終了!
2011-05-15 | 日記
受験生の皆様,本当にお疲れ様でした!
「適性試験って何?それで点が取れないってことは法曹として適性がないってこと?」という疑問を持ちつつ手探りで始めたLS入試準備,日々予習と課題に追われてそれまでの友人と疎遠になってしまったLS在学中,やってもやっても勉強不足と感じて不安に苛まれた試験直前期,極度の緊張と疲労に倒れそうだった,周りの受験生は自分よりもよい答案を書いていると思えてしまい自信を喪失しかけた試験期間中…。それももう終わりです。合格すればこうしたことは全部忘れ,抽象的な自分にとって好都合の思い出になり,また,「自分はあの苦役をもクリアできた」という自信に変わります。
…とりあえず,しばらくは好きなことを存分に楽しむのが良いでしょう(羽目をはずさない程度に:笑)。海外旅行に行くなら,発表までです。発表後は何かと忙しいし,修習中の海外旅行は許可制になります(ほとんど無理らしい)。円高だし,今がチャンスかな(笑)大手事務所を希望する方は,ちょっと休んで活動開始ですかね。しんどいですが,自ら望むのであれば,頑張ってください。そして,(私は怠け者なのでほとんど何もしなかったのですが,)この先,修習までにやっておくと有益なことについては,日を改めてちょくちょく書いていこうと思います。普通,法律のことは一度きれいさっぱり忘れてしまうものかもしれませんが,意識の高い人に向けて。
で,ですね。これは結構前から考えていたのですが,ちょっと実験をしてみようと思います。大学入試なんかでは,東大の問題でも試験終了直後に論述問題を含めて解答速報的なものが出るのですが,司法試験の答案例は結構タイムラグがあるんですよね。問題の質が違うので当たり前なのですが。…勇気を持って晒してみようかなと(笑)
ただ,モノの性質が性質だけに,かなり過剰な反応もあるだろうし,通常この手のモノはボコスコに叩かれるものだし,どこでどんな影響があるかわからないので,公法系・第1問に限って,丸腰で出してみようと。他の科目については,出す予定はございません。予備校各社の分析会もあるし,私が全部の科目についてそんなことをする意義はないと考えております。
ホントに,丸腰です。受験生と同じ条件で,2時間で書いてみました(PCなのでその点は受験生より有利な条件なのですが)。ですので,結構「荒い」ものであることも否めません。当然,まだ法セミなんかも出ていない状況なので,これがどのように評価されるのかという担保はございません。あくまでも,「私が会場で書くならこのような答案を書く」というにすぎないものです。
私なりに,コメントや突っ込んだ分析もしてみました。特に,突っ込んだ分析については,「現段階の」「完全なる私見」で,今後,考え方が変わるかもしれません。日本一早い答案例として,あえてここまでやってみちゃえ,という趣味の領域を出ないものとして理解してください。ですので,一方的な内容のコメントや返答に窮する内容のコメントは削除しちゃうかもです(笑)また,変な使い方はしないでくださいませ。答案の利用・処分権は私にありますゆえ(笑)
以下,読みたい人だけどうぞ。
第1 設問1
1 訴訟選択
中止命令の取消訴訟を提起する。不服申立前置規定がないので,X社は不服申立を経たか否かにかかわらず,訴訟提起が可能である。
2 X社の主張
(1) 明確性の原則
本件では,X社の提供した画像に「個人権利利益侵害情報」(法2⑥)を含むため,法7②に該当し,改善勧告(法8②)を経て,中止命令(法8③)を発せられるに至っている。しかし,X社としては,そもそも個人権利利益侵害情報を規定が不明確であり,法2⑥の「公にすることにより,個人の権利利益を害するおそれのあるもの」という規定は,憲法21Ⅰ,31に違反して無効であると主張する。
すなわち,表現する権利(憲法21Ⅰ)の行使を萎縮させないよう,これを制限する法規は,明確に定められていなくてはならない(明確性の原則)。これは,表現を萎縮させないための法理であるから,憲法21Ⅰ,31に違反するかどうかは,当該法規の定め方から,規制対象を一般人が画一的に読み取れるかどうか,を基準とすべきである。
法2⑥は,「公にすることにより…」という抽象的な規定しかされていない。「権利利益」とは何であるか,いかなる画像がその「権利利益」を害するかについて定めておらず,システム提供者(法2③)としては,指針を立てることすらできない。
それゆえ,法2⑥は違憲無効であり,結果,X社が提供した画像は規制対象とはならず,にもかかわらず,X社の画像が個人権利利益侵害として規制対象であることを前提とした中止命令は違憲無効であり,当然に取り消されるべきである。
(2) 法8③の違憲性
X社がネット上でX機能画像を提供する自由は,表現の自由として憲法21Ⅰにより保障される。そして,ネット上で風景画像を提供することは,閲覧者の知る権利に奉仕するものであり,またそれにより犯罪防止等の社会的意義をも有することから,高価値の表現として保障される。それゆえ,規制の違憲審査は厳格であるべきであり,規制目的が必要不可欠で,規制手段が当該目的達成のために必要最小限である場合に限って合憲とされるべきである。
本件において,具体的に考察する。まず,高度情報化社会において法1に示される規制目的が必要不可欠であることは,その通りである。
しかしながら,手段としての中止命令は過剰である。つまり,1人の申立てにより,画像提供手段そのものを奪い,それによって多くの閲覧者の知る自由を全面的に妨げるものである。申立てに係る特定部分だけの削除命令等の方法でも目的達成のためには十分であり,特定地図検索システムの提供自体まで中止させる必要は存しない。
よって,法8③は違憲無効であり,それゆえ中止命令も違憲無効である。
(3) 本件画像が個人権利利益識別情報に該当しないこと
本件で,A大臣はX社が提供する画像が個人権利利益侵害情報に該当するとして,是正命令を経て,中止命令を発している。しかし,X社の提供した画像は,個人権利利益侵害情報に該当せず,にもかかわらずなされた中止命令はX社の表現の自由を侵害し,違憲無効である。
すなわち,前述したネットでの風景画像を提供する自由の重要性に鑑みれば,「公にすることにより,個人の権利利益を害するおそれのあるもの」は厳格に解されるべきである。この個人権利利益侵害情報が,個人識別情報(法2④)や個人自動車登録番号等(法2⑤)と並んで規定されていること,また,法が個人の具体的な不利益を防止してその回復を目的としている(法1)ことからすると,ここでの「公にすることにより,個人の権利利益を害されるおそれのあるもの」とは,画像から個人を特定することができ,それによって何らかの具体的不利益が想定される高度の蓋然性がある場合に限られると解すべきである。
本件で問題となっている画像は,家の中の様子などであり,生活ぶりがうかがえるものにとどまる。被写体を知らぬ者が見た場合,個人を特定することはできないし,仮に被写体を知る知人が見た場合にも,それが何らかの興味や関心を引くことはあれど,具体的不利益が生ずる高度の蓋然性があるとは認められない。
したがって,本件画像は,個人権利利益侵害情報に該当せず,にもかかわらずなされた中止命令は違憲無効である。
第2 設問2
1 明確性の原則について
(1) 被告の反論
規定の明確性は,法の趣旨等からしてその意義が読み取れるものであれば表現を萎縮させるものではなく,本件においては,ネットを通じて個人の情報が流出することによって生ずる個人の不利益を防止するのが法の趣旨であるから,その危険がある情報が「公にすることにより,個人の権利利益を害するおそれのあるもの」であり,十分な明確性を備えている。
(2) 私見
明確性の原則は,表現の自由の萎縮防止を目的とする法理であるから,被告の主張の通り法の目的を加味し,通常一般人の理解においてその意義が読み取れれば足りると解するべきである。
本件について考えると,ネットによって何らかの被害が生ずることは国民によく知られたところであり,その具体的態様も同様に知られたところである。つまり,詐欺や窃盗,性犯罪等の刑事犯罪被害から国民を防止するため,また,他人に知られたくないプライベートな情報を流出させないようにすることが法の具体的な目的であるから,「公にすることにより,個人の権利利益を害するおそれのあるもの」とは,氏名,電話番号,住所等の個人識別情報に該当する情報以外で,性別,年齢,生活状況やそれに類するものであると解することができ,そうすると,本規定は明確性を欠くことはなく,憲法21Ⅰ,31に反することはない。
2 法8③の違憲性について
(1) 被告の反論
まず,地図情報画像を提供する自由は,「表現」(憲法21Ⅰ)に含まれず,Xの主張する権利は憲法上の保護を受けない。つまり,そのような画像の提供は,芸術写真などと異なり,何ら情報発信者の意図や思想を反映したものではなく,自己実現・自己統治の価値がなく,表現の自由として保障する根拠を欠くものである。
仮に,上記と異なりX社の主張する自由が憲法上の保護を受けるものでも,中止命令は,ネットを通じて風景画像を提供する自由を全面的に制約するものではなく,あくまでもZ機能を有した特定地図検索システムという1つの方法による画像提供を制限するものにすぎない。また,原告はこのシステムによる画像提供が閲覧者の知る権利に奉仕すると言うが,他人の生活を覗き見る自由は知る権利のらち外であって,本件は知る権利とは関係を有しない。そして,高度情報化社会においては,個人の情報が流出した場合には刑事犯罪被害等の重大な結果をもたらす場合も間々あり,また,他人に知られたくない個人のプライベートな情報の流出は事後にその被害を回復しえないものであるから,それを防止するための規制は,かかる法の目的を達成するために合理性を持つ手段であれば足りるというべきである。
本件の中止命令は,それがなされれば,中止命令以降の損害・不利益は確実に防止できるから,目的達成のための合理性を持つ。また,中止命令に至る過程も,被害回復委員会への諮問(法8①),改善勧告(同②)という判断の担保が十分な仕組みになっており,その意味でも,中止命令の制度は目的達成のために合理的であると言える。
(2) 私見
被告が最初に主張する,権利としての要保護性の点であるが,確かに芸術写真などに比較すれば自己実現・自己統治の価値は希薄といえど,街の風景という情報を提供することそれ自体には,そうした情報を提供したいと希望する者の自己実現に資する側面もあり,「表現」として保護されないとまでは言えない。被告のこの点の主張には理由がない。もっとも,上述の通り,自己実現・自己統治の価値が大きくないことは否めないので,原告の主張するように高価値の表現とまでは言えない。
続いて,ネット閲覧者の知る権利の点であるが,各地の風景画像を閲覧することは,それにより知見を広め,また,不動産広告が誇大広告であるか否か等の判断等に繋がる点は否めず,だとすればそれは知る権利として保障するに足りるものである。そうすると,ネットによる風景画像を提供することは,個人の知る権利に資する性質を有する。また,ネットによる画像提供そのものも,それが表現行為であることには他ならないので,原則的には厚く保障されるべき性質の権利である。他方で,ネット環境の普及によって,個人の情報保護の必要性が極めて高くなっていること,また,あくまでも本件中止命令が規制するのはZ機能を有した特定地図検索システムという方法に限られることからすると,規制の違憲性は原告が主張するほどの厳格度をもって判断すべきではなく,規制手段が目的達成のために実質的な合理的関連性を有すれば足りると解すべきである。
以下,本件について考察する。まず,原告は中止命令が閲覧者の知る自由を完全に妨げてしまう点で手段の過剰性を主張するが,被告主張の通り,あくまでも1つの手段を規制するにすぎないので,原告の主張には理由がない。また,原告は,申立てに係る特定部分の削除だけで目的が達成できると言うが,画像が同じ方法で撮影されているのであれば,申立てに係る画像以外の画像も個人の権利利益を侵害する危険を孕んでいるのであり,これを未然に防止することは法1条が要請するところであって,手段が過剰でないばかりか,目的達成のために非常に有意義な手段であると言える。これらに加え,中止命令が出されて画像の配信が中止されれば,被告主張の通り,確実に被害を防止できることからすると,中止命令という手段は実質的な合理的関連性を有する手段といえ,憲法21Ⅰに反するものではない。
3 本件画像の個人権利利益識別情報該当性
(1) 被告の反論
2(1)に述べたように,中止命令が表現の自由を制約する側面があるとしても,あくまで方法の制限にすぎないこと,また,法1条に示される個人の情報保護の必要性が極めて大きいことからすると,「公にすることにより,個人の権利利益を害するおそれのあるもの」とは,通常一般人が他人に知られたくない情報の全てを含むものであり,X社が提供する画像は家の中の様子など生活ぶりがうかがえるものであるので,まさに個人権利利益侵害情報に該当し,それゆえ,中止命令は憲法21条Ⅰ違反の問題を生ずるものではない。
(2) 私見
被告が主張するように,本件中止命令は方法の制限にすぎないものではあるが,その効果はZ機能を有する特定地図検索システムによる画像提供そのものが遮断されるというもので,これはそれなりに大きな権利の制約となる。また,2(2)で述べたように,ネットで風景画像を提供する自由は憲法上の権利として一定の価値を持つことに鑑みれば,被告の主張するように反対利益である個人の情報の保護の必要性が大きいことに鑑みても,「公にすることにより,個人の権利利益を害するおそれのあるもの」とは,少なくとも,氏名,電話番号,住所等の個人識別情報に該当する情報以外で,性別,年齢,生活状況やそれに類するもので,公開されることで具体的な不利益が生ずる相当の蓋然性のあるもの,と解するべきで,かく解した場合は憲法21Ⅰに反しないと言うべきである。
本件で問題となっているのは,家の中の様子など,生活状況がうかがえる画像で,これは一般的に言って,他人に知られたくないプライベートな性質のものである。そして,家の中の情報がわかるのであれば,例えば,若い女性が被写体であった場合には,ストーカー等の被害に繋がりうるし,また,高齢者だけの世帯であることがわかれば,それによって詐欺の被害が生じかねない。そうすると,これは具体的な不利益が生ずる相当の蓋然性のある情報と言うべきであって,個人権利利益侵害情報に該当する。
したがって,中止命令は憲法21Ⅰに反することなく,適法になされたものである。
以上
<コメント>
・訴訟選択が,平成18年以来,久しぶりに問われた。ただ,行政法ではないので,処分性を論ずること等は出題が要求するところではない(そもそも,論ずるに値しないほど明確に処分性がある)。取消訴訟の他,国賠や出訴期間が経過した場合は無効確認,もありうるが,これらを落としても点数にはさしたる影響はないであろう。行政法が独立の科目として出題されるにもかかわらず,中途半端に訴訟選択について出題する意義は希薄であるように思う。
・法2⑥は,明確性の原則を論ずるような程度に達する不明確な要件の定め方か疑問がないではないが,問題となりうる以上,書くべきと判断した。その場合,処分の違憲性と議論が重複する部分があるので,そこでの私見との整合性を意識した。
・法令違憲の部分では,まず,Xが画像を提供する自由がそもそも「表現」として保障されるのか問題になる。なぜなら,そうした行為は何ら意図・思想を表現するものではなく,自己実現・自己統治の価値がないとも考えられるからである(本問の自由の特殊性)。ただ,街の風景を伝達しようとすること自体,その情報発信自体には価値があるといえるし,この点は問題意識を示した上で肯定するのが得策であろう(そうしないと,話が続かなくなる)。
・現代のネット社会において法1条に示される目的が極めて重要なのは論を待たないので,ここは問題としなかった。試験において,通常,法の目的の重要性で争われることはない。
・一見するとプライバシー権について展開したくなるかもしれないが,原告はX社であり,X社からすれば表現の自由を侵害された場面である。したがって,被告の反論でプライバシー権の保護の要請を加味して検討するにとどめた。プライバシー権を展開することは,具体的場面を意識できていないと評価されることになるのだと思われる。
・閲覧者の知る権利についても独立に検討することが可能であるが,あくまでもX社が情報を発信できなくなったことが主たる問題であり,また,知る権利は表現の自由に含めて論ずることが可能なので,そのように書いた。平成21年(遺伝子研究の中止命令)とは,場面設定が異なる(平成21年の問題の方が,遺伝子情報と言う自己にとって重要な情報の開示を発端とした問題であるため,知る権利の重要性は大きい)。
・X社の画像提供行為(表現行為)が,営利性を主たる目的とする性質のものであることにも言及すべきであった。当然,保護は弱まる方向に働く事情である。
・私見の部分は,原告・被告それぞれの主張をしっかりと判断することを意識した。議論として噛み合うことは重要である。
<さらに突っ込んだ分析(当然ながら,私見)>
司法試験の問題は,それまでの出題趣旨・採点雑感・ヒアリングが反映され,「読み切り」ではなく,「連載」の要素を持つ(「歴史」を持つ)。憲法の第6話(今年の司法試験)に向けての「予告編」ともいうべき昨年の採点雑感では,三段階審査論の抽象的・形式的利用への警告がなされていた。
今回の問題は,例えば,平成18年度の「強制のからの自由」,平成21年の「学問の自由と大学の自治の対立」というような,背後に(受験生的には)未知のテーマを考えさせる問題ではなく,表現の自由というオーソドックスなテーマについて問う,一見すると特徴のない問題である。
そうだとすると,今年の問題は何を主根として問うているのか。私が思うに,採点実感に示された「警告」の意味を了解しているかどうか,抽象的・形式的・画一的・自動販売機的処理ではなく,自ら具体的場面に即して憲法問題を解決する視点・能力を有しているかどうかによって,敷衍すると,従来のアメリカ式の審査でいくにせよ,ドイツ式の審査でいくにせよ,その審査方法を形式的に理解しているだけでなく,実質的に理解し,論理的に自らの見解を提示していけるかによって,評価を分けようとする意図があるのではないかと思う。
仮に,ドイツ式の,①保護領域→②制限→③正当化を基本に据えて検討していくとすると,本問の表現の特殊性(意思・思想は介在せず,ただ映して配信するだけ)を,①②で検討することがまず必要になろう。ただ,それに尽きるのではない。この特殊性が③の議論にどう影響するか,そこまで検討できないと,出題意図を満たしたことにはならないはずである。以下,少し詳しく述べる。
①保護領域についていえば,本問はネットで画像を配信するものであるから,我が国の憲法論においては,基本的に表現の自由(憲法21Ⅰ)の保護を受けるものである。政治的言論等のステレオタイプな「表現」と比較すると,意思・思想の表現という側面を欠き,自己実現・自己統治の側面が相対的に小さいことは否めない。まず,ここを指摘することは必要である。ただ,その2つの側面が全く認められないわけではなく,「表現」(憲法21Ⅰ)に含まれること考えるのが一般的と思われる。また,②制限についていうと,法8③はネットで画像を配信することを中断させるものであり,これが権利の制約であることは論を待たない。そうだとすると,本問で問題になるのは,③正当化の部分であり,この点に焦点を当てて議論できたかどうかが,評価の分かれ目になるように思う。本問の「表現」の性質の特殊性を,保護領域の範囲内か否かで議論することは可能であるが,範囲内か否か,オールオアナッシングの議論だけではなく,③正当化の部分,具体的な違憲審査にしっかりと反映できるかどうか,ということがポイントになるのだろう。もちろん,この本問の「表現」の特殊性に言及できない答案は,相対的に見て,評価は低くなるように思う。
そもそも,我が国のこれまでの憲法論においては,①保護領域,②制限にはあまり重きを置かず,③正当化の部分で精緻な検討をしてきた(2月22日の記事で述べたように)。現在の憲法訴訟においてはそのような枠組みで判断がされているのだから,実務家登用試験として,その枠組みをしっかりと踏まえて,実務的に通用する思考ができるか,という点が問われているのだと思う。①保護領域性の議論に目を奪われるのではなく,ということである。
…偉そうに勝手に分析しただけですからね(笑)
「適性試験って何?それで点が取れないってことは法曹として適性がないってこと?」という疑問を持ちつつ手探りで始めたLS入試準備,日々予習と課題に追われてそれまでの友人と疎遠になってしまったLS在学中,やってもやっても勉強不足と感じて不安に苛まれた試験直前期,極度の緊張と疲労に倒れそうだった,周りの受験生は自分よりもよい答案を書いていると思えてしまい自信を喪失しかけた試験期間中…。それももう終わりです。合格すればこうしたことは全部忘れ,抽象的な自分にとって好都合の思い出になり,また,「自分はあの苦役をもクリアできた」という自信に変わります。
…とりあえず,しばらくは好きなことを存分に楽しむのが良いでしょう(羽目をはずさない程度に:笑)。海外旅行に行くなら,発表までです。発表後は何かと忙しいし,修習中の海外旅行は許可制になります(ほとんど無理らしい)。円高だし,今がチャンスかな(笑)大手事務所を希望する方は,ちょっと休んで活動開始ですかね。しんどいですが,自ら望むのであれば,頑張ってください。そして,(私は怠け者なのでほとんど何もしなかったのですが,)この先,修習までにやっておくと有益なことについては,日を改めてちょくちょく書いていこうと思います。普通,法律のことは一度きれいさっぱり忘れてしまうものかもしれませんが,意識の高い人に向けて。
で,ですね。これは結構前から考えていたのですが,ちょっと実験をしてみようと思います。大学入試なんかでは,東大の問題でも試験終了直後に論述問題を含めて解答速報的なものが出るのですが,司法試験の答案例は結構タイムラグがあるんですよね。問題の質が違うので当たり前なのですが。…勇気を持って晒してみようかなと(笑)
ただ,モノの性質が性質だけに,かなり過剰な反応もあるだろうし,通常この手のモノはボコスコに叩かれるものだし,どこでどんな影響があるかわからないので,公法系・第1問に限って,丸腰で出してみようと。他の科目については,出す予定はございません。予備校各社の分析会もあるし,私が全部の科目についてそんなことをする意義はないと考えております。
ホントに,丸腰です。受験生と同じ条件で,2時間で書いてみました(PCなのでその点は受験生より有利な条件なのですが)。ですので,結構「荒い」ものであることも否めません。当然,まだ法セミなんかも出ていない状況なので,これがどのように評価されるのかという担保はございません。あくまでも,「私が会場で書くならこのような答案を書く」というにすぎないものです。
私なりに,コメントや突っ込んだ分析もしてみました。特に,突っ込んだ分析については,「現段階の」「完全なる私見」で,今後,考え方が変わるかもしれません。日本一早い答案例として,あえてここまでやってみちゃえ,という趣味の領域を出ないものとして理解してください。ですので,一方的な内容のコメントや返答に窮する内容のコメントは削除しちゃうかもです(笑)また,変な使い方はしないでくださいませ。答案の利用・処分権は私にありますゆえ(笑)
以下,読みたい人だけどうぞ。
第1 設問1
1 訴訟選択
中止命令の取消訴訟を提起する。不服申立前置規定がないので,X社は不服申立を経たか否かにかかわらず,訴訟提起が可能である。
2 X社の主張
(1) 明確性の原則
本件では,X社の提供した画像に「個人権利利益侵害情報」(法2⑥)を含むため,法7②に該当し,改善勧告(法8②)を経て,中止命令(法8③)を発せられるに至っている。しかし,X社としては,そもそも個人権利利益侵害情報を規定が不明確であり,法2⑥の「公にすることにより,個人の権利利益を害するおそれのあるもの」という規定は,憲法21Ⅰ,31に違反して無効であると主張する。
すなわち,表現する権利(憲法21Ⅰ)の行使を萎縮させないよう,これを制限する法規は,明確に定められていなくてはならない(明確性の原則)。これは,表現を萎縮させないための法理であるから,憲法21Ⅰ,31に違反するかどうかは,当該法規の定め方から,規制対象を一般人が画一的に読み取れるかどうか,を基準とすべきである。
法2⑥は,「公にすることにより…」という抽象的な規定しかされていない。「権利利益」とは何であるか,いかなる画像がその「権利利益」を害するかについて定めておらず,システム提供者(法2③)としては,指針を立てることすらできない。
それゆえ,法2⑥は違憲無効であり,結果,X社が提供した画像は規制対象とはならず,にもかかわらず,X社の画像が個人権利利益侵害として規制対象であることを前提とした中止命令は違憲無効であり,当然に取り消されるべきである。
(2) 法8③の違憲性
X社がネット上でX機能画像を提供する自由は,表現の自由として憲法21Ⅰにより保障される。そして,ネット上で風景画像を提供することは,閲覧者の知る権利に奉仕するものであり,またそれにより犯罪防止等の社会的意義をも有することから,高価値の表現として保障される。それゆえ,規制の違憲審査は厳格であるべきであり,規制目的が必要不可欠で,規制手段が当該目的達成のために必要最小限である場合に限って合憲とされるべきである。
本件において,具体的に考察する。まず,高度情報化社会において法1に示される規制目的が必要不可欠であることは,その通りである。
しかしながら,手段としての中止命令は過剰である。つまり,1人の申立てにより,画像提供手段そのものを奪い,それによって多くの閲覧者の知る自由を全面的に妨げるものである。申立てに係る特定部分だけの削除命令等の方法でも目的達成のためには十分であり,特定地図検索システムの提供自体まで中止させる必要は存しない。
よって,法8③は違憲無効であり,それゆえ中止命令も違憲無効である。
(3) 本件画像が個人権利利益識別情報に該当しないこと
本件で,A大臣はX社が提供する画像が個人権利利益侵害情報に該当するとして,是正命令を経て,中止命令を発している。しかし,X社の提供した画像は,個人権利利益侵害情報に該当せず,にもかかわらずなされた中止命令はX社の表現の自由を侵害し,違憲無効である。
すなわち,前述したネットでの風景画像を提供する自由の重要性に鑑みれば,「公にすることにより,個人の権利利益を害するおそれのあるもの」は厳格に解されるべきである。この個人権利利益侵害情報が,個人識別情報(法2④)や個人自動車登録番号等(法2⑤)と並んで規定されていること,また,法が個人の具体的な不利益を防止してその回復を目的としている(法1)ことからすると,ここでの「公にすることにより,個人の権利利益を害されるおそれのあるもの」とは,画像から個人を特定することができ,それによって何らかの具体的不利益が想定される高度の蓋然性がある場合に限られると解すべきである。
本件で問題となっている画像は,家の中の様子などであり,生活ぶりがうかがえるものにとどまる。被写体を知らぬ者が見た場合,個人を特定することはできないし,仮に被写体を知る知人が見た場合にも,それが何らかの興味や関心を引くことはあれど,具体的不利益が生ずる高度の蓋然性があるとは認められない。
したがって,本件画像は,個人権利利益侵害情報に該当せず,にもかかわらずなされた中止命令は違憲無効である。
第2 設問2
1 明確性の原則について
(1) 被告の反論
規定の明確性は,法の趣旨等からしてその意義が読み取れるものであれば表現を萎縮させるものではなく,本件においては,ネットを通じて個人の情報が流出することによって生ずる個人の不利益を防止するのが法の趣旨であるから,その危険がある情報が「公にすることにより,個人の権利利益を害するおそれのあるもの」であり,十分な明確性を備えている。
(2) 私見
明確性の原則は,表現の自由の萎縮防止を目的とする法理であるから,被告の主張の通り法の目的を加味し,通常一般人の理解においてその意義が読み取れれば足りると解するべきである。
本件について考えると,ネットによって何らかの被害が生ずることは国民によく知られたところであり,その具体的態様も同様に知られたところである。つまり,詐欺や窃盗,性犯罪等の刑事犯罪被害から国民を防止するため,また,他人に知られたくないプライベートな情報を流出させないようにすることが法の具体的な目的であるから,「公にすることにより,個人の権利利益を害するおそれのあるもの」とは,氏名,電話番号,住所等の個人識別情報に該当する情報以外で,性別,年齢,生活状況やそれに類するものであると解することができ,そうすると,本規定は明確性を欠くことはなく,憲法21Ⅰ,31に反することはない。
2 法8③の違憲性について
(1) 被告の反論
まず,地図情報画像を提供する自由は,「表現」(憲法21Ⅰ)に含まれず,Xの主張する権利は憲法上の保護を受けない。つまり,そのような画像の提供は,芸術写真などと異なり,何ら情報発信者の意図や思想を反映したものではなく,自己実現・自己統治の価値がなく,表現の自由として保障する根拠を欠くものである。
仮に,上記と異なりX社の主張する自由が憲法上の保護を受けるものでも,中止命令は,ネットを通じて風景画像を提供する自由を全面的に制約するものではなく,あくまでもZ機能を有した特定地図検索システムという1つの方法による画像提供を制限するものにすぎない。また,原告はこのシステムによる画像提供が閲覧者の知る権利に奉仕すると言うが,他人の生活を覗き見る自由は知る権利のらち外であって,本件は知る権利とは関係を有しない。そして,高度情報化社会においては,個人の情報が流出した場合には刑事犯罪被害等の重大な結果をもたらす場合も間々あり,また,他人に知られたくない個人のプライベートな情報の流出は事後にその被害を回復しえないものであるから,それを防止するための規制は,かかる法の目的を達成するために合理性を持つ手段であれば足りるというべきである。
本件の中止命令は,それがなされれば,中止命令以降の損害・不利益は確実に防止できるから,目的達成のための合理性を持つ。また,中止命令に至る過程も,被害回復委員会への諮問(法8①),改善勧告(同②)という判断の担保が十分な仕組みになっており,その意味でも,中止命令の制度は目的達成のために合理的であると言える。
(2) 私見
被告が最初に主張する,権利としての要保護性の点であるが,確かに芸術写真などに比較すれば自己実現・自己統治の価値は希薄といえど,街の風景という情報を提供することそれ自体には,そうした情報を提供したいと希望する者の自己実現に資する側面もあり,「表現」として保護されないとまでは言えない。被告のこの点の主張には理由がない。もっとも,上述の通り,自己実現・自己統治の価値が大きくないことは否めないので,原告の主張するように高価値の表現とまでは言えない。
続いて,ネット閲覧者の知る権利の点であるが,各地の風景画像を閲覧することは,それにより知見を広め,また,不動産広告が誇大広告であるか否か等の判断等に繋がる点は否めず,だとすればそれは知る権利として保障するに足りるものである。そうすると,ネットによる風景画像を提供することは,個人の知る権利に資する性質を有する。また,ネットによる画像提供そのものも,それが表現行為であることには他ならないので,原則的には厚く保障されるべき性質の権利である。他方で,ネット環境の普及によって,個人の情報保護の必要性が極めて高くなっていること,また,あくまでも本件中止命令が規制するのはZ機能を有した特定地図検索システムという方法に限られることからすると,規制の違憲性は原告が主張するほどの厳格度をもって判断すべきではなく,規制手段が目的達成のために実質的な合理的関連性を有すれば足りると解すべきである。
以下,本件について考察する。まず,原告は中止命令が閲覧者の知る自由を完全に妨げてしまう点で手段の過剰性を主張するが,被告主張の通り,あくまでも1つの手段を規制するにすぎないので,原告の主張には理由がない。また,原告は,申立てに係る特定部分の削除だけで目的が達成できると言うが,画像が同じ方法で撮影されているのであれば,申立てに係る画像以外の画像も個人の権利利益を侵害する危険を孕んでいるのであり,これを未然に防止することは法1条が要請するところであって,手段が過剰でないばかりか,目的達成のために非常に有意義な手段であると言える。これらに加え,中止命令が出されて画像の配信が中止されれば,被告主張の通り,確実に被害を防止できることからすると,中止命令という手段は実質的な合理的関連性を有する手段といえ,憲法21Ⅰに反するものではない。
3 本件画像の個人権利利益識別情報該当性
(1) 被告の反論
2(1)に述べたように,中止命令が表現の自由を制約する側面があるとしても,あくまで方法の制限にすぎないこと,また,法1条に示される個人の情報保護の必要性が極めて大きいことからすると,「公にすることにより,個人の権利利益を害するおそれのあるもの」とは,通常一般人が他人に知られたくない情報の全てを含むものであり,X社が提供する画像は家の中の様子など生活ぶりがうかがえるものであるので,まさに個人権利利益侵害情報に該当し,それゆえ,中止命令は憲法21条Ⅰ違反の問題を生ずるものではない。
(2) 私見
被告が主張するように,本件中止命令は方法の制限にすぎないものではあるが,その効果はZ機能を有する特定地図検索システムによる画像提供そのものが遮断されるというもので,これはそれなりに大きな権利の制約となる。また,2(2)で述べたように,ネットで風景画像を提供する自由は憲法上の権利として一定の価値を持つことに鑑みれば,被告の主張するように反対利益である個人の情報の保護の必要性が大きいことに鑑みても,「公にすることにより,個人の権利利益を害するおそれのあるもの」とは,少なくとも,氏名,電話番号,住所等の個人識別情報に該当する情報以外で,性別,年齢,生活状況やそれに類するもので,公開されることで具体的な不利益が生ずる相当の蓋然性のあるもの,と解するべきで,かく解した場合は憲法21Ⅰに反しないと言うべきである。
本件で問題となっているのは,家の中の様子など,生活状況がうかがえる画像で,これは一般的に言って,他人に知られたくないプライベートな性質のものである。そして,家の中の情報がわかるのであれば,例えば,若い女性が被写体であった場合には,ストーカー等の被害に繋がりうるし,また,高齢者だけの世帯であることがわかれば,それによって詐欺の被害が生じかねない。そうすると,これは具体的な不利益が生ずる相当の蓋然性のある情報と言うべきであって,個人権利利益侵害情報に該当する。
したがって,中止命令は憲法21Ⅰに反することなく,適法になされたものである。
以上
<コメント>
・訴訟選択が,平成18年以来,久しぶりに問われた。ただ,行政法ではないので,処分性を論ずること等は出題が要求するところではない(そもそも,論ずるに値しないほど明確に処分性がある)。取消訴訟の他,国賠や出訴期間が経過した場合は無効確認,もありうるが,これらを落としても点数にはさしたる影響はないであろう。行政法が独立の科目として出題されるにもかかわらず,中途半端に訴訟選択について出題する意義は希薄であるように思う。
・法2⑥は,明確性の原則を論ずるような程度に達する不明確な要件の定め方か疑問がないではないが,問題となりうる以上,書くべきと判断した。その場合,処分の違憲性と議論が重複する部分があるので,そこでの私見との整合性を意識した。
・法令違憲の部分では,まず,Xが画像を提供する自由がそもそも「表現」として保障されるのか問題になる。なぜなら,そうした行為は何ら意図・思想を表現するものではなく,自己実現・自己統治の価値がないとも考えられるからである(本問の自由の特殊性)。ただ,街の風景を伝達しようとすること自体,その情報発信自体には価値があるといえるし,この点は問題意識を示した上で肯定するのが得策であろう(そうしないと,話が続かなくなる)。
・現代のネット社会において法1条に示される目的が極めて重要なのは論を待たないので,ここは問題としなかった。試験において,通常,法の目的の重要性で争われることはない。
・一見するとプライバシー権について展開したくなるかもしれないが,原告はX社であり,X社からすれば表現の自由を侵害された場面である。したがって,被告の反論でプライバシー権の保護の要請を加味して検討するにとどめた。プライバシー権を展開することは,具体的場面を意識できていないと評価されることになるのだと思われる。
・閲覧者の知る権利についても独立に検討することが可能であるが,あくまでもX社が情報を発信できなくなったことが主たる問題であり,また,知る権利は表現の自由に含めて論ずることが可能なので,そのように書いた。平成21年(遺伝子研究の中止命令)とは,場面設定が異なる(平成21年の問題の方が,遺伝子情報と言う自己にとって重要な情報の開示を発端とした問題であるため,知る権利の重要性は大きい)。
・X社の画像提供行為(表現行為)が,営利性を主たる目的とする性質のものであることにも言及すべきであった。当然,保護は弱まる方向に働く事情である。
・私見の部分は,原告・被告それぞれの主張をしっかりと判断することを意識した。議論として噛み合うことは重要である。
<さらに突っ込んだ分析(当然ながら,私見)>
司法試験の問題は,それまでの出題趣旨・採点雑感・ヒアリングが反映され,「読み切り」ではなく,「連載」の要素を持つ(「歴史」を持つ)。憲法の第6話(今年の司法試験)に向けての「予告編」ともいうべき昨年の採点雑感では,三段階審査論の抽象的・形式的利用への警告がなされていた。
今回の問題は,例えば,平成18年度の「強制のからの自由」,平成21年の「学問の自由と大学の自治の対立」というような,背後に(受験生的には)未知のテーマを考えさせる問題ではなく,表現の自由というオーソドックスなテーマについて問う,一見すると特徴のない問題である。
そうだとすると,今年の問題は何を主根として問うているのか。私が思うに,採点実感に示された「警告」の意味を了解しているかどうか,抽象的・形式的・画一的・自動販売機的処理ではなく,自ら具体的場面に即して憲法問題を解決する視点・能力を有しているかどうかによって,敷衍すると,従来のアメリカ式の審査でいくにせよ,ドイツ式の審査でいくにせよ,その審査方法を形式的に理解しているだけでなく,実質的に理解し,論理的に自らの見解を提示していけるかによって,評価を分けようとする意図があるのではないかと思う。
仮に,ドイツ式の,①保護領域→②制限→③正当化を基本に据えて検討していくとすると,本問の表現の特殊性(意思・思想は介在せず,ただ映して配信するだけ)を,①②で検討することがまず必要になろう。ただ,それに尽きるのではない。この特殊性が③の議論にどう影響するか,そこまで検討できないと,出題意図を満たしたことにはならないはずである。以下,少し詳しく述べる。
①保護領域についていえば,本問はネットで画像を配信するものであるから,我が国の憲法論においては,基本的に表現の自由(憲法21Ⅰ)の保護を受けるものである。政治的言論等のステレオタイプな「表現」と比較すると,意思・思想の表現という側面を欠き,自己実現・自己統治の側面が相対的に小さいことは否めない。まず,ここを指摘することは必要である。ただ,その2つの側面が全く認められないわけではなく,「表現」(憲法21Ⅰ)に含まれること考えるのが一般的と思われる。また,②制限についていうと,法8③はネットで画像を配信することを中断させるものであり,これが権利の制約であることは論を待たない。そうだとすると,本問で問題になるのは,③正当化の部分であり,この点に焦点を当てて議論できたかどうかが,評価の分かれ目になるように思う。本問の「表現」の性質の特殊性を,保護領域の範囲内か否かで議論することは可能であるが,範囲内か否か,オールオアナッシングの議論だけではなく,③正当化の部分,具体的な違憲審査にしっかりと反映できるかどうか,ということがポイントになるのだろう。もちろん,この本問の「表現」の特殊性に言及できない答案は,相対的に見て,評価は低くなるように思う。
そもそも,我が国のこれまでの憲法論においては,①保護領域,②制限にはあまり重きを置かず,③正当化の部分で精緻な検討をしてきた(2月22日の記事で述べたように)。現在の憲法訴訟においてはそのような枠組みで判断がされているのだから,実務家登用試験として,その枠組みをしっかりと踏まえて,実務的に通用する思考ができるか,という点が問われているのだと思う。①保護領域性の議論に目を奪われるのではなく,ということである。
…偉そうに勝手に分析しただけですからね(笑)
以下余談
憲法は似たような構成(明確性を過度に広汎とした。適用違憲無視)です。なぜ表現の自由で保障されるのかを厚く書きました…出題趣旨を真面目によんでいないといわれてもしかたないですが、22条を書くのかと悩みました…
私は、取消訴訟で明確性、7条8条法令違憲、主張適格(少し)、を書きました。その点、先生とほぼ同じ筋ですので、受験生心理として安心しています。ありがとうございます。
ただ、訴訟類型が聞かれている以上、本案との関連性を少し意識しました。後で考えると取消訴訟ではなく当事者訴訟なんじゃないかと思ったり増しています。
これからもブログ楽しみにしています。
22は,もちろんそれを論ずることは可能です。ただ,平成19年のヒアリングには,「宗教的行為の自由が一番の問題で,それにポイントを絞った検討を求めていたわけであるが,居住移転の自由だとか財産権だとかまで取り上げて底の浅い,散漫な記述をしている答案が多かった。実際上,効果の薄い(≒勝ち目の薄い)主張をしてもしょうがないわけで…」という旨が述べられています。これを前提にすると,本問でも22を問題にすることは求められていないように思われます。それゆえ,私は22の検討を除外しました。
訴訟選択については,中止命令に処分性があることは明らかなので取消訴訟でしょうね。行政法になってしまうのですが,平成19年のヒアリングに,「行政訴訟の大原則は取消訴訟であって,それ以外でいくならシビアな議論を経なければならない。新しい訴訟類型をとにかく並べようとする答案もあって,法科大学院でそういう教育をしているのかとの疑問を持つ」という旨が述べられています。これを前提とすると,取消訴訟が挙がっていればいいのでしょう。それゆえ,私は取消訴訟という点をさっと指摘するにとどめました。訴訟選択は小さな配点しかないと思います(例年,これを除外して100点なので)。
民訴,債権者代位訴訟や共有と共同訴訟の話だったみたいですね(すいません,まだ問題をちゃんと見ていませんで…:涙)。「2時間になって融合させるとなると,このあたりの視点が怪しい」みたいな感じで指摘したように記憶しています。
試験が終わってもちょくちょく見ていただけたら嬉しいです。
とにもかくにも,とりあえず休養をしてください。「ぐったり」だと思いますので(笑)
お好み焼き会、ありがとうございました。
本当に消耗していますが、いろいろ考え出して全く眠れなくなってしまいました。
最終日の択一のハードさは、模試以上でした。
もっとも緊張しました。
最終日ということもあって、胃が不完全でしたが、広島のお好み焼き、おいしかったです。
はら先生つながりで、「同志」にも出会えて嬉しかったです。
みなさん、ありがとうございました。お疲れ様でした。
明日から何しよう…再現書くにはちょっとまだ生傷すぎる…(泣)、とか思うと、今となれば、無我夢中で頑張っていた日々を、なんだか愛おしく思います。終わったってあまりにも実感がなくて。生殺し期間は、有効に使っていかなければならないのですが。
しばらくは、健康で文化的な最低限度じゃない生活を送ろうと思います。
ありがとうございました。
スタ短特訓講座をストリーミングで受講していたものです。
今年受験したのですが、憲法、悩んだ末22条構成で書いてしまいました...
構成は法令違憲+適用違憲、内容も閲覧者の知る権利や写っている人のプライバシー、インターネットの特殊性などまとめることはできたと思います。
でも、やはり問題となる権利性を出題者の意図と履き違えると点がつかないのでしょうか?
平成18年のタバコの問題も、21条構成が出題者の意図だったようですが、22条構成だった人はなかなか難しかったのでしょうか?
抽象的な質問で申し訳ありませんが、ご存じの範囲で教えて頂けたら幸いです。
試験,お疲れ様でした!
以下,あくまでも私見です。「問題となる権利性を…」の点ですが。ここは平成19年のヒアリングの書き方からしても,要は勝てるか勝てないか,の問題だと思います。五月雨式にどれも中途半端に書いてしまうのがダメなのは平成19年のヒアリングから明らかで,では,今年問題で22でいけるか,ということについて少し。
まず,言わずもがなですが,21>22なんですよね。そして,仮に22で行こうと考えると,問題文を読むに,あまりにも22で使うべき事情がないんですよ。画像提供の事業としてのスキーム,X社において画像提供事業が事業全体に占める重要度,中止命令によるの損害,こういった事情が問題文にあれば22も検討させる趣旨だと思うのですが,これがない。平成18年はこういった事情があったので,平成18年の方が22で書くに適しているように思われます。んー,やっぱり私は22を書かせる趣旨ではないように思います。ただ,22も成り立ちうるので,点にならないということはないでしょう。21の保障の範囲を狭く捉えて本問の画像提供行為は「表現」ではないという前提の立場を示して,だとすると22でしか戦えない,というスタンスで書くなら高く評価されると思います。
で,評価の問題なのですが,22で書いた場合,前述のように,21を蹴ったうえで書いたか,そうではなくいきなり22で行ったかで分かれると思います。平成18年の再現を見るに,22で書いてそれなりの点が付いている答案はあります。ただ,行政法と合算の点数であること,平成18・19あたりは受験生も手探りでそれゆえ当時の評価は現在においてあまり参考にはできないこと(だから「合格ライン労働法」という講座では第3回以降を検討対象にしたのですが…),からして確実なことはわからない,としか言えないです。スミマセン…。
今のところ,上記のように思うのですが,出題趣旨を見ていないとやはり…,というのも事実です。
Yさん
お疲れ様でした!今日は,宮島あたりへ??
そうなんですよね。何かに必死に取り組んでいる時って,実は幸せなんですよね。試験が終わると何だか空虚な感覚に陥ってしまう,そういうものかもしれません。
しばらくは,だらだらしていて何も問題もないでしょう。司法試験で傷ついた心を癒さなくては(笑)
ただまぁ,法曹として活躍するのが目的であって,試験に合格することはその手段にすぎないわけですから,ある程度時間が経ったら,何か始められるといいですね~。
脱力感でいっぱいで、疲れてしまって何も手につきません。
ところで、先生は受講生と直接連絡を取り合うことはしていますか?
ここに私がアドレスを載せて、連絡をいただくことはできるのでしょうか?
広島まで行ければいいのですが、横浜在住なので・・・
アドレスですが,うーん,ネットなので,乗っけてしまうのはあまりおススメできないですかねぇ,やっぱり。横浜在住でしたら,私も自宅が横浜市内で,週末にちょいちょい帰っていますから,時間をあわせていただければ,お会いすることはできますよ。さしあたり,28・29の週末か,来月の4・5の週末あたりに一度横浜に帰る予定です。
先生のご都合にあわせます。
静岡県が実家だと思ってましたが、横浜にも縁があるんですね・・
ビックリしました!
そうなんですよ,出身は静岡県なんですが,大学在学中~合格まで東京都,その後は横浜,今広島でその4つの都県には縁があります~。