ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

「介護保険を持続・発展させる1000万人の輪」 の要望書

2009年03月14日 | 社会福祉士
 3月12日に、樋口恵子さん(高齢社会をよくする女性の会 代表)と高見国生さん(認知症の人と家族の会 代表理事)とご一緒に共同代表をさせていただいている「介護保険を持続・発展させる1000万人の輪」が、厚生労働省に、今回の介護報酬改定と、4月から始めようとしている要介護認定システムについて、以下のような要望書を提出し、マスコミの皆さんに対して記者会見をしてきた。

 この「介護保険を持続・発展させる1000万人の輪」については、12月22日のブログで紹介している。

 今日は、要望書の内容をご報告し、明日以降は、最も大きな問題になりつつある「要介護認定」の本来のあり方について、私の意見を述べてみたい。

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 厚生労働大臣 舛添要一殿

                            【 要望書 】
               「平成21年度介護報酬改定」および「要介護認定システム」変更について      

                                         介護保険を持続・発展させる1000万人の輪

                                                      共同代表
                                                       樋口恵子
                                                       白澤政和
                                                       高見国生

Ⅰ 介護報酬改定について

 今回の介護報酬3%引き上げは、これまでの2回のマイナス改定後、初のプラス改定であり、改定の柱の一つが、介護保険サービスの充実と質の向上を図る介護人材の確保と、介護従事者の処遇改善に重点がおかれていたことについては一定の評価ができる。

 しかし、この改定により利用者が受ける介護サービスの充実と、事業の活性化による介護職員の処遇改善が行われなければ、介護報酬に税による予算を投入した国民の期待が損なわれるものとなる。

 私たちは今回の改定について、介護保険を持続・発展させる立場から、次のとおり見解を表明するものである。

●3%の改定幅では、これまで2回のマイナス改定による損益の補填にしかならず、しかも改定内容は加算(新加算は40種)が中心であり、全体的な底上げとはなっていないことから、介護従事者の賃金引上げに反映される保証がないことが危惧される。            

●また、改定のたびに介護報酬が複雑になり、利用者・家族、サービス提供者にもわかりにくい仕組みになっていることから、介護報酬体系を見直し、シンプルで透明性のある報酬の仕組みにすべきである。

1.「人材確保・処遇改善」を謳いながらも、加算取得には様々な要件があり、これでは介護従事者の処遇改善に反映される保証はないこと。

2.「地域区分」の報酬単価の上乗せ割合の見直しをしたが、訪問介護では一定の改善が見込まれるが、グループホーム等では逆に都市部で減収になっているなど、大義との不整合があること。

3.報酬アップに伴った支給限度額の引き上げがなかったため、利用者にとっては単価が上がれば受けられるサービスが減る、または利用料の負担増で利用抑制という状況が危惧されること。

4.認知症については、重点柱のひとつとして全体的に配慮され、新しい評価もいくつかみられたが、中・重度への配慮がある一方で、軽度への対応が十分に行われていないこと。

5.加算要件の見直しと新たな加算が設けられたことによって、書類作成や事務に係る負担が増え、過重な労働が発生する恐れがある。介護従事者の負担を軽減し定着を図るためにも、事務手続きや書類の簡素化の検討を再度行うべきである。

6.給付費分科会の議論が「財源論」と「最初に3%ありき」の配分に終始したかのように見られ、24時間365日の在宅ケアを強化する基本的な議論や将来的議論がされず、今後に大きな課題を残していること。

7.介護従事者のなお一層の処遇改善に結びつけるためには、全体的な基本報酬の引き上げを早急に検討すべきである。


Ⅱ 「要介護認定システム」変更について

●21年4月から変更される要介護認定の仕組みについては、多くの要介護高齢者がサービス給付から外されるという危惧がある。変更については充分な国民への説明責任をまず果たされ、国民が納得しうるまで一旦、凍結するよう求める。

●次回、制度改正の際には、介護保険を国民にわかりやすい仕組みにするために、認定方法の再検討と、家族同居の有無や介護力にかかわらず本人の状態により個人単位で自立支援のサービスが受けられるよう、認定のしくみや、認定のスピード化と透明性を図られたい。
 
1.厚生労働省資料によれば、モデル事業では現行ソフトと新ソフトを使った1次判定結果の一致率は57.6%であり、軽度に下がったものが19.8%、重度に判定されたものが22.6%、2次判定でも一致率は63.2%であり、軽度化は20.1%、重度化は16.7%とされているが、この結果、新ソフトの妥当性、信頼性はどのように検証されているのかについて、国民への説明が必要であり、情報を公開すべきである。

2.認定にかかわる「調査員テキスト」の「介護の判断基準」は今回、大きく変更され、3つの評価軸として「能力」「介助」「有無」のどれかを利用するとされている。しかしこれが、「介護の手間にかかる時間」を正確に反映するものになっているかという疑問も出されている。また、認知症が正しく反映されず、人間本来の尊厳を否定するような文言の部分も多いという現場の声もある。これらを見直すこともふくめ、新ソフトの4月からの使用をいったん凍結されたい。

3.新しい基準で認定が難しくなったり、新しい判断基準で軽度認定に拍車がかかれば、サービス利用への抑制がかかり、介護保険が本来有している利用者の権利性の発揮が損なわれることになる。