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楓荘日記

米女優サンドラ・ブロックの情報を中心に、洋画、日米ドラマ、本など、思いつくまま書いていきます。

「彼のブラインドサイドを守るのがあなたの役目」

2010-02-27 21:10:06 | 映画感想

 昨年、感謝祭前の週末に全米で公開されたとき、ここまでの興収、さらにはアカデミー賞をはじめとする各賞に主演のサンドラ・ブロックがノミネートされるとは、おそらく、ほんとに誰も、予想も期待もしていなかったであろう『しあわせの隠れ場所』が、ようやく日本でも公開になりました。

予告編 こちらは、全米公開前の1本目の予告編です。


 日本では、2本目の予告編を公式に使っているようですね。

 「しあわせの隠れ場所」(原題: The Blind Side)

 監督/脚本: ジョン・リー・ハンコック

 原作: マイケル・ルイス著「ブラインド・サイド アメフトがもたらした奇蹟」(ランダムハウス講談社 刊)

 出演: サンドラ・ブロック/ティム・マッグロウ/クイントン・アーロン/キャシー・ベイツ

 ストーリー: 不幸な生い立ちでホームレス同然の生活をしていた黒人少年マイケルが、裕福な白人のテューイ一家と出会ったことで、初めて家族というもの、友達というもの、そして自分の人生というものと向き合うことを知る。体格と運動神経のよさから高校アメリカン・フットボールの有望選手となった彼は、数多くの名門大学から誘いを受けるほどに成長していく。

 公式サイト: http://wwws.warnerbros.co.jp/theblindside/main/

 

 この作品の内容については、全米公開近くになってようやく、いろいろなインタビューや記事で分かりましたが、それまでは、「お金持ちの白人がかわいそうな黒人を助ける話?」という、ちょっと皮肉な目で見ていました。インタビューによれば、サンドラ・ブロック本人も、脚本を読んだ段階では、リー・アン・テューイという人物、彼女の行為自体も納得できなかったそうです。これは、トーク番組「The View」に出演した際に、リー・アン本人を目の前にはっきり語っていました。

 アメリカ南部は保守的であり、共和党が強い地域であり、人種差別、貧富の差も激しい地域のようです。原作を読むと、リー・アン自身も、人種差別意識の強い父親のもとで育てられたそうですが、結婚相手のショーン(チェーン・レストラン「タコベル」の経営者)が人種差別意識をまったくもたない人物だったせいか、本人が父親を反面教師にしたせいか、それは分かりませんが(本人はインタビューで、夫のおかげ、と語っています)、人種だけでなく、いろいろなことに対する偏見をもたない人のようです。彼女にとって大切なのは、自分のおこないが自分の家族にとって正しいことかどうか、それに尽きるようなのです。そのためなら、つまり、家族を守るためなら、誰に何と言われようと、まったく意に介さず、突き進む。車のダッシュボードにはつねに銃を入れておくような肝っ玉母さんでもあり、いったん受け入れた相手のことはとことん支えるが、敵と見なせば、彼女ほど怖い存在はない……。

 リー・アン・テューイ本人と、ニューオーリンズ・プレミアで。

 この映画では、リー・アンの視点を通してマイケルとの出会い、絆が語られていくわけですが、彼女の、一見、独善的な言動は子供っぽくも感じられます。それが嫌味に思えないのは、リー・アンという人がダブルスタンダードをもたず、どんな相手であっても正義を通そうとする人物であり、マイケルはたまたま黒人だったけれど、おそらく彼が白人だろうが、ヒスパニックだろうが、彼女の保護意識をかきたてる状況にある子供であれば、誰にでも手を差し伸べただろうと納得できるからだろうと思います。そして、その猪突猛進型の彼女を受け入れて支える夫ショーンの器の大きさも感じられます。

 さらに、なによりも重要なのは、マイケル本人のもって生まれた心の大きさ。彼は悲惨な育ち方をしたにもかかわらず、ひねくれることなく、自分に突然注がれた愛情と関心を驚くほど素直に受け入れます。そして、これまた驚くほど素直に、愛情を注ぎ返すのです。

 正直、実話だと知らなければ、「ふん」と言いたくなるような話ではありますが、どのシーンも決して感傷的になりすぎず、どちらかといえばコミカルに演出されており、うがった見方をしそうだった自分を忘れてしまうほど、素直に楽しめ、じんわり感動できました。マイケルのような少年はいくらでもいるわけで、彼一人だけでなく、ほかの子供たちも救うべきだろうと思わないわけではありませんが、このストーリーは、もっと身近な思いやり、自分の隣の人に対する関心を描いているように思います。1人の人間がほかの1人に手を差し伸べることによって、できることの大きさ。私たちはつい、自分1人がやったって……とか、この子1人を救ったって、その後ろには何万と不幸な子がいる、とか考えがちですが、1人から始めることが大事なんだ、と思い出させてくれる映画でした。ちょっとだけ、他人に対して優しくなろうと思うような。

 さて、サンドラ・ブロックの演技についてですが、彼女のいいところが存分に出ていると思います。この映画がお涙ちょうだいものにならなかった点、さらに、演じ方しだいでは偽善的なおばちゃんになりえたリー・アンを好感度の高いキャラクターに仕上げたのはサンディーの功績だと思います。映画の出来としてあまり高い評価は受けていないこの映画がアカデミー賞作品賞にノミネートされたのは、サンディーに対する支持のおかげだと言われているのも納得できます。激情をあらわにすることなく、ちょっとした表情で観る者の想像力をかきたて、リー・アンという人の豊かな心情がうかがえるのです。

 上映時間128分と長めですが、その長さはあまり感じませんでした。ただ、編集のせいか、話の展開が散漫な印象は受けました。時系列がちょっと分かりにくいというか。アメフトについてまったく知らない私としては、原作がアメフトについてかなりのページを費やしているのに対し、映画ではそれほどアメフト・シーンが多くないのが助かりました。

  さて、アカデミー賞発表まであと1週間。作品賞ノミネートはおまけのようなもので、従来の5作品ノミネートであれば、100%ノミネートされていない作品だと思います。そして、主演女優賞獲得が確実視されているサンドラ。う~ん。演技単体でみれば、「最優秀主演女優賞」というような演技ではないと思います。キャリア最高の演技、とも言われていますが、私は日本未公開の“Infamous”での演技のほうが上だと思いました。あれは助演ですが。このまま獲得してしまえば、「最悪の主演女優賞」というレッテルが張られるのは間違いなく、ファンとしてはそういうのは見たくない。なんとか受賞はしないでほしいと、けっこう真剣に祈っています。とても現実をよく見極められる人だと思うので、たとえ今回オスカーを獲ったとしても、それが当然の受賞だと思うほど愚かではないと思うので、その点は安心していますけれど。

 ちょっと気になるのが、昼食会で、「この一連の受賞やノミネートによって、作品選びに対してとても慎重になっているし、責任も感じる」と語っていたことです。もちろん、質のいい作品に出てほしいですが、あまり賞に対する責任は気にせず、今までどおり、観客を楽しませる女優さんであってほしいと思っています。ゴールデングローブとかオスカーとかに絡むより、ピープルズチョイス賞にいつも絡んでほしい。それが私の勝手な願いです。

 最後に、僭越ながら採点: 85点/100点  ちょっと甘いかも。

ちなみに私の採点基準は、レディースデー(1,000)なら観ても損はなし、というのが60点、通常料金(1,800)で観ても損はなし、というのが75点です。でも、けっこういい加減です。

 


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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (アクア)
2010-02-28 17:38:50
早く観たいのですが、まだ観に行けてません

変な先入観を持たないように雑誌やネット等の批評もほとんど見ないようにしてました。
何も考えずまっさらな気持ちで観たいなぁと思って。

私もサンドラにはオスカーやゴールデングローブよりもピープルチョイスに常に絡んでくれるほうが嬉しいです。
だってその方がサンドラらしいもん。

それにしても上映劇場少なすぎ
たしかに日本人にはNFLって馴染みが薄いけど、サンドラがオスカーにノミネートされたことをきっかけにしてももっと劇場数を増やしてもいいのになぁと。
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アクアさんへ ()
2010-02-28 20:44:26
私も2回目の鑑賞を早くしたいのですが、なかなか時間がとれず。
なんとか今週中にはまた観たいです。

そうですよね、プレゼンター以外でああいう授賞式で見るとどうも違和感(苦笑)。

劇場、少ないですよね。
たぶん、公開を急に決めたせいで押さえられなかったのでは。

アクアさんのご感想も楽しみにしてます。
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願い。 (104)
2010-03-02 00:19:49
やはり作品も見ずにアレコレ受賞するだのしないだの語るのはダメでしたね。
今日見てきました。
私の願いはただ一つ。

「この作品でオスカーを獲って欲しくない!」ってことです。

感動的な場面はなくてもいい作品はたくさんある。
泣きわめいたりしなくても抑えた演技というのは伝わる。

しかしこの作品のサンディ。
良いシーンもあるけれどオスカーを獲るまでの演技だとは到底思えません。
作品自体のパワー不足なのかもしれませんが。。
とてもいい話ですが、「実話」というのが最大のポイントで、「映画」としてどうかと言われると個人的には普通だと思いました。
なかなか難しいですよね。実話って。語らなければならない部分があり過ぎて感情の変遷まで描き切れていないように思いました。

それでも、最後のシーンは良かったです。
マイケルに部屋を用意した後のシーンも、後見人になるとマイケルに伝えた後に去るシーンも。リー・アンの愛情がこれらのシーンに見え隠れして感動しました。

しかし・・・・・どうかオスカーを獲りませんように
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104さんへ ()
2010-03-02 17:34:38
やっぱりねえ……。
問題は、どうやら業界全体がこの作品の演技だけでサンディーを評価していないらしいことですよね。
どこを見ても、受賞予想の1位になっていて怖いです。

最近の雰囲気として、キャリー・マリガンがBAFTA受賞のせいか、少し勢いを盛り返してきたようではありますが。

私はこの映画も彼女の演技も好きなので、受賞してしまうことによって、その演技の価値が下がってしまうのがイヤですね。

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