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『果てしなきグラムロック歌謡の世界』全曲レビュー

2011-09-10 | NEWS
『果てしなきグラムロック歌謡の世界』
キングレコード KICS-1685 ¥3,000


8月に発売された異色のグラムロック・オムニバス『果てしなきグラムロック歌謡の世界』は、昭和の歌謡曲という手強い敵キャラを、正攻法で、また不意打ちで、ある時は色仕掛けや頭脳プレー、魔術妖術の類いも駆使して『グラムロック(的なもの)』に仕立てる壮大なゲームと言える。収録された13曲は、それぞれの戦いの記録である。33年前、伝説の勇者・近田春夫が残した『電撃的東京』へのリスペクトを胸に秘めて!

*( )内はオリジナルを歌ったアーティスト。
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1)ROLLY/S・O・S(ピンクレディー)
近田春夫を敬愛するROLLYによる『電撃的東京』祭り! 3分46秒間に、これでもかと詰め込まれたロンドンポップ×越路吹雪×QUEEN×チン&チャップマン×あれやこれや。多彩なアーティストROLLYの圧縮ファイルとなっている。

2)TYO/きりきり舞い(山本リンダ)
オリジナルのポップな無国籍感を活かしながら、広瀬"HEESEY"洋一のTYOらしく、派手で重量感のあるナンバーに仕上がっている。この曲に男性ヴォーカルが妙にしっくりするのは、山本リンダの持つクイアー感と無関係ではない気がする。倒錯の美もまたグラム的。

3)YOUNG PARISIAN/ビューティフル・サンデー(ダニエル・ブーン/田中星児ほか)
能天気に見せかけながら、実に良く考えられた選曲と演奏。怪しげなイントロ、70sグラムの王道的サウンドに人工甘味料のような歌。PVを作るならドイツのTV番組『BEAT CLUB』風のスタジオで、周囲にはティーンエイジャーを踊らせたい。ダ・ダ・ディ・ディ・ダ……と。

4)THE BOHEMIANS/君は薔薇より美しい(布施明)
注目の若手バンドが、自分たちの生まれる前のヒット曲を勢いよくカヴァー。イタリア男の口説き文句みたいな歌詞に手こずったかもしれないが、早口言葉的に高速処理したことで、意味から解放されて自由に疾走している。

5)Rama Amoeba(アキマツネオ)/キューティー・パイ(ジョニー・ティロットソン/伊東ゆかり)
アメリカの60sオールディーズ歌手のヒット曲。伊東ゆかりが日本語で歌ったものをラーマアメーバはT.Rex「Tame My Tiger」風にカヴァー。予備知識ゼロなら「このバンドの新作?」と思うかも。 対戦相手を自分のエリアへ巧みに引き寄せ、鮮やかに勝負を決めている。

6)森重樹一/TOKIO(沢田研二)
人気絶頂のジュリーが電飾とパラシュート付きのトンデモ衣装をまとった時点で、すでにグラム指数が高い曲。しかし、森重樹一の錬金術はバブル前夜のトーキョー・ポップをL.A.グラムメタルに変貌させる。蛍光プラスチックが重金属に!

7)キノコホテル/恋の爆弾(安西マリア)
バンドのカラーにぴったりはまる選曲。ダーティ&スウィートな心意気。のびのびと遊んでいて小気味よい。もう少しうさんくさいと最高かもしれない。グラムは破綻した美意識の暴走でもあるので。

8)DIAMOND YUKAI/酒と泪と男と女(河島英五)
男臭くて無骨で湿り気の多い原曲。とてもグラムに変換できるとは思えない素材を選んだ狙いは何か。モット・ザ・フープル「Saturday Gigs」的なものを狙った裏技? ショーのあとに散らばるスパンコールの欠片もまたグラムなり、と。

9)Rama Amoeba(アキマツネオ)/真夏の出来事(平山みき)
以前からアキマが「カラオケで唯一歌える」と公言していた曲。さすがに冒頭の「イェ~!」だけでグラム度200%! しっかり歌謡曲として成立させているのに、ギターにマーク・ボランが降臨しているのが不条理すぎて素晴らしい。

10)土屋昌巳/花の首飾り(ザ・タイガース)
グラムロックの名盤にさりげなく配置される美しく切ないバラード、という立ち位置になるだろう。コックニーレベルの「セバスチャン」的な。グラムの儚さをゴシック的に再構築し、70sへのレクイエムに昇華させている。

11)ROLLY/私のアイドル~歌は生きている(チューリップ)
無敵のバブルガム・ポップ! 心躍るシンガロング・チューン! そういえばチューリップ、1972年にT.REXの名古屋公演の前座をやっている。ステージ裏でマーク・ボランとすれ違い「意外に小さいなぁ」(ドラム上田氏談)と思ったそうである。

12)THE BOHEMIANS/ルージュの伝言(荒井由実)
まだ有名ではなかったユーミンのサード・アルバム(1975年)の収録曲、というよりも『魔女の宅急便』の主題歌として有名。それゆえグラム的解釈をするのはハードルが高かったと思うが、軽快でジャンクな感じに仕上げている。

13)THE EASY WALKERS/ヨコハマ・ホンキー・トンク・ブルース(エディ藩/原田芳雄/松田優作ほか)
今よりもっとヤバくて魅惑的な時代のヨコハマ。昭和のダンディたちは皆この曲を歌いたがった。今回はTHE EASY WALKERSによって、退廃の香りをまとった粋なカヴァーに仕上がっている。
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