スポーツニュース担当記者たち

関西でのテレビ放送の第1回は昭和２８年8月23日だった。NHK制作で阪急西宮球場よりパ・リーグ公式戦、阪急ブレーブス対毎日オリオンズのナイター試合が放映された。

当日の他球場がすべて日曜のダブルヘッダー開催であったため、夜7時の試合開始と同時に中継スタートできる唯一の試合として、阪急西宮球場の試合が選択された。

一方、関東では、その4日後の昭和２８年８月２７日、郵政省は、東京都千代田区麹町の日本テレビ放送網株式会社に対し、本免許を与えた。日本テレビは、８月２８日午前１０時にテスト放送を出し、１１時２０分の開局式実況によって、民間テレビのスタートを切った。

「１６ミリによる軽い社会探訪ものに特色を出していきたい。タイトルの　変わり目もNHKは２０秒から２５秒ぐらいあるが、日本テレビは１０秒で見るニュースであることを強調したい」と報道部長は意欲的だった。テレビニュースは、８月３１日から読売新聞の担当で始まった。

呼び物は、朝日、毎日、読売の3社が腕くらべの「国内ニュース特集」でスポンサーを希望する会社が殺到した。コマーシャル番組の売行きは、プロ野球、舞台中継などを入れると、目標の1日3時間のうち、2時間はすでに突破した。テレビメーカー、薬品、化粧品、食料品など約80社がスポンサー契約を結んだ。


8月29日、関西に6日遅れる形で、日本テレビ制作で後楽園球場より読売ジャイアンツ（巨人）対大阪タイガースのナイターがセ・リーグのテレビ初放送が始まった。この日は、民間テレビ放送による中継としてもはじめての日となった。

スポーツニュースを担当するスポーツ記者らは、取材の合間に、この年の新人選手について、語り合った。

A「今年は、大分新人が出てきているようだね。今年あたり古い選手と新しい選手がだんだん入れ替わるんじゃないか。いまのところ、これはというような新人はいるの？」

B「新人というと、今年は言った者と限定されるが、そうじゃなくて、ベンチにいたり、2軍にいたりしてうまくなった選手という意味でね。今年は大分いますよ。まず、パリーグからいくと、井上（南海）あたりはうんとよくなった。毎日でも勝ち星は少ないが、清水とか植村とか、和田とか・・」

C「たくさんいるが、あの連中は今年はあまり投げていないよ」

B「うん。投げていないけど、素質はいい」

C「だけど、何かつぶしてしまったような感じがある」

A「太田は？」

B「試合に出ていることは出ているが、勝負が決まったような試合しか出ていないからね。養成する方法としては、いい方法だ。それでなかったらなかなか試合に出せないからね」

D「阪神の渡辺省は？」

A「渡辺省は、巨人との試合で自信をつけている。この間対洋松戦にも相当自信を持って投げていたが、藤井にやられたね」

B「セントラルの新人で最もいいのは、阪神の吉田。」

D「吉田は掘り出し物だ」

C「打撃があそこまで行けるとは思わなかった」

A「セントラルのピッチャーは、別所が圧倒的だな」

C「それに、梶岡、杉下、藤村弟、長谷川、藤本、大友、あとは人気のあるところで渡辺省。」