Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

『ロンド』柄澤齊のミステリ

2014-06-28 12:17:39 | ミステリ小説
                                          

木口木版画の第一人者と云われている人のミステリデビュー作です。どのような経緯でもってミステリを書かれたのか分かりませんが、素人っぽさは

微塵も感じることのない文体で、しっかりとしたミステリを書かれています。わずかの人しか観ていない「ロンド」と題される一枚の絵画。事故により急逝した異端の画家が残した一枚の絵画。

その絵画を巡って起きる殺人事件。謎の人物からの個展の招待状が届き、若い学芸員が赴くと有名な絵画を模した死体が遺されていた。誰が何のために・・・。さらに第二、第三の招待状が届く。

絵画と言えばリビングなどに飾る、花や人物像や印象的な風景を描いたものを思い浮かべるが、またある一面では宗教や死生観を表わした残虐でグロテスクな絵画も沢山残されている。

こういった宗教に則った思想とか刑罰的な絵画や、作家自身の死生観そのものを表わした作品などがあることを物語のなかに取り入れ絵画の魔力のようなものを示している。



天才が描きあげた一枚の絵。その世界に住むものならばその絵に魅了される由縁が、熱く正確に書き込まれていて読んでいるこちらにも分かりやすい。

狂気にも似た行いをする人物や人間関係などがしっかり書かれているので美術界などとは無縁でも読み応えがあり、ミステリとしての動機や犯行理由もすんなり納得してしまいます。

ただ、犯人は中盤以降で明らかになるので犯人さがしのミステリと思ってはいけません。でも途中で犯人が分かったとしても物語りはそこで終わりではありません。

彼と彼女、そして犯人との息詰まる展開が続きます。 異質の作家による異質のミステリ。そんな感じですが最後まで飽きずに読むことが出来ました。

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