段平のミスによって、失格に終わったカーロスとの四回戦エキジビション。
再度対戦を望むカーロスと、危険を察知し、直ちに帰国しようとするロバート。
カーロスもこのときばかりは一歩も引かない。それはそうだ、ついにカーロスは真のライバルに巡り会えたのだ。ジョーも力石以来、魂が共鳴するような相手についに出会えた。
そこへ葉子がまたまた、提案する。今度は6オンスのグラブで10ラウンドフルに戦うメインイベントでやればいいと。
ジョーは葉子にいう
「それにしても・・なんともはや、驚いたね、あんたって人は
時々思いもかけないような運命の曲がり角に待ち伏せしておいてふいに俺を引きずり込む・・・まるで悪魔みたいな女だぜ」
「迷惑だったかしら」という葉子に
「迷惑なんかじゃない。その悪魔が、おれの目にはヒョイと女神に見えたりするからやっかいなのさ。へへへ・・それそれ。そんな鋭い目でにらむのはやめてくれ」
葉子もそれほど計算ずくで行動している訳でもない。人と人が関わることに、そんな細かい計算が入り込む余地もない。
しかし、それぞれの持つ運命の糸が、自然に絡み合い、一つの道につながっていくのだ。人と人との関係というのはそういうものだ。
ある程度の読み、ある程度の計画、それに偶然の要素・・そしてもっとも重要なのはおそらく「運命」とか「縁」とかいうものだろう。
何をどう画策したとて、縁なきところには何も生まれはしない。逆に、何もしなくても縁は向こうからやってくる。自分から求めるエネルギーと向こうからやってくるエネルギーが共鳴したとき、大きな変化が起こる。そのタイミングは自ら導ける物でもない。ただ、日々魂をとぎすませ、強い意志を持っていれば(それが表面に現れていようがいよまいが)、タイミングを物にするチャンスも広がるだろう。
人生は計算では動かない。万が一のタイミングのために、何も起こらない9999の日常を怠らずまじめに精進する、それが人生だとわしは思う。