くまだから人外日記

くまだからくまなのだ。

それでいいのだ。

【偽書】古都の博徒(“ナイン”ガールズ ルーキー・エイジ夏) 1-42

2012-03-16 00:34:04 | くまのくまによるくまのための人外日記
おどおどとした物腰の幸が勝負の際に親分に言った一言、

「こんな素人じゃあ勝てっこありません。せめて親分さんが先に決めて下さいませんか?私クジ運も悪いんです。自分で引くより残り物で構いません」

これは運を優先したブラフ(実は日頃は幸のクジ運は悪い。占い師は幸運にはなれない。でも自分で選ばなければ、その限りではない、とよく言っていた)だったのね。

さっきまで勝負の緊張感に飲まれていた詩織(しっかりしてよ。スポーツ万能の割りにはノミの心臓なんだから)もやっと一息ついた様子だ。

意外と桃恵なら小細工してでも勝ってたかもね。

桃恵を選ばなくて、そこは親分さんの勝ちだけど。

最弱の相手を燻り殺そうとしたつもりが、まさかのラッキースターを引いてしまう親分さんは、間違なく今日のアンラッキーさんだわ。

「敵わねえな。自分が自信を持って指名した博打相手に、戦う前から負けていちゃあ。ましてや素人に」

そうよ。その世界じゃあ素人ばかりだけれど、それぞれの一芸を掛け合わせたら、私達は無敵…少なくとも勝負のアヤさえ外してもらえたら負けないわ。

女だから、未成年だから、高校生だから…そう見てもらえただけで半分は勝ちよ。

享留が私にウインクする。

それにしても、こんな勝負の場にいても、身動きひとつせずに姫の肩を借りて寝ている月子は大したものね。

彼女も夜中なら、親分には負けないわね。

結局白菊さんを所払いしてくれたお陰で、余計な気を使わずに勝負に専念出来たわ。

「親分さん。では、最初の約束通りに土地の権利書の件は…」

享留がダメを押す。

「敵わねえなぁ。約束だ。持って帰るがいい。しかしお嬢ちゃん達は、妙に腹が座ってやがるな」

「腹八分目だから」

一番有り得ない桃恵が勝ち誇って言うけど、全然関係無いわよ。

「よく分からねえが、てえしたもんだよ」

それまで成り行きで立会人にされていた管理官と警部補は、やっと口を開く。

「親分さん。これで勝負ありね」

「ああ。姐さんよ。楽しませて貰ったぜ」

「アタシ達もね。凄い女子高生が居たもんだわ」

後で話が反古されないうちに、早々と早矢は管理官に権利書を見せて、封筒に収める。




私達が屋敷を出た後で、警部補が管理官と親分に聞く。

「ホントにあの権利書を持っていた娘は胸にヤバい物を持ってたんですかね?」

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