くまだから人外日記

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【偽伝】平成八犬伝奇譚with9G 外伝1『哀しき八月の凱歌』 94

2017-02-09 10:15:35 | 【偽書】シリーズ
「ああ…あまり…近づかない様に」
急にそわそわしだす筧十郎。
「え?」
「は?」

「そやつは複数のおなごの中が苦手なのじゃ」
虎千代はニヤニヤ笑いながら六人の犬士に語る。
「越後殿」
「そやつはのう、女系家族の末っ子で幼い頃から母親や多数の姉達に厳しく躾られて来たトラウマで、集団のおなごが苦手なのじゃ…損な性分よのう。猿の奴ならばウハウハ言っておろうが」
「え…そうなんですか?」
「敵百人に囲まれても顔色ひとつ変えない御人が意外にも」
「おっちゃん可哀相だな。若い女に囲まれてんのに」
「失礼ですよヒト。お兄様くらい言いなさい」
「今頃左助様がくしゃみをしているでしょうね」
「人間幾つになっても苦手は克服出来んのだなあ」
礼未、智海、仁美、忠深、孝視、悌見が脂汗をかいてじりじり後ずさりする筧十郎を意外そうな目で見つめる。




「へっくしょいッへっくしょいッへっくしょ〜いッちッくしょうめぃ〜」
「うわ!風邪か?近寄るな猿!」
「どうしました?急に」
「ちくしょうめぃ。誰かが俺の悪口を言ってやがるな」
「殿か?」
「根津の奴だな」
「おおかた昔泣かせたおなご衆であろう。日頃の行いが悪いからだぞ、猿」
才蔵と二人の入道が笑う。
つられて苦笑いする杏や幸と紅。

「ちくしょう…それにしても…」
「ヨシ…」
濡れた衣服を少しでも楽にすべく、幸や杏の着ていた乾いた衣服を纏わせるが、か細い自発呼吸を不規則に繰り返すだけで以前意識は戻らない義巳の側で優しく身体をさする信生。
「激流の中で生死をさ迷ったのであろうな」
「何とかしてはやりたいが、あまり激しい刺激は心の臓がもつまい」
大小二人の入道が顔を見合わせる。

「誰か来る。車の様じゃの」
「え?」
「確かに車だ。こんな奥地の崖地に不似合いなアメリカ車だね」
江の声に幸と杏が反応する。
「外車か」
「ああ。ワタシはこれでも車には少々詳しいんだ。間違い無いよ」
「もしや、帝の車か?ならばこの荒い運転はもしや清殿か?」
猿が片方の眉を潜めて言う。
「さもありなん。ならば同乗者は御所かも知れぬ」
「御所?」
「そう。もしかしたらそなたが良く知っている者が乗っておるかも知れませんよ」
優しく才蔵が杏に言う。
「そしてもう一台…」
付け加える様に江が言う。
「本当に凄い聴力だな〜紅ちゃんは。後ろからは同じく場違いなドイツ車だ」






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筆者敬白

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