中華紀行文

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海外無職旅行(2)マカオ、広州編

2014-10-23 | 旅行大好き


2012年8月になってすぐマカオに降り立った僕は、何回か利用したことのある安宿へ向かうことに。
マカオも交通カードを持っているので、路線バスに乗るもの楽ちん。
何度も来ているので、地理は大体わかってる。

■幾度目かの和平飯店
昔ながらの風景が残る、新馬路に佇むこの宿は、1階が入口。2階がフロントと 客室、3階が客室。



ただ、2階は売春婦(超ブス)がたむろしており、2階は売春婦が借り上げている。
話がまとまれば、2階の部屋で致すというわけだが、3階に上がっての客引きや営業はしない。
無視して3階に上がってしまえば、追いかけてくることはない。

この売春婦たちは、100%大陸人。
マカオも中国なのだが、「一国二制度」なので、旅行者としては、事実上違う国と言って差し支えない。

大陸人がマカオに活きたければ、「通行証」という1週間の滞在許可を得る必要 がある。

この売春婦たちも、「通行証」を持って、陸路でマカオに入境するわけだ。
そして、安宿の部屋を借り上げ、客を取り、期限と同時に中国に戻る。

そして、また戻ってくる。
売春をして稼いだ金を、賭場ですってしまって、故郷に帰れない売春婦も珍しくないそうだ。

3階の客室は、まあそれなりで、独房みたいな感じ。
エアコンはないけど、天井に特大の扇風機が付いている。
手入れは行き届いているから、寝るのは問題ない。



ただ、外はむし暑く、古いせいか、特大のゴキブリがいる。
なので、カバンはしっかりチャックしておかないと、中に侵入してしまう。

この宿のオーナー、親父さんが結構いい奴で、僕は好きなのです。
広東語なまりの普通語(ヘタクソ)を聞くことや、大陸から目と鼻の先なのに、簡 体字ではなく繁体字で書かれた新聞「澳門日報」を読むその姿から は、歴史を 感じる。

マカオに来ると、必ずここに宿泊するせいか、向こうも僕を覚えてくれており、 「おーまた来たか」と温かく迎え入れてくれた。
チェックインをして3階に上がる。

■Yさん(60代男性)と再会
3階に上ると、以前、この宿で会ったことのあるYさんと偶然再会。
どうやら、となりの部屋に宿泊しているらしい。

Yさんは、既に還暦を過ぎている。
返還前の香港で長く現地採用(25年以上)をされていた方で、今は広東省在住。
ヒマがあるとマカオや香港で遊んでいる。前回会った時も同じシチュエーション だった。

■Yさんと一緒に博打へ

まさか再会するとは思っていなかったので、お互いに再会を喜んだ。
Yさんお薦めの食堂で、一緒にビールを飲みながら食事をした。

そして、一緒に賭場へ行き、大小の結果に一喜一憂しながら、これまで起きたこ と、上海で職場をクビになったことを話した。

Yさんは、「もう、日本に帰った方が良い」「覚えた中国語を武器に、日本で仕 事を探した方が良い」「親御さんを悲しませるな」と諭し、慰めてくれ た。

マカオの賭場は24時間営業なので、深夜まで博打に興じた。
勝つためのコツも伝授してくれたせいか、それとも、不幸が続く僕に神がほほ笑 んだのか、とにかくこの日は大勝できた。
10万円近くの臨時収入となった。旅費が戻ってきた。

■Yさんと部屋飲み
深夜、賭場から和平飯店に戻る道すがら、「部屋でのもうか」と誘われた。

安ワインを飲み、パンを齧った。

少し酔いが廻ってくると、Yさんは滔滔と「若いころ、何故香港に来たのか」と語ってくれた。
床にはゴキブリが這いつくばっているけど、もう慣れた。
広東エリアは高温多湿、そういうエリアなのだ。

Yさんは、「返還前の猥雑な、東洋でも、西洋でもない、雑多な感じに惹かれた」
「若いころ、テレビで見て、居てもたっても居られなくなって仕事を辞めて香港 に行った」と話してくれた。

ただ、現実は厳しく、「スタート時は、月給10万円以下だった。糊口をしのぎな がら、頑張って働いた」
「最後はそこそこ貰っていたけど、結婚はしなかった。長く付き合っていた香港 人女性を信じることが出来なかった。広東語も英語も覚えたけど、決定 的に踏 み出せない何かがあった。向こうは愛想を尽かして香港男と結婚したよ」とのこ とだった。

Yさんに言わせれば「中国に返還されて、雰囲気もだいぶ変わったけど、香港は いつまでも香港だよ」と。

そして、僕の現状をについて、
「君はまだ30歳前だし、若い。北京語だってできるようになった。今すぐ上海に 戻って、荷物をまとめて日本に帰るべきだ」
「僕のようになってはいけない」「外国人が一人、異国の地で生きていくことは 君が思っている以上に大変なことだ」と伝えてくれた。

そして、「日本は良い国だ」とも。

ただ、もし時間が戻っても、「香港にまた行くだろうね。僕は香港が好きなんだ。後悔はしていないよ、自分で決めたことだからね」と話していた。

この腹落ち感が、人生には重要なことなんだ。改めてそう思った。

最後に、「寂しい人生かも知れないけれど」Yさんはそう付け加えた。

■広州へ行こう
Yさんから色々話を聞いているうちに、「とにかく一度、中国でしっかり就職し よう」という気持ちがまた湧いてきた。
2年後、3年後に日本へ帰国するとしても、今の負け犬のまま戻りたくない。

そういえば聞いたことがある。広州は少し給料が高いらしい。
上海でうまくいかないなら、広州でも良いかな。

Yさんは現在、広東省在住。広州情報を少し仕入れ、「広州にいく」と伝えた。
ワインはすっかり空だ。Yさんも僕も、だいぶ廻ってきた。

「決めたなら、しばらく頑張ってくれ、いつかまたマカオで会おう」と再々会を約束した。

部屋に戻り、ひと眠りし、起きると気が変わらないうちに広州へ行こうと、マカ オ-中国の国境ゲートに向かった。

■珠海経由で広州到着
マカオの対岸、広東省珠海市からバスに乗って広州へ。

珠海国境で中国入国審査官から
「你的留学签证已经到期了。为什么再来这里?」
(君の留学ビザはもう切れてるけど、どうしてまた戻ってきたの?)

と聞かれた。

僕は、「现在我会说中文,所以我去中国旅游,看好后回日本」
(中国語が話せるようになったから、中国旅行に行くんだ。観終わったら帰ります)
と答えたが、正直ドキリとした。こんな事を聞かれたことはこれまで一度もなかった。

もちろん「我在这里找个工作(ここで仕事を探すんだ)」などと答えてはいけない。
旅行ビザだから。

珠海-広州は約2時間。道中、広州の人材紹介会社に面談設定依頼をした。
今回は転職活動だから、宿はドミトリーではなくて、安めのビジネスホテルに チェックインした。
僕からすれば天文学的数字を払ったのだが、これは気を引き締めるためで、「旅 行気分じゃいかん」と思ったのだ。

以前、広州には一度遊びに来たことがあった。
あの頃は、留学中だったし、中国語をどんどん吸収して、自分の未来は明るいと 信じていた。

それがどうだ、まさか僅か数ヶ月後、無職の状態で、再び広州に来ることになる とは。

とにかく、考えても仕方がない。広州の地理は大体把握している。
ホテルでスーツに着替えて(実は持ってきてた)紹介会社に向かった。

■広州の転職事情
「現地採用事情」として、別記事にします。
広州及び広東省の転職事情は、また次回。


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