苦しみと、かすかな安堵と  (追記しました)

2013年04月11日 | Weblog


▼2013年4月9日火曜の朝に、那覇空港から神戸空港へ飛び、神戸空港から東大阪市の近畿大学経済学部へ向かう途中で、RKB毎日放送テレビ(福岡)の人気番組「今日感テレビ」の生放送の時間になったので、道行くひとたちの「何やってんのかな」という視線を浴びながら電話で、北朝鮮をめぐる危機について番組に参加。

 大学に着くと、内心のぐったり感を抑え込んで、国際関係論の講義室へ向かう。
 まず新入生中心の4時限の授業、「入学おめでとう」の言葉から講義を始める。
 講義を終えると、休憩時間の10分間もいつものように控え室に戻らず学生諸君の質問を受けたり、今年からこの講義の教科書となった「ぼくらの祖国」(扶桑社)にサインしたり、そして続いて上級生中心の5時限の授業に臨む。

 講義の通しテーマはいずれも、「祖国には、きみしか居ない」。
 客員教授としての、ぼくの本心そのものだ。

 この日の授業には、タイの大学で日本語を教えておられる先生が、わざわざ聴講におみえになった。
 この先生は初めての参加だけれど、さまざまな大学の先生が国内から、あるいは海外から、こうしてときどき聴講に来られる。
 なんと真摯な姿勢だろうかと感嘆している。
 ぼくの授業では、日本の大学での講義のあり方についても、学生時代から考えてきたとおりに、批判も問題提起もしている。ふつうなら、そんな話は聴きたくないだろうに、じっと熱心に聴き入ってくださる。

 さらに、かねてから忙しい神職のあいまを縫って聴講に来られていた神官、つまり神主さんが、近畿大学の正式な規定の通りに、健康診断を含めすべての手続きを終えられて、正式な聴講学生となられてお見えになっていて、これは嬉しかった。
 写真付きの学生証も見せていただいた。思わず、持って帰ろうかと思った。冗談です。


▼ぼくなりに、おのれの心身を励まして、ふたコマの授業を全身全霊で終えて、大阪市内の関西テレビへ。
 翌日の「スーパーニュース・アンカー」の生放送のために、いつものように担当ディレクター陣をはじめ番組スタッフたちと議論。

 この水曜アンカーは、ありのままに申して、とてもたくさんの視聴者が毎週、視てくださるが、「予算が無い」という理由で最近ずっとロケ企画は断られてきた。
 そのために、今回の沖縄・白梅の塔へのひとつの節目となるお参り(初めて、全国各地とシンガポールからの日本国民有志40数人と、白梅同窓会のみなさんと一緒に、総勢およそ50人でお参り)も、独研(独立総合研究所)が大型バスを用意し、お参りのあとの広い懇親会場や沖縄料理の昼食も用意し、プロの撮影カメラマンも独研が自前で契約して同道し、ぼくの交通費や宿泊費ももちろん、すべて自前で、そうやって撮られた映像も何もすべて、無償で、この番組、水曜アンカーにも提供する。


(※以下を念のために追記しておきます。
  どなたかから問い合わせがあったわけではありません。

 上記の日本国民有志は、正確に申せば、独研の会員制クラブ「インディペンデント・クラブ」通称IDCの会員です。会員は、年会費と、今回の参加費を支払われていますから、今回の費用を、一部、分担していただいているわけです。独研の収支としては、もちろん大幅赤字ですが。
 また仮にテレビ局のロケとなっていたとしても、この大型バスのチャーター代や40数人もの昼食代の負担はおそらく無いでしょう。白梅同窓会のみなさんとの懇親会場を確保する費用は、場合によっては可能性があったかもしれません。番組参加者であるぼくの交通費や宿泊費は、もし仮にロケであるのなら、番組負担となり、そしてギャラも出ます。ぼくの場合、それはごくわずかですが、多い少ないの問題より、当然の対価としてあるべき、という問題です。
 そして、ロケが行われていたのなら、番組参加者がまさか自前でプロのカメラマンと契約したりするのではなく、局のカメラマンやライト係らがどっと同行していたことになります。)


 ところが到着した那覇空港で、「青山さん」と声を掛けられ、そのかたから「普天間問題でアンカーのロケに来ました。スタッフも一緒です」と予想外の話を聴かされ、みると何人もの関テレのスタッフが同道している。
 びっくり。
 こちらは、何度も何度もさまざまにロケを拒絶されているから、もはやテレビ局に何も言わず、すべて自己負担で、同じ那覇空港に来ているのだから、まぁ。フェアに申して、驚くのが当たり前です。
 しかし、このかたも、そして同道している関テレスタッフも何もこうしたことはご存じないのだから、こころから「頑張ってください」と送り出した。頑張れ、アンカー。日本の報道界に、必要な番組です。

 このいきさつもあって沖縄から大阪にやって来て、4月9日火曜夜に番組スタッフとの議論に臨むときには、ぼくの胸のうちに疑問もあった。
 しかしそれは、視聴者・国民とは何も一切、関係ない。

 ここは大事なところだ。いちばん肝心なところだ。
 テレビ画面を視てくださる視聴者・国民に伝えるべきを伝えることだけに、いつも集中しなければいけない。
 番組参加の背後にどんな事情があろうとも、いざ、カメラの前に出たときには、そのカメラではなく、カメラのうしろにひろびろと広がる世界にいらっしゃる視聴者・国民だけを、いつも、必ず、見ていようと、ふだんから深く心に決めている。

 それに、前夜の議論からいつも参加してくれる、キャスターのヤマヒロさん(山本浩之アナ)と利恵ちゃん(村西利恵アナ)にも、関係ないと思う。あくまでプロデュースサイドの問題だろう。

 そこで、那覇空港での出来事にも何も触れず、ひたすら番組の内容、すなわち北朝鮮をめぐる危機と、硫黄島の英霊を取り戻すことと、白梅の少女たち、この3つについて懸命に議論した。
 ただ、あえて上に一部を記したような重い負担を、ぼくも独研もいつまでも続けられるとは思わない。自分自身の去りゆく足音を胸のうちに聞くような辛い気持ちで、内心では議論を終えて、定宿のホテルに向かった。


▼ホテルに着くと、ほんとうに休みたいと思った。正直、ほんとうに思いました。
 しかし、夜のうちに、北朝鮮の危機について、独研から会員へ配信しているレポート(東京コンフィデンシャル・レポート)の速報を出したかった。
 このレポートの正式な法人会員に、テレビ局もいらっしゃる。
 明日の番組のためにも、今夜の内に出しておきたい。そうすれば徹夜状態で番組の映像準備などをしているスタッフの準備にも役立つ。
 もちろん、ほかの法人会員、個人会員を問わず、一刻も早く危機の真相について知ることを望まれているだろう。

 日付が変わらないうちに、レポートの配信を完了して、ホッと息をつきたいところだったけど、北朝鮮をめぐって引き続き、電話とメールで情報を集める。
 日付が変わり、午前1時に、信頼しているマッサージのおばさん(ホテルの正式スタッフ)が来てくれて、「ひどいなぁ、このこり方」と、いつものように呆れながら午前2時40分まで、揉んでくれる。
 終わると、ぐっと寝たいところだったけど、引き続き情報を集める。時差からして、こうした時間帯にこそ話ができる知友も、海外にいるからだ。


▼夜が明けて、出発時間が近づく。
 いつもなら、このままこのホテルでRKB毎日放送ラジオの番組「スタミナ・ラジオ」にナマ参加するのだけど、きょうは東京へいったん戻ってテレビ朝日の生放送に参加せねばならない。
 1時間あったかどうか、わずかに仮眠して、朝風呂に入り、自分を目覚めさせて、午前8時20分、同行秘書のYと一緒にタクシーに乗る。Yは交通費節約のために大阪に残るのだけど、伊丹空港まで同行しますという彼女自身の判断だった。

 この判断は正しかった。
 なぜなら、動く車の中だから、ラジオスタジオと繋がっていた携帯電話がいったん切れてしまったからだ。
 なにせ生放送、取り返しの付かないことになりかねないところだったけど、この秘書さんと一緒に対応して、どうにか無事に生放送への参加を終えた。

 伊丹空港からはひとりで、羽田空港へ。
 機中はいつも通り、パソコン。国内の工場でつくられたパナソニックのモバイル・パソコンは、このひどい酷使によく耐えてくれる。

 羽田空港からテレビ朝日までの車中では、アンカーの担当ディレクターのひとりFさんと電話で、水曜アンカーの内容をめぐって協議を続けた。
 北朝鮮、硫黄島、白梅の少女たちと、テーマを3つもひとつのコーナーに盛り込もうとしているのだから、ふつうなら絶対に、定められた時間内に収まらない。時間枠は変わらない。さて、どうするか。

 テレビ朝日に着くと、「ワイド・スクランブル」の生放送へ。
 ご一緒したコメンテーターの意見とは視点の違う意見を申そうとした瞬間、生放送の時間の厳しさで、キャスターが引き取り、発言できなかった。フェアにみて、ぼくの発言封じではありませぬ。たくさんメールと書き込みを頂きましたが、事実として、発言封じでは全くありません。
 生放送にとって、時間の制約はほんとうに厳しいのです。


▼テレビ朝日から、飛び出すような心境で、羽田空港へ。
 その車中でも、アンカーの担当ディレクターのひとりFさんとと協議。

 意外にも羽田に早く着いたので、カウンターに全力で走る。はぁはぁ。寝てないから、ちと、きつい。
 1本前のフライトに乗れれば、アンカーへの備えにスタッフも、ぼくも、余裕が出る。

 奇跡的に1本前のフライトに乗れることになり、搭乗口で関テレに電話してFディレクターと話そうとすると、電話に出た人が「そんな人は居ません」。
 実は、関テレに限らず、テレビ局では、こうしたことが起きる。
 ふつうの会社なら、自分の知らない名前でもちゃんと探す。あったりまえだ。ところが、「居ません」という返事がテレビ局に限っては、あるのであります。

 どうにか飛行機の出発ギリギリで、Fディレクターと電話がつながり、彼は「やはり放送時間が足りないので、どれかを部分的に削りたい」という。まさしく機内に入る直前、ぼくは「削るなら、やらない」と決意とともに告げて、機中へ。
 機内では、新聞各紙にあらためて目を通して、報道の背後に隠れているものについて、おのれの記者経験を元に、考えをめぐらす。

 伊丹に着くと、すぐ、タクシー車内でFディレクターと電話協議の再開。
 この中堅どころのディレクターFさんは謙虚な人柄で、まっとうな判断をする人材でもあり、話しやすい。
「何も削らず、話し方の工夫で、3つのテーマを盛り込む」ことを最終確認する。

 関テレに着くと、白梅の塔で独研が契約した優秀なカメラマンYさんが撮ってくれた映像を、どう番組で使うかについて、映像の中身を確認したり、硫黄島の戦いや沖縄戦をめぐる根本資料をあらためて総点検したり、あっという間に、生放送の時間になる。
 生放送は、ヤマヒロさんと利恵ちゃんと、そして新しくこの5時台の放送に加わっている堀田アナと、それから画面には映らないフロアディレクターらとの気持ちのよいチームワークのおかげで、どうにか時間内に、終えることができた。
 自分自身の語り口には、いつもの通り、大不満があるけど、アンカースタッフのみんなには内心で深く感謝する。

 そしてすぐ再び、伊丹空港へ。
 今度は同行秘書Yと一緒に、羽田へ戻る。
 機中で開いたパソコンには、もう完成間近の小説がある。どんなにか、その原稿に戻りたかったか。
 しかし、朝鮮半島情勢をめぐる新しい情報の精査に集中し、さまざまなメールに返信を書き、「送信待ち」にセットする。
 飛行機を降りるとすぐに、送信しないといけない。


▼帰宅して、今夜ぐらいはすこし寝ようと思ったが、結局は、ほぼ徹夜。
 夜が明けて、大阪の主婦「ぼやきくっくりさん」がいつも通りに徹夜の努力で文字起こしをしてくださった、水曜アンカーの記録をみて、「こういう志ある視聴者に支えられて、水曜アンカーも続けてきたんだよな」と、あらためて考える。

 そういえば、きのう夕方、アンカーを終えて関テレを出ようとしたときに、沖縄の盟友から電話があった。
 盟友と表現するのは申し訳ない、先輩のかたで、ほんものの男の中の男。生粋(きっすい)のウチナンチュー(沖縄県民)。
 奥さまが大阪出身で、奥さまの親族の病のために、いま大阪の病院に詰めていらっしゃって、「今日は水曜だ」と思いだして、アンカーを生で視てくださったとのこと。ふだんは沖縄では視られませんからね。
 そして、おっきな声で「凄い。これは沖縄県民が絶対に見るべき放送だ」とおっしゃってくださり、内心で、めちゃめちゃ嬉しい、と言うより、あんな下手な語り口の放送でも、伝えるべきはいくらかは伝わったかのかなと、すこしだけホッとした。かすかに、安堵した。

 関テレの協力で、番組のDVDをコピーして、この盟友にお送りすることになった。盟友は、沖縄のメディア幹部に渡してくれるとのこと。
 さぁ、きょうもテレビ朝日の「ワイド・スクランブル」の生放送に参加し、そのままニッポン放送のぼくも大好きなラジオ生番組、「ザ・ボイス」に参加し、そこから首相官邸へ向かい、日本版NSC(国家安全保障会議)創立の有識者会議の第4回会合に参加する。


▼ところで、新刊「青山繁晴、反逆の名医と日本の歯を問う」(ワニプラス)が書店で1冊も見つからないというメール、書き込みを山のように頂いています。
 ぼくの盟友のひとり、もともとはひとりの視聴者、読者でいらっしゃったKさんが出版社、書店と、ボランティアで精力的に交渉してくださっています。そして、みなさんが書店にリクエストを出し続けていただくと、情況が好転するかもしれません。

 サイン会もなかなか、ままなりませんが、東京でひとつ決まっています。下に、三省堂神保町本店のHPにある情報から、イベント内容などをアップしますから、よろしければ参加してください。
 魂から、みなさんと会える機会を待っています。


【青山繁晴トークイベント】

三省堂書店神保町本店のHPには、「閉店後 神保町の夜を熱くするミッドナイトセッションが決定しました」という面白いキャッチフレーズが書き込んであります。

『青山繁晴、反逆の名医と「日本の歯」を問う』発刊記念
青山繁晴ミニトークショー&サイン会@三省堂神保町本店1F
トークセッションタイトルは、「祖国と、歯と、友情と」……真ん中の「歯」がユニークですね。ふひ。

▽日時 2013年4月25日(木) 開場 20:15 開演 20:30

▽会場 三省堂書店神保町本店1階特設会場

▽参加条件 三省堂のHPには、こう書いてあります。
~扶桑社刊『ぼくらの祖国』、ワニ・プラス刊『青山繁晴、反逆の名医と「日本の歯」を問う』どちらかをお買上のお客様に参加整理券を差し上げます~
 つまり、「ぼくらの祖国」もOKです。

▽問い合わせ三省堂書店神保町本店1階 03-3233-3312(代)
 電話予約もOKとのこと。便利ですね。

 三省堂のHPの案内文はここです。


 待ってるよ、みんな!
 下掲の「第17回独立講演会」とともに、待ってます。

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