な投稿を読み集めても、何の説得力も持たぬ故。
そこで拾ってきた話しをここに再掲したり、リンクを張ることも自重しよう。


それでも。

マクドにおいて、名ばかり店長という問題がどのような帰結を経たのか。
その労働の質、量ともに、どのような変化があったのか。

これについて、きちんと解析した上でなければ、本件についての解答と為す
ことは出来ないだろう。


その答えは、今はまだ無い。

が、しかし。
インタビューに応える氏の語り口からの印象では、どうも本質は何ら見直しを
されていないようにも見えてしまう。

(そもそも、名ばかり店長問題は、氏が社長を勤めるようになった以降も
 恒常的に発生していた問題である。
 
 店長が裁判を起こしたことで露見したが、そうでなければこの問題は
 変化なく継続していったと見るのが普通であろう)


”i’m lovin’ it"

この言葉を、経営者、従業員、顧客の三極が語ることが出来ているのか。

氏の語る経営哲学は、この裏づけがあって、初めて力を持つといえよう。


(この稿、了)



(付記)
ちなみに、サブタイトルで表記されているマック。
関西では、マクドと称する。
関西でマックと言えば、リンゴ印のハードメーカーのことである。
関西に来て、関西人に「マック行こう」というと、アップルストアに
案内されるから、気をつけるように。

#って、誰に言っているんだか(笑)




100円マックのホスピタリティ―マクドナルドを復活させたホスピタリティ5つの鍵
山口 廣太,夏木 れい
エイチアンドアイ

このアイテムの詳細を見る
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 自分なりのゴール決めよう ... | トップ | この国はどこへ行こうとして... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Weblog」カテゴリの最新記事