人生に必要なことは、すべて梶原一騎から学んだ

人間にとって本質的価値「正直、真面目、一生懸命」が壊れていく。今こそ振り返ろう、何が大切なのかを、梶原一騎とともに。

悪魔か女神か

2007年09月24日 | あしたのジョー

段平のミスによって、失格に終わったカーロスとの四回戦エキジビション。

再度対戦を望むカーロスと、危険を察知し、直ちに帰国しようとするロバート。

カーロスもこのときばかりは一歩も引かない。それはそうだ、ついにカーロスは真のライバルに巡り会えたのだ。ジョーも力石以来、魂が共鳴するような相手についに出会えた。

そこへ葉子がまたまた、提案する。今度は6オンスのグラブで10ラウンドフルに戦うメインイベントでやればいいと。

ジョーは葉子にいう

「それにしても・・なんともはや、驚いたね、あんたって人は

時々思いもかけないような運命の曲がり角に待ち伏せしておいてふいに俺を引きずり込む・・・まるで悪魔みたいな女だぜ」

「迷惑だったかしら」という葉子に

「迷惑なんかじゃない。その悪魔が、おれの目にはヒョイと女神に見えたりするからやっかいなのさ。へへへ・・それそれ。そんな鋭い目でにらむのはやめてくれ」

 

葉子もそれほど計算ずくで行動している訳でもない。人と人が関わることに、そんな細かい計算が入り込む余地もない。

しかし、それぞれの持つ運命の糸が、自然に絡み合い、一つの道につながっていくのだ。人と人との関係というのはそういうものだ。

ある程度の読み、ある程度の計画、それに偶然の要素・・そしてもっとも重要なのはおそらく「運命」とか「縁」とかいうものだろう。

何をどう画策したとて、縁なきところには何も生まれはしない。逆に、何もしなくても縁は向こうからやってくる。自分から求めるエネルギーと向こうからやってくるエネルギーが共鳴したとき、大きな変化が起こる。そのタイミングは自ら導ける物でもない。ただ、日々魂をとぎすませ、強い意志を持っていれば(それが表面に現れていようがいよまいが)、タイミングを物にするチャンスも広がるだろう。

人生は計算では動かない。万が一のタイミングのために、何も起こらない9999の日常を怠らずまじめに精進する、それが人生だとわしは思う。


エキジビションマッチ

2007年09月23日 | あしたのジョー

カーロスとのエキジビションマッチが始まった。世間は何の緊張感もなく、ただのショーくらいに思っている。落ちぶれたジョーの実力など鼻にもかけていないのだ。

練習で過剰なテンションを発揮するカーロスを何に殺気だっているのかわかっていなかった。

わかっているのは、ジョー、段平、葉子、そしてカーロスとロバートだけだ。

世間は、このエキジビションを仕組んだのは白木ジムなので、力石を殺された腹いせにリング上でジョーに制裁を加えるくらいに思っていた。

そして、ついにゴングはなった。ジョーはいつかのスパーリングでロープ際から、ロープの反動を利用したクロスをカーロスにかましていた。それを警戒してくるだろうと予測して、ロープ際の作戦をとった。

カーロスは、ジョーを買いかぶっていたと不敵な笑みを浮かべ、ロープ際でストレートではなくアッパーを放った。その瞬間、カーロスは悶絶した。

ジョーはカーロスがそうくることを予想し、アッパーをかわして、ロープの反動を利用したボディブローを放ったのだ。

ゴングに救われたカーロス。ロバートはいう

「カーロス、今更恥ずべき話だが・・・お互い最初の直感に素直に従っておくべきだったようだな・・」

「どうもそういうことらしい・・・・だがそんな失敗など、今、この身のうちにふつふつとこみ上げてくるうれしさやゾクゾクと血のたぎるような喜悦にくらべれば問題じゃない。

ついに出会ったんだぜ、ロバート。このカーロス・リベラがもてる技術のすべてを駆使し、命の限りすべて燃やし尽くせる真のファイターにさ・・・!」

いろいろ作戦を教示するロバートを制してカーロスはいう

「あの、ジョー・ヤブキを相手に、へたに作戦など立てない方がいい。ふふふ、久しぶりに気兼ねなく打ち合える相手を見つけたんだぜロバート。小細工はいらん。

わかるかいロバート?今はただ、のびのびと本能の命ずるままに力一杯戦ってみたいんだ。それだけだよ」

ロバート「わかった・・ユーの本能を信じるよ・・・」

そこから壮絶な打ち合いが始まった。ジョーはカーロスのお株を奪う、ストレートを打ちながらひじうちをかまし、ダブルノックダウンとなった。

リングの外に落ちたジョー。カウントかすすみ、もう少しでリングにもどれるという、その瞬間、思いあまって段平はこともあろうにジョーの尻を押してリングにもどしてしまった。そして、ジョーは即失格を宣言された。

怒り出す観客たち。物と罵声が飛び交う

段平を責め立てる会場に、ジョーが一括する「がたがたさわぐんじゃねー」

ジョーはいう

「力石戦以来、つきまとっていたモヤモヤが全部燃え尽きちまったみたいで・・・なんだかこうさわやかな風が体の中を吹き抜けるようにえらく気分がいいんだ」

そう、ジョーはカーロスのテンプルに思いっきり強打をぶち込んだが、吐き気におそわれることはなかった。ついにジョーはトラウマから抜け出せたのだ、葉子の荒療治とカーロスの野生によって。


カーロスの実力

2007年09月22日 | あしたのジョー

カーロスリベラがついに牙をむいた。予告通り、いやそれどころか、1ラウンド開始直後にストレート一発で日本チャンピオンのタイガー尾崎をマットにしずめた。

カーロス側は、これまでの流れはすべて計算通りだったと告白する。そして、マネージャのロバートはビジネスを終えて早々にベネズエラに引き上げようとする。

しかし、そこにジョーが絡んできて、カーロスを挑発する。カーロスもスパーでの借りがあるし、ジョーの実力に気づいている。カーロスの野生がジョーの野生と共鳴しあっているのだ。

白木葉子はエキジビション4回戦を提案し、それに法外の報酬を提示した。そして、カーロストvsジョーの対戦が実現することになった。

ジョーはつぶやく

これの意志とはべつに、いずれこうなるように仕組まれていたような気がしないでもないがね、葉子さん。まあ、いいさ。サイは投げられたんだ。問題はエキジビションだ。そう問題はエキジビションの4回戦だ。ふふふふ、そこで食うか食われるか・・・さ?

葉子は落ちていくジョーの魂を救いたかった。ジョーに優しさは似合わない。やさしさ、いたわりでよみがえる玉ではない。

ジョーの野生に火をつける・・そうすれば、あの生き生きとしたジョーがもどってくるだろう。ストーリーの中で言語化はされていないが、葉子の思惑は容易によみとれる展開だ。

さまよえる魂ジョーの安住の地はどこにあるのか・・・葉子は、その先にどういう結果が待っていようが、ジョーをジョーらしく生きさせるためには、ジョーの野生を最大限まで発揮させるしかないと思っている。のりちゃんもジョーに思いを寄せ、なんとか安全に平和に生きてほしいと願っている。段平はその間で揺れ動いている。

そしてそのどの思いも、何か違うのではないかとうすうす感じながら、人々の思いを引きつける何かがジョーにある。

ジョーは何にも縛られることなく自由に生きたいと思っている。そして、自分はそうしていると思っている。しかし、その周りには、様々な立場の人々がジョーの生き方に巻き込まれていき、ジョー自身も拳闘地獄に完全に絡め取られていく。

自由とは何なのか・・・何もしないこと、何にもしばられないことなのか・・

それとも、それぞれの運命に従い、矛盾に満ち、葛藤に満ちた生き方に準ずることなのか・・。

不自由の受容、それこそが自由なのかもしれない。


拳闘の魔力

2007年09月09日 | あしたのジョー

カーロスリベラは、世界ランキング上位にはいっているが、看板倒れのだめボクサーとして世間に披露した、全く作戦通りに。そして、まんまと日本チャンピオン、タイガー尾崎との対戦まで到達した。さらに、右指をたてて天にかざし「1分以内にKOしま~す」と宣言した。その姿に、かつて少年院での力石の姿が重なったのだ。ジョーの魂に火がついた。久しぶりに生き生きとした姿を見せるジョー。

しかし、丹下拳闘クラブにもどった時には、段平は酒浸りの自堕落な生活をしていた。カーロスリベラに興味をしめすジョーの話をちゃかし、カーロスのことをだめボクサーと決めつける。

ジョーは、段平がわざと関心のないふりをしていることに気づいていた。白木ジムで、ジョーとスパーリングをしたときにあわてふためいたことから明らかだ。

ジョーは段平に訴える

「おれが燃えるのがなぜ怖いんだ!何をおびえてやがるんだ!どうしたい 返事をしろよ返事をっ」

段平はいう

「け・・拳闘の・・拳闘の魔力ってやつは、つくづくおっかねえ・・・。

いってみりゃ・・・一度、拳闘にとりつかれると、どんな、うつくしい悪女の魅力よりも、とことん男を血迷わせ・・・狂わせ、若さにたぎる血の最後のひとしずくまで、すいつくしたあげくのはてに・・・・・ボロボロにされてポイ・・・・さ

「去る者は追わず・・・おめえもいい加減に拳闘を見放すんだ。足をあらうんだ。これ以上のめりこんじゃいけねえ!聞いてるのか、おいっ」

ジョーはいう

「ボクシングジムの会長が親心を出すようになっちゃおしまいだな。まっ上の看板、書きかえて、駄菓子屋でもはじめるんだな」

「今後はいっさいおれのまわりをうろちょろするのはやめてもらう!おれはおれの歩きたい道を一人だけで歩くっ」

 

自らも拳闘に人生をだめにされた段平。ジョーの快進撃の間は夢をみることができた。ともに心地よい夢をみていた。そして、自分をだめにした拳闘界に復讐を果たすようで気分がよかっただろう。

しかし、現実は重かった。一夜の夢が覚めてみれば、自分の秘蔵っ子が、命より大事なジョーが、自分と同じようにボロボロになっていく、拳闘地獄の中で人生を狂わせれていく。そんな姿に耐えられなかった。

はじめは何とか復活してほしいと願った。しかし、惨めに壊れていくジョーの姿に、厳しい現実を突きつけられ、正気にもどった。正気にもどれば、また酒浸りの生活だ。

問題はここからだ。それでもジョーは拳闘を続けるという。協力してくれないなら、せめて足を引っ張らないでくれという。そして、自分でやるから、もう放っておいてくれと。

これは親子の物語でもある。親は子に期待し、前に前に引っ張ろうとする。しかし、どうしようもない現実に直面するとうろたえだし、今度は安全なところに引き留めようとする。そんな親を振り切って、自分の足で歩き始めるところから、本当の人生が始まる。そして本当の親子関係が始まる。

ジョーは蘇り、拳闘の世界に戻るだろう。その背景で動いていたのは、ジョーと段平の関係なのである。こうなれば、親は子を先回りすることはできない、後ろから黙って見守るしかない。その先に、どれほどの苦難が待ち受けていようが、もはや親には何もしてやることはできないのだ。