ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

ストレングスモデルについての雑感

2009年07月17日 | 社会福祉士
 ストレングスモデルに関する論文や著書を刊行してきたが、私の方の博士の学位を得て現在アメリカのカンサス大学でリサーチ・フェローをしている福井貞亮君が研究室にやってきて、アメリカでのストレングスモデルについての最近の動向を伺った。そこでの話の中から、私が思ったことを2点書き留めておきたい。

1 ストレングスモデルはアメリカ国内では広く普及しており、これは従来の医学モデルに対するアンチテーゼとして生まれてきた側面が大きいという。具体的には、利用者の問題点を拾い上げ、その解決を図っていく方法に対して、利用者の能力や意欲、さらには好みや抱負といったことを引き出し、それを伸ばしていく方法として、違いを明確化してきた。

但し、このストレングスモデルのアプローチは、支援者側がどのように利用者を捉えるかということに重点が置かれている。従来の利用者に対する見方を変え、ひいては、ソーシャルワークやケアマネジメントの思想なり理念を変えようとするものであった。しかしながら、利用者自らが回復していく力として捉えられるリカバリーやレジリエンシーは、逆に、利用者側がもっている回復力なり甦生力に力点が置かれ、利用者が主体的にその力を発揮していくという志向が強いといえる。このリカバリーなりレジリエンシーの考え方が実践の中で定着していくためには、現状では、利用者が語ることをサポートしていくナラティブ・アプローチを組み込んだ支援を行っていくことから、ストレングスを介して、それを利用者主体で捉えていくことが示されてくると考えている。同時に、そうした実践の蓄積から、リカバリーやレジリエンシーがどのような個々の利用者の中の要素で構成されているかを明らかにしていくことが大切である。その要素は、利用者の能力、意欲、好みではなく、どのような要素になるのか興味深いところである。是非、こうした視点での研究や実践を進めていってほしいものである。

2 ストレングスモデルでは、このように専門職志向が強いことも関係があると考えられるが、利用者の意欲や好みを実現さていく支援を実施していく場合に、リスクに遭遇する。ストレングスモデルでは、確かに、利用者の失敗、落胆、絶望は、新たなスタートが始められるものとしてストレングスに転化して捉えることになっている。

しかしながら、リスクが見える場合に、ストレングスモデルに依拠する支援者であっても、そのような支援を躊躇する。具体的には、そうした場合には、私は短期目標を設定し、リスク・マネジメントを行っていくことを強調してきた。そのため、ストレングスモデルは、短期目標アプローチ(ショートターム・アプローチ)や課題中心アプローチ(タスク・センタード・アプローチ)との一体化も可能ではないかと考えている。

ただし、ストレングスアプローチでのリスクへの対応について言及している著書や論文は、私の知る限りほとんどない。これについては、利用者の可能性を強調する以上、リスクという考え方自体がストレングスモデルでは相容れにくいことかもしれない。しかしながら、現実の実践では、リスクの可能性が高くなると、こうした思いに立たざるを得ない。最終的に問題が生じた場合には、自己決定し、契約をした利用者側の自己責任ということのみでは、形がつく問題ではない。ここでは、短期目標を設定しながら、状況の変化を確認して、ストレングスを慎重に活用していくことが必要であると認識している。

これらについて、先ほどの福井君のボスである、ストレングスモデル・ケアマネジメントのリーダーであるチャールス・ラップ教授が、8月18日に早稲田大学(西早稲田キャンパス 井深ホール)で講演されるが、その時に、ご意見を伺いたいと思っている。



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