宇宙船地球丸

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「ツバル諸島」の海水面上下データと、その正しい解釈 by 武田邦彦教授

2008-10-05 09:01:49 | 環境教育
「らくちんランプ」の管理人スパイラルドラゴンです。今日は、2008年10月05日です。
 約10日前に、「環境問題はなぜウソがまかり通るのか 3」 刊行記念 武田邦彦先生講演会&サイン会が、10月8日(水)の夕方から三省堂書店神田本店にて催されるという情報を耳にしたので、いち早くイベントの参 加予約を入れて、来週のイベントを楽しみにしていたのですが、昨日三省堂書店神保町本店の担当者からイベントが中止になったとの電話連絡がありました。
 また、三省堂書店神保町本店のブログでも、今回のイベント中止の告知がされていました【10月8日】武田邦彦先生講演会&サイン会中止のお知らせ
 どのような理由で今回のイベントが中止になったのかは、後日武田邦彦教授から何らかの発表があると思いますので、現時点での要らぬ推測は控えるようにします。

 さて、中部大学の武田邦彦教授がご自身のHPにアップされたかわいそうに・・・の記述は、今まで日本の全てのテレビ局が放送してきた「人類が排出するCO2が原因で地球温暖化が進行していて、その影響で将来ツバル諸島は水没する」という内容を盛り込んだ番組(代表例:2006年4月30日に放送されたNHKスペシャル「同時3点ドキュメント(全8回)第4回「煙と金と沈む島」)は、その全てが悪質な「地球温暖化プロパガンダ番組」であったということを、実際の観測データも付けて、学問の基本に則って系統立てて論理的に説明されているので、今日の本文として以下その全文を転載します。
 

(以下転載)

 かわいそうに・・・

 書評というのはあまり好きではない。何故かというと、著者はインスピレーションや深い思索ののちに書籍を著すのであり、それをチョッと読んだだけで批評するというのもおこがましいと感じられるからだ。

 また、批判される著者も心血を注いで書いたのだから、それを批判されるのは気分が悪い。別に強制的に買わせているのではないから、イヤなら買わなくて良いからでもある。

 ところで、先日、北村慶さんがお書きになった「「温暖化」が金になる」という本を読んだ。題名は少しどぎついが内容は高度で、とても鋭い解析が示され、おもしろかった。

 この本に書かれていた温暖化や、環境に関する見解は私とは違うところもあったが、本を読む目的は自分と違うことを知ることにもあるので、その点でも有意義だった。

 でも、その本の「おわりに」に次のように書いてあったのが、気になった。

「・・・南太平洋にある、ツバルという珊瑚礁に囲まれた島国・・・この国は、地球温暖化によって、世界で最初に沈み逝く国だと言われています。・・・」

 そしてそこに住む老人がテレビのインタビューに答えて、

「人間が悪いことをしたから、神様がお怒りになって、この島を沈めようとされているんだ」

と書いてある。

 北村さんのご専門領域をよく知っているわけではないが、おそらく地球物理とか気象学などではなく、文化系の方なのだろう。私はこの情熱あふれる「おわりに」を読んで、失礼ながら「ああ、かわいそうに」と思った。

 おそらくNHKの報道にごまかされたか、あるいはこの本の後ろに科学者が温暖化の危機について呼びかけているので、その人たちに間違った情報をもらったかも知れない。本当にツバルが温暖化によって沈みつつあると錯覚されているのだろう。

科学者から間違ったことを聞いたり、NHKの誤報で誤解する人は、本当にかわいそうである。間違った情報でものを考えてしまうからである。

 ツバル領域の海水面の上下のデータを正しく示したい。

横軸が西暦で、縦軸が海水面だ。ツバルが独立したのは1978年だから、その前のデータはなかなか発見できない。だからここ20年間の海水面の変化をハワイ大学のデータからとって、私が監修した書籍に載せた。

 グラフの下の線が「干潮時」、真ん中が平均、そして上の線が「満潮時」の海水面のデータである。まず、線がギザギザしていて海水面というのは年によっても変化することがわかる。

 平均海水面はほぼ2.1メートルであるが、年によって少し変化して、1984年はこの地方の平均海水面は30センチぐらい低く、反対にその数年後は満潮時水位がこれも30センチぐらい高くなっている。

 つまり、潮位というのは安定していないので、プラスマイナス30センチぐらいはいつも変化している。

 また地球の近くには「月」という巨大な星があるので、その引力の影響で満潮と干潮が起こる。だから、毎日のようにツバルの海水面はこのグラフの基準では1メートルから3メートルまで、その差、約2メートル上下する。

 人間は昔から大自然の中で生きている。そして海の水はあがったり下がったりすることを知っている。満潮干潮ばかりではなく、冬に比べれは夏は「温暖化」するので、海水面は40センチ上がるし、950ヘクトパスカルの低気圧が来ると50センチ、上昇する。

 だから、人間は海水面が常に3メートル近く変わり、年によってプラスマイナス30センチぐらいも変化することをよく知っているはずなのだ。

 でも、現代の日本人は海水面を見ていない。だから「数字」で理解しなければならないのが誤解のもとにもなっている。

 そして「気温が上がっていることによってツバルの海水面はどのぐらい上がったのか」というのを「平均潮位」で調べると、年に0.9ミリメートル、10年で9ミリメートル、だからグラフの最初と最後のでは22年間で約2センチほど上がっている。

 この潮位の変化(たった2センチ)でツバルが沈んだと騒いでいる科学者がいる。だから、普通の人やこの本の著者が間違うのだ。もちろん、悪いのは科学者とNHKであることは間違いない。

 1978年にツバルに住んでいる人が家を建てようとして土地を選ぶとしよう。

 毎日、潮の満ち引きで2メートル、冬に比べれば夏は40センチ、そして低気圧が来れば50センチ上がるから、干潮を基準にしてそれより3メートルは高いところに家を構えるだろう。

 毎日、満潮になると床上浸水するような家を作るのも大変だし、夏の3ヶ月は海水面が40センチあがっているから、その期間、どこかに逃げるのも大変だ。

 その時、その人に「22年後に温暖化で2センチほど上がります」と言っても関心を示すだろうか? 彼は2センチなどではなく、3メートルか4メートルかと考えているのである。その人に「22年後は2センチあがります」といってもうるさがられるだけだろう。

 そして、海水面のばらつきだけでも30センチはあるのだから、それを加味すると3メートル50センチぐらいは見なければならない。毎年、それだけ変化するのが問題なのに、22年後の2センチなどまったく考慮しないのは当然だ。

 その人が3メートル50センチの中の、2センチだけを「神の怒り」などと言うだろうか? 真の原因は土地の沈下にある。

・・・・・・

 「事実がどうでも結論は同じ」というなら、最初から事実を示さずに結論だけを言ってもらえばよい。結論が事実から導き出されるのなら、事実が正しくなければ書籍を読む人や放送を見る人に誤解を与える。

 まず、科学者はしっかりして欲しい。

 潮位変化は科学のことだから、以前のデータに間違いがあることがわかったら、それを修正するのにやぶさかではないことも科学者の大切な資質である。

 自然は人間より遙かに大きい。だから、科学者はいつも謙虚なはずだ。

(平成20年10月4日 執筆) 武田邦彦

(転載終わり)

スパイラルドラゴン拝



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