第3回・新春特別文化フォーラムは、
1)特別講演:「自然の野菜は腐らない」・・河名秀郎氏(ナチュラル・ハーモニー代表)
2)映 画:「降りてゆく生き方」・・武田鉄矢主演
の2部構成で、4月17日(日)に1日2回、町民センターホールで開催されます。
この映画「降りてゆく生き方」は、地方のまちづくりをテーマにした自主上映の映画ですが、今週から3回に渡って、映画「降りてゆく生き方」のプロデューサーで脚本を担当した森田貴英氏のインタビュー記事を紹介します。
インタビュー:豊かな地方とは 森田貴英さん(朝日新聞 2015年1月30日)
「自然農法では、弱っているところに肥料をいれたらダメになる。地方への補助金も同じ」
地方のまちづくりをテーマにした自主上映の映画が、日本各地でロングランを続けている。山あいの過疎の村で懸命に生きる名もなき人たちを描いた「降りてゆく生き方」だ。安倍政権が掲げる地方創生で、脚光を浴びるまちづくり。住民が幸せに暮らせるまちは、どうすればできるのか。映画を製作した弁護士の森田貴英さんに聞いた。
◆地域の「まちおこし」を題材にした映画「降りてゆく生き方」が6年近くのロングランです。
「昨年、5周年記念上映会を各地でやりましたが、ここまで続くとは思っていませんでした。主演の武田鉄矢さんからは『売れる要素がまったくない』と言われましたからね。10万人以上に見ていただけるとは」
◆どういう映画なのですか。
「配給会社を使わず、宣伝も一切しないで口コミで広げています。ネタばれになるので詳しくは言えませんが、開発のために土地を買収するよう会社から命じられた団塊の男が主人公です。都会から過疎の村に入って画策するうちに、そこで懸命に生きる人の姿にいつしか心を動かされ、会社を裏切って地域の『まちおこし』を応援する。そんな話です」
◆宣伝もしないとは。どうやって上映を続けたのですか。
「自分のまちでも上映したいと声を上げた人を、私たち映画スタッフが手助けします。決まったひな型はなく、会場の手配やチケットの販売は主催者にお任せ。それぞれのやり方でやってもらっています」
◆なぜ映画をつくろうと?
「私はもともと映画好き。弁護士としても映画の契約や著作権がらみの仕事にかかわってきました。映画ビジネスのプロという自負はあります。2006年に友人が映画製作を思い立ち、手伝ってくれと言われたときは、大ヒット作にする意気込みでした。それが変わりまして……」
◆なぜ変わったのですか。
「映画づくりの過程で、自分の中でモノの見方が一変したんです」
◆どういうことですか。
「もともとは堺屋太一さんの小説を下敷きに、団塊世代が退職して地方の商店街を再生する、という前向きな映画にするつもりでした。団塊が大量退職する時期で、マーケット的にも『売れる』とはじいたんです。ところが脚本がおもしろくならない。おやじバンドで商店街を盛り上げるなんてウソっぽくて。そこで自分たちでリアルなストーリーをつくろうと、各地のまちづくりを見て歩いた。それが転機になりました」
◆転機?
「長野県小布施町を訪れたときのこと。歴史と文化、伝統に裏打ちされた街並みの美しさに心をうたれたんです。資本主義やグローバル経済を信奉し国際派弁護士をめざした私は、それまで日本の歴史、文化などには一切興味がなかった。小布施のまちづくりの立役者の市村次夫さんと会って、考えが変わりました。日本の地方にはすごい資産がある。すごい人がいる、と思い知りました」
「その後、地方を回り、人に会い続けました。200人ぐらいかな。実にユニークで魅力的なまちづくりが各所にありました。北海道浦河町の精神障害者の地域活動拠点『浦河べてるの家』の取り組みには、本当に驚きましたね。そこで当初とは正反対の内容の映画にしようと決意したんです」
「堺屋さんの小説では60億円のファンドで商店街を再生させる、という結末でした。お金を使って『登っていく』という解決の仕方です。それを、お金に頼らず、地域にあるものを大切にするまちづくりに目覚める、というストーリーにした。いわば『降りてゆく生き方』に未来を託すという内容です」
以下、次週