くまだから人外日記

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【偽書】虹メイル・アン 〔第七話〕青空と海よりの使者の帰還 8

2017-06-25 09:09:25 | 【偽書】シリーズ
「案外メイルの方がメインで警官はサポートかもよ。見たり聞いたりならアタイ達メイルの方が優れているし、人間の拘束だって人間の警官より楽に出来るでしょ」
「なら何故人間の警官が一緒にいるのでしょうか?」
「判断材料はメイルが出して、具体的な逮捕指示は人間の警官が出すんでしょ。頭脳労働と逮捕はメイル」
「恣意的な判断部分だけは人間ですか」
サニーはガッカリした様に言う。
「それに、あのメイルと人間のペア警官が街の要所に立つ事で睨みを効かせて、犯罪や反乱の抑止力にはなりますね」
セイラが追加で解説した。
「やれやれ。誰の為の警察なのやら…」
メルティは二人一組の警官の横を伏せ目がちに通り過ぎて行くこの国の市民達を見つめながら言う。
「お国が違えば、組織や正義の形だって変わります。この国ではあれが正義なんでしょう」
アンはメルティをたしなめる様に言う。
「明日は早いですよ。翔太郎はそろそろ寝床に入る支度をしましょうか」
そう言いながら、カレンは僕にホットミルクの入ったカップを差し出す。
グツグツと音のする。
「ありがとう。でも沸騰しているよね。このミルク」
セイラがカップの中に人差し指を入れて言う。
「ミルクの沸点よりは低い様ですよ」
「…やっぱりね。まだまだだね、カレン」
リンダが白い歯を見せて言う。
アン達には人間に似せて、食事はしなくても歯が造型されているんだ。
それは、今までの他のメイルとは違い、合理的ではなくてもより人間的な表情を作り出すのに役に立っていた。

「少し冷ましてから頂くよ、カレン」
「すいません、翔太郎」
「いいんだよ。カレン。明日の朝はフレッシュジュースで頼むね。勿論温めないやつで」
「了解しました。翔太郎」
カレンは少しだけ照れた様に笑う。
それにしても、本当にルナはどこに居るのだろうか?


「おはようございます。ミスター翔太郎。こきげんはいかがですか?」
ホテルのロビーに僕等が降りると、既に観光案内係として、日本語を自由に喋るコンシェルジュと、僕等を乗せて走る為に用意された車の運転手とその助手の男女が待機していた。
本当ならば、僕等だけで自由に出掛けたい所だが、異邦人である僕等はこの国では勝手に単独で観光などは出来ないだろうとは想定していたから、これは予定通りの事だった。
そう。カレンが映像で見せてくれたあの湖を見に出掛ける為には、この国の政府が準備した“観光案内”のプランに乗っかるのが近道だと言う事も。
僕等は異国で人探しの為の情報を得る為に動き出した。





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筆者敬白

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