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岡ちゃん杭州緑城の監督就任のキーは、中国サッカー協会

2011-12-07 14:00:00 | スポーツ

岡田武史・前サッカー日本代表監督が12月6日午後5時過ぎ、中国・上海浦東空港に降り立った。杭州市(上海市の南西に位置する、人口約800万人の中級都市)に拠点を持つ杭州緑城と交渉をするためだ。「岡田氏が中国で指揮を執る!?」この一報が出たのは11月下旬。「中国サッカー協会が中国の各チームに、岡田氏の推薦状をファックスで送っていたことがわかった」というニュースが流れたからだった。

 

当初、日本のメディアが懐疑的な目で見ていたのは報道を見れば明らかだった。また、中国のメディアも、懐疑的に見ていた。なぜなら、杭州緑城の経営母体である中国屈指のデェベロッパー「緑城地産集団」が、中国国内の不動産価格の下落の影響などを受け、経営が悪化しているニュースが出ており、また、11月末にはオーナーの宋衛平氏も、「どこか引き受けてくれるなら、、、」と発言するなど、チームを取り巻く環境が苦しいのは明らか。そんな中、降ってわいた様な「岡田氏が杭州緑城の監督に就任か」というニュースは、懐疑的だが驚きの念で、報道されていた。

※岡田武史氏、中国サッカークラブの監督就任か
http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2011-11/24/content_23995270.htm

※【サッカー】岡田武史旋風、中国上陸=各紙渾身の飛ばし記事が炸裂
http://kinbricksnow.com/archives/51759593.html

※岡ちゃん激白!なぜ?今?中国なのか!
http://www.nikkansports.com/soccer/news/p-sc-tp0-20111207-873502.html


果たして本当に就任する可能性があるのか?本稿を書いている時点(中国時間12月7日13時時点)ではわからない。ちょうど今頃(13時ころ)、岡田氏が杭州での交渉、視察を終え、サッカー・スペインリーグのFCバルセロナvsレアル・マドリードの試合、通称“クラシコ”の中継のため、スペインへ向かうところだ。スペインへの移動の機内で、短い時間ながら、宋オーナーとの話、杭州の状況などを元に、就任に値するかじっくり考えていることだろう。

筆者は岡田氏就任の可能性は高いと見ている。ただし、他のメディアに出てる様な、「浦和の監督就任に断り」「海外でのクラブを取ってみたい」からという理由ではない。多くの人は、今回の件が突拍子も無かった様に感じたかもしれない。実は、この“プロジェクト”への動きは、既には半年以上前から確かに進んでいた。それは岡田氏へのアプローチというわけではなく、『中国サッカー界が本腰入れて日本サッカー界から学ぶ』という動きだ。

そもそもの前提として、中国サッカーの評論家、記者などから、日本サッカーは非常に高い評価をされている。日本男子代表の2010年ワールドカップ南アフリカ大会でのベスト16入り、2011年年始のアジアカップの優勝、女子代表のワールドカップ優勝は、テレビのスポーツ番組や、スポーツ新聞で大きく扱われ詳細に分析し、「日本サッカーを見習え」と報道されていた。中国サッカー界の不甲斐無さも影響している。

中国サッカー界では、国内リーグの八百長問題で審判や選手などが逮捕され、今も尾を引いている。最近もテレビ番組で特集を組まれていた。また、中国代表、特に男子代表がふがいない。ただでさえ、中国人ファンからも「弱い」「荒っぽい」「期待していない」と言われ続けている。過去にスペイン代表監督を歴任したホセ・カマーチョが、2014年ワールドカップ3次予選前に就任し、本大会への出場を期待されたが、予選序盤から負けて3次予選であっさり敗退。カマーチョ監督も「中国代表選手達をを良く見すぎてた」と言う始末。国内サッカーファンから「どうしようもないな・・・」という諦めの空気が流れている。

さて、話を戻そう。メディアの間では「日本サッカーを見習え」という風潮ができていたのだが、中国サッカー協会が具体的な動きを見せ始めてたのは今年から。特に、つい12月6日に正式に中国サッカー協会会長に就任した蔡振華氏(元卓球の世界チャンピオン)が、表に出始めてからだ。会長に就任したのは6日だが、前ポジションの国家体育総局副局長時に、既にサッカー界改革に動きだしていた。川淵三郎・日本サッカー協会名誉会長が7月5日に北京でのサッカーフォーラムに招待され、「アジア最強への道」というテーマで日本サッカー界がいかに発展していったかを講演した。主催は中国のネットメディアだったが、日中両国のサッカー関係者同士の交流がはかられており、その際に、フォーラムの関係者や、来中していた日本のサッカー界関係者から「蔡振華はやり手だよ。本気で日本サッカーを学ぼうとしている。中国サッカー界の改革に取り組もうとしている。日本も油断しているとあっという間にやられるよ」と話していた。その後、10月には実際、日本へ訪れ様々な現場に足を運んでいる。そして、上記の「中国サッカー協会が岡田氏のプロフィールを各チームに推薦状」へと繋がるのである。報道にも出ているが、中国サッカー協会が日本サッカー協会へ、有能な日本の指導者を派遣できないか依頼し、日本側は丁度フリーで実績のある岡田武史氏を薦めたのであろう。タイミングさえ合っていれば、先日、ガンバ大阪の監督から退任が決まった西野郎氏の推薦もあり得たはずだ。

※川淵三郎氏が北京で講演
http://www.insightchina.jp/newscns/2011/07/11/31294/
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=52544
http://www.news365.com.cn/xwzx/tyxw/201107/t20110706_3079705.htm
http://sports.sohu.com/20110706/n312601710.shtml

※蔡振華氏の動き。日本サッカー視察など
http://j.people.com.cn/94473/7603198.html
http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2011-10/28/content_23748528.htm
http://www.xinhuajapan.com/open/2011/10/post-444.html
http://tv.sohu.com/20101026/n276513592.shtml

※12月6日、蔡振華氏がサッカー協会会長に正式に就任。意気込みなど。
http://news.sina.com.tw/article/20111206/5136081.html
http://sports.big5.enorth.com.cn/system/2011/12/06/008268729.shtml
http://big5.xinhuanet.com/gate/big5/www.ln.xinhuanet.com/xwzx/2011-12/06/content_24274016.htm

※蔡振華氏の経歴
http://zh.wikipedia.org/wiki/%E8%94%A1%E6%8C%AF%E5%8D%8E
http://baike.baidu.com/view/73112.htm

しかし、ここでネックになるのが、「杭州緑城に岡田氏を雇うほどの資金力、チーム補強の資金力が本当にあるのか?」ということだ。

11月末に宋オーナーが発言した「体力ある企業なら提携」「トップチームは無くしてユースだけ残す」といった発言から判断すると、「NO」であろう。岡田氏は日本代表、横浜Fマリノス時代には1億円を超える年棒を貰っていたと言われている。今の杭州緑城にはかなりの高額であろう。最近のニュースであると、年棒6000万円くらいまで下がってはいるようだが、それでも負担は大きい。岡田氏側が既にそこまで金銭的に拘らない可能性もあるが、そもそもチームを強化する上で、選手補強費が無ければ、岡田氏でも手腕を発揮しづらいだろう。岡田氏は自分の年棒より、自分の手腕が発揮できる環境、経営状況かを重視するはずだ。

※“不動産サッカー”の終焉か 第1号は岡田前日本代表監督と交渉中の杭州緑城?
http://www.insightchina.jp/newscns/2011/12/06/50963/

現状の杭州緑城の経営状況ではかなりきびしい…。しかし、ここで救いの手を差し伸べると思われるのが中国サッカー協会。ワールドカップベスト16の監督から、日本サッカーから学ぶ絶好の機会である。何が何でも交渉をまとめさせたいはずだ。杭州緑城の経営状況がまずいなら、中国サッカー協会が岡田氏の年棒を負担する可能性もあり得る。どんな手を使ってでも、岡田氏を中国に引きとどめる様仕掛けるはずだ。もちろん表だっては、杭州緑城の支援の動きは見せないとは思うが。

12月5日には、杭州緑城の前監督(10月14日に契約解除)の呉金貴氏までが「俺は蔡振華氏ならサッカー界を変えてくれる!」とエール。もともと交流ある2人らしいのだが、元とはいえ杭州緑城関係者だけに何か「中国サッカー協会も杭州緑城がうまくいくよう助けてね!」とも捉えれるなと感じた。本人はもともと上海出身の様なので、杭州にそこまで入れ込むことはないとは思うが。ちなみに、呉氏が監督だった今年3月のACL(アジアチャンピオンズリーグ)で、名古屋グランパスをホームで2-0で撃破し、クラブ史上初のアジアでの勝利を得ている。試合内容も、震災直後という状況の中の名古屋相手とはいえ、両ウィングを配置した攻撃的で面白いサッカーだった。

岡田氏の就任は、1チームの問題に留まらず、日中両国のサッカー協会間の関係にとっても重要なのだ。岡田氏がいつ回答するのかは不明だが、NOと言わさせて貰えないだろう。

※杭州緑城の前監督・呉金貴・新会長にエール

http://sports.qq.com/a/20111206/000038.htm

http://news.ifeng.com/sports/gnzq/gjd/detail_2011_12/06/11128563_0.shtml


※宋オーナーが岡田氏とご対面
http://roll.sohu.com/20111207/n328128162.shtml
http://sports.sina.com.cn/j/2011-12-07/06055858395.shtml

※杭州緑城チームのホームページ
http://www.greentownfc.com/


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