カールトンホテルに戻ったのは、9時過ぎだった。 ルームサービスで、ティーと
サンドイッチを注文する。 バスの中で、先生から頂いたフライドポテトを食して
いた為、そんなに空腹ではなかった。15分で、サンドが運ばれてきて、軽い
夕食となった。 食べていると、宇野君から電話がかかってきた。
「 いよいよ明日、エディンバラ最後の夜なんで、皆でパブ行くんだけど、行かないか? 」
「 いいわよ。淋しくなるわね。 待ち合わせ場所どこにするの? 」
「 花時計の前。 」
「 OK! じゃ、明日ね。 おやすみ。 」
なんだ、宇野君か・・・
宇野君は、一日早くエディンバラを発って、飛行機でフランスに行くらしい。
まあ、いずれ皆、自分の思うがままに行動するのだから、離れていくのは仕方ない。
浴槽にお湯を張り、一日の疲れを癒す。 リリ~ン又電話だ。 入浴中なのに・・・
バスロ-ブをはおって、受話器を取る。 フロントからだった。
メッセージがきているらしい。 誰からと聞くと、どうもイタリア人の友人らしい。
「 例のあの件でね。 解ったわ。 」
ローブを脱いで、再びバスタブへ。 ああ~どうして、連絡無いの?
やっぱり、奴は、私を弄んでいただけか・・・
そうよね、マイケルはともかく、エディは、やはり、お・と・な。
私なんか、私なんか、所詮ガキよね。 背伸びしても駄目ってか・・・
ああ、面倒くさい。 もうどうでもいい。
いよいよ明日は、楽しみにしていた蒸留所に行けるわ。
遊びのゴルフでも余程疲れていたのか、すっかり眠ってしまいました。
朝、早くに目を覚ました私は、軽くメイクをして、朝食バイキングに行く。
いつもの席へ座る。 周りを見ても、知らない人ばかり。 手早くお皿に盛り
食べる。食事の後に、ティーを飲み、ホテルを出る。 バスでグレンキンチ迄
起伏の多い道路を進む。 無事バス酔いもせず、到着して早速、スコッチウイスキーの
製造工場を見学する。 先ず博物館で、様々な資料を読んでいたら、感じのいい日本人の
老夫婦が、フルムーン旅行で来られていて、意味が理解できないので、説明して欲しい
と言われ、私でよければという事で、一緒に館内を回り、説明させて頂く。
ローランドで造られるモルトウイスキーは、ハイランドのものよりも軽くドライで
食前酒に最適であると言われています。 ビートの香が加えられていないモルトを
使用しているので、口当たりとフレーバーに甘味があります。 今日、ローランドに
現存するシングルモルト蒸留所は、非常に少なくなっているそうです。 ローランド
地方で、操業を続ける唯一の蒸留所は、独自の熟成方法・・・
最初はアメリカン・オークのリフィル樽で、その後、澱引きをして、ブランデー樽に
移し、更に10年熟成させたものです。 世界では、5124本のみリリースだとか。
魅力的で、エレガントな際立ったウィスキー。 ブランデー樽で更に10年熟成させる
事によってグレンキンチの食欲をそそるふくよかさを損なうことなく、素晴らしい
深みと滑らかな円熟度を添えている。 ということです。
「 ちなみに、私のお気に入りのデイスティラーズエディションのテイスティング
でございますが、お聞きになりますか? 」
「 ぜひ、お願いします。 」
「 では・・・ 」
<色>
ゴールドに輝くブラウンカラーをしております。
<香り>
爽やかで切れ味がよく、とてもあっさりしています。 素晴らしい香り。甘さと辛さの
驚くほどのバランスと複雑さ。 とても、穏やかなバニリン酸や清々しい葡萄が
もたらす、やや引き締まったドライなノート。 モルトの大麦と、恐らくスパニッシュ
オークにより、より甘く、ナッツらしくなっております。
<ボディ>
安定しています。 ライトからミディアム。
<テイスト>
本質的にドライ、とても早い段階で、ほとばしるビスケットの様な甘さに続く。
膨大なモルトの性質が、薄い葡萄のフルーティーさに対して、より顕著に。
<フィニッシュ>
とても長いオークの贈り物。 ドライなまま、非常に僅かな胡椒の香りも
スパイス的なものーここでもオークを含むが少し出てくる。 が、随分と
遅れて来るカラメルによって和らげられるー特に手の平でグラスを温めると・・・
「 とても、良かった。 有り難う! 」
「 いいえ、どういたしまして。 これから試飲に参りましょう。 」
「 まあ、楽しみだわ。 」
と奥様。
「 ワインじゃないので、多分、相等、きついかと思われます。 」
それから、3人で、試飲のコーナーへ行く。
香りでもはや、頬が赤くなられていたご夫人。
「 さてさて、どのウイスキーを試されますか? 」