詩絵里(★シェリー★)の星の囁き達

尾崎詩絵里(★シェリー★)の自作恋愛小説及びポエム、写真専用部屋です。掲載文の引用、転載は固くお断りいたします。

恋愛小説「途中下車」NO.84

2011年11月15日 | 恋愛小説「途中下車」
恋愛小説「途中下車」は、作者が初めて掲載する、大人の恋愛を描いた小説であり、
文中に一部今までの小説とは違った、男女の恋愛描写が描かれている部分がございますので、ご了承の上お読みください。
また、この物語に関しては、長編小説初挑戦で現在作成途中のため、不定期に掲載される場合があります。
当小説は、作者のオリジナルフィクション物語であり、登場する人物、団体名は実在するものとは全く関係ありません。

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第四部第五章「電話」NO.84

「ご・・・ごめん。松岡君。今日、休みみたいだったから。」
ポケットの中で振動をしていたのは、会社から貸与されている携帯電話だった。

「休みみたいだったから。」
その言葉を聞いて、俺は、今日課長昇進の辞令交付の日なのに無断で会社を休んでいることにいまさらながら気がついた。

「え・・・と、あの・・・」
着信の携帯の電話番号は、見たこともない番号だった。
「あ・・ごめんなさい。私、中森恭子です。」
ザラっとした声の向こうに、同期入社の中森の顔を思い出した。
「な・・・中森さんが、なぜ俺に電話を・・・?」
「・・・・・・。」
しばらくの間、無言の時間が過ぎた。

10月の秋の空は、昨日までのつきぬけるような青空ではなく、今にも泣き出しそうな
灰色の雲が広がっていた。

「私・・・実は、松岡君に話をしておきたいことがあって。高井君と松井さんのこと。」
ズキリ
また、見えないナイフで心臓をえぐられたような痛みを覚えた。
さっきまで、百合菜を高井から取り戻そうってあんなに気持ちを固めたのに、二人の名前を聞くとやはりまだ心が痛かった。

「電話じゃなんだから、会えないかな?」
電話の向こうの中森は、少し怯えた声で切り出してきた。
「松岡君には、本当のことを知っておいてほしくて・・・」
「本当のこと?」
「うん。そして昌樹・・・高井君の目的も。」
「わかった。」
「じゃあ、今夜にでも話をしたいんだけど・・・・」
「わかった。ちょっと今、出かけているから、東京に戻ったら電話する。」
俺は、胸に大きな黒い鉛を飲み込んだような気持ちで電話を切った。


**第四章第六章「最低」NO.85へつづく**
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