20世紀のゲーデルから19世紀のガロアへ 2014/6/30
ゲーデルの次はさて何をやろうか、と思案していたが、思いきって、ガロアの群論にチャレンジしてみようと考えた。なぜ5次方程式には解の公式が存在しないのか、どうして「存在しない」と証明できるのか、どうしても理論的に理解したくなった。
1次方程式 ax+b=0 (a≠0)は、x=-b/a、これは中学数学。
2次方程式 ax^2+bx+c=0 (a≠0)は、x={-b±√(b^2-4ac)}/2a 、これも「平方完成」という四則演算とべき計算で簡単に導ける。
3次方程式のカルダノの公式、それに基づく4次方程式の解の公式も、複雑ではあり、計算は厄介だが、論理的にはさほど難しくはない。
そして、5次以上の方程式には解の公式がない。
しかし、ガウスが証明した「代数学の基本定理」によれば、「n次方程式には複素数体の中にn個の解が存在する」、という。
最初は戸惑った。「解の公式は存在しない」、しかし「解は存在する」とはどういうことか。詳しく見ると、「方程式の係数を使って解を示す式は存在しない」とある。
面白そうではないか。よしチャレンジしてみようと考えた。この分野の数学を「群論」と言うらしい。ガロアはこの群論という数学を創設した天才で、現代数学の中で最も抽象的とされている代数学Algebraの基礎を築いたらしい。21歳で決闘に敗れて死んだ、とある。
どうせやるなら、「数学読み物」ではつまらない。教科書を探した。そして次の本をAmazonで見つけた。
Foundations of Galois Theory M.M.Postinikov Translated by Ann Swinfen Dover Publiations ,inc 1st published in 1960
英語の本を選んだのは、外国から輸入された学問は日本語の専門用語は時に「おどろおどろしい」が、英語の場合普通の日常用語を使っているから比較的とっつきやすいこと、それに英語の方が日本語より論理的に明確に書かれているから。例えば、「群論」より、「Group Theory」の方が易しく感じるし、また、「~は・・・であり、~~だ」というような日本語は時に理解に苦しむが、その点英語の方が前提として述べているのか、論理の流れで必然的にそうなる、と述べているのかがはっきりしている。
ということで、まず第1ページを開いた。
the Galois groupの概念がつかめない 2014/7/8
体P上のnormal field K、というところまでは何とか理解できた。そこから進まない。P上のautomorphismは、写像の合成を演算として群であるというのはわかったが、その後が続かない。
なぜc∈Pのとき、cのautomorphism:Sによる写像はcに等しいのだろうか。
if c∈P,then S(c)=c,where S:K→K、K=P(α1、・・・、αn)、KはPの拡大体。αは体P上のf(x)の根。
またもや、「自明である」という難問にぶつかった。数学で何が難しいかと言うと、「以下のことは自明である」と著者が書いた内容で、私はいつもこの「自明=trivial」で引っかかって前に進めなくなる。「どこかの定義の意味を理解していないからこうなるのだ」ということは分かっているがそれがどこなのかがわかるまでに時間がかかる。
1日に1ページ進むか進まないか、3ページ進んでは数ページ戻ってもう一度言葉の定義を読み返している。たった100ページぐらいと思ったが、これは数カ月かかりそうだ。
7月31日記
定義の文章の読み間違いで理解できていなかった部分が理解できた。
automorphism of the field K over the field P(体P上の、体Kの自己同型写像)の定義は次のとおりとなっていた。
体P上のnormal extensionである体Kの自己同型写像(K→K)であって、
体Pの要素を不変に保つ写像
つまり、if c∈P,then S(c)=c,where S:K→K、K=P(α1、・・・、αn)というのは定義が分かれば自明である。考えてもわからなかったのも無理はない。たったこれだけのことに半月以上かかった。ああ!
§ 3 Galois Theory 2014/7/16
やっと第1章第2章の「基礎知識編」が終わって、第3章「ガロア理論」というところまできた。本文107ページのうち、33ページまで読み終わった。ただここで、何となく嫌な予感がした。このまま読み続けると、どこかあと数十ページ行ったところで何が何だかさっぱり分からなくなるような気がしてきた。
やはりこれはまずい、ページを進めることが目的で読み始めたのではない、何とか理解しようと考えたのだから、この際、第1ページからもう一度読みなおそうと考えた。そして今日までに3日かけて1~20ページ分を再読した。一回目と違って、理解が早いし、知識が確実になってきた。定義がはっきり覚えられた。前回読んだ時のノートの誤記、誤解釈に気付いた。最初はある命題の証明が出てくると、その証明の論理を追うのに精いっぱいで、何のためその命題が必要なのか、という点に思いが及ばず、証明を理解した後の文章の内容理解に苦しんだが、今回はきっちり考えたら理解できるはずという証明はあらすじを理解し、言葉の正確な定義、証明された定理の内容、そしてそれらを貫く論理の流れを重視した。そうするとかなり前回より話がすっきりと腑に落ちるような気がしてきた。
相当集中しないと理解できない本だから、1日2時間集中できるとして、約1~2ページ。1週間に4日程度が限界だから、4~8ページ/週。残り80ページとして10~20週。なんとか寒くなるまでには終わりたいものだ。
こういう「ノルマ」計算をしていると、受験勉強をやっていた半世紀以上前の夏休みを思い出した。当時は分厚い参考書が科目別に何冊もあり、日数×1日の勉強可能時間合計を科目別に割り振り、その時間で参考書1冊を仕上げるには1時間で何ページ進まないといけない、というノルマ計算をして、実行したものだった。その点、今は趣味でやっているのだから、「納期は存在しない」、楽しめば良いというのは幸せな限りだ。
2014/08/05 Galois群の定義
少しずつわかってきた。
Galois群とは(以下証明省略)
(1)用語の定義
・「基本体(fundamental field)」P
・その「normalな拡大体K」(Normal extension of P)
Kはextension of Pだから、K=P(θ)
normalの定義によりKは有限、かつ、if α∈K then” any element conjugate
to α”∈K
またKは decomposition field of f(x) over P でもある(別途証明あり)
・automorphism S : K→K(Kの自己同型写像S)はhomomorphism S of K onto itselfだから、次の性質を持つ
α、β∈Kならば、(α+β)^S=α^S+β^S 、 (αβ)^S=α^Sβ^S 、 (α^S)^(- S)=α
(べき記号「^」は写像の操作を作用させることを示す。α^Sとはαに写像Sを作用させること)
・automorphism S of K over P(体P上の拡大体Kの自己同型写像S)とは、
if c∈P then c^s=c(つまりKに含まれるPの元はSの作用では不変)
このとき、automorphism S of K over Pの集合は、写像の積の演算(下記)により、群となる(別途証明)。
α^(ST)=(α^S)^T、α^((ST)U)=α^(S(TU))、α^E=α、SS-1=S-1S=E
(2) 「Galois群」の定義
このautomorphism S of K over Pの群を「Galois群」という。
それにしても骨があるテキストブックだ。1日2時間かけてやっと3ページぐらい進むが、翌日その最後の2ページの復習から始めないと進まないので、結局1日1ページのペースになっている。
ゲーデルの次はさて何をやろうか、と思案していたが、思いきって、ガロアの群論にチャレンジしてみようと考えた。なぜ5次方程式には解の公式が存在しないのか、どうして「存在しない」と証明できるのか、どうしても理論的に理解したくなった。
1次方程式 ax+b=0 (a≠0)は、x=-b/a、これは中学数学。
2次方程式 ax^2+bx+c=0 (a≠0)は、x={-b±√(b^2-4ac)}/2a 、これも「平方完成」という四則演算とべき計算で簡単に導ける。
3次方程式のカルダノの公式、それに基づく4次方程式の解の公式も、複雑ではあり、計算は厄介だが、論理的にはさほど難しくはない。
そして、5次以上の方程式には解の公式がない。
しかし、ガウスが証明した「代数学の基本定理」によれば、「n次方程式には複素数体の中にn個の解が存在する」、という。
最初は戸惑った。「解の公式は存在しない」、しかし「解は存在する」とはどういうことか。詳しく見ると、「方程式の係数を使って解を示す式は存在しない」とある。
面白そうではないか。よしチャレンジしてみようと考えた。この分野の数学を「群論」と言うらしい。ガロアはこの群論という数学を創設した天才で、現代数学の中で最も抽象的とされている代数学Algebraの基礎を築いたらしい。21歳で決闘に敗れて死んだ、とある。
どうせやるなら、「数学読み物」ではつまらない。教科書を探した。そして次の本をAmazonで見つけた。
Foundations of Galois Theory M.M.Postinikov Translated by Ann Swinfen Dover Publiations ,inc 1st published in 1960
英語の本を選んだのは、外国から輸入された学問は日本語の専門用語は時に「おどろおどろしい」が、英語の場合普通の日常用語を使っているから比較的とっつきやすいこと、それに英語の方が日本語より論理的に明確に書かれているから。例えば、「群論」より、「Group Theory」の方が易しく感じるし、また、「~は・・・であり、~~だ」というような日本語は時に理解に苦しむが、その点英語の方が前提として述べているのか、論理の流れで必然的にそうなる、と述べているのかがはっきりしている。
ということで、まず第1ページを開いた。
the Galois groupの概念がつかめない 2014/7/8
体P上のnormal field K、というところまでは何とか理解できた。そこから進まない。P上のautomorphismは、写像の合成を演算として群であるというのはわかったが、その後が続かない。
なぜc∈Pのとき、cのautomorphism:Sによる写像はcに等しいのだろうか。
if c∈P,then S(c)=c,where S:K→K、K=P(α1、・・・、αn)、KはPの拡大体。αは体P上のf(x)の根。
またもや、「自明である」という難問にぶつかった。数学で何が難しいかと言うと、「以下のことは自明である」と著者が書いた内容で、私はいつもこの「自明=trivial」で引っかかって前に進めなくなる。「どこかの定義の意味を理解していないからこうなるのだ」ということは分かっているがそれがどこなのかがわかるまでに時間がかかる。
1日に1ページ進むか進まないか、3ページ進んでは数ページ戻ってもう一度言葉の定義を読み返している。たった100ページぐらいと思ったが、これは数カ月かかりそうだ。
7月31日記
定義の文章の読み間違いで理解できていなかった部分が理解できた。
automorphism of the field K over the field P(体P上の、体Kの自己同型写像)の定義は次のとおりとなっていた。
体P上のnormal extensionである体Kの自己同型写像(K→K)であって、
体Pの要素を不変に保つ写像
つまり、if c∈P,then S(c)=c,where S:K→K、K=P(α1、・・・、αn)というのは定義が分かれば自明である。考えてもわからなかったのも無理はない。たったこれだけのことに半月以上かかった。ああ!
§ 3 Galois Theory 2014/7/16
やっと第1章第2章の「基礎知識編」が終わって、第3章「ガロア理論」というところまできた。本文107ページのうち、33ページまで読み終わった。ただここで、何となく嫌な予感がした。このまま読み続けると、どこかあと数十ページ行ったところで何が何だかさっぱり分からなくなるような気がしてきた。
やはりこれはまずい、ページを進めることが目的で読み始めたのではない、何とか理解しようと考えたのだから、この際、第1ページからもう一度読みなおそうと考えた。そして今日までに3日かけて1~20ページ分を再読した。一回目と違って、理解が早いし、知識が確実になってきた。定義がはっきり覚えられた。前回読んだ時のノートの誤記、誤解釈に気付いた。最初はある命題の証明が出てくると、その証明の論理を追うのに精いっぱいで、何のためその命題が必要なのか、という点に思いが及ばず、証明を理解した後の文章の内容理解に苦しんだが、今回はきっちり考えたら理解できるはずという証明はあらすじを理解し、言葉の正確な定義、証明された定理の内容、そしてそれらを貫く論理の流れを重視した。そうするとかなり前回より話がすっきりと腑に落ちるような気がしてきた。
相当集中しないと理解できない本だから、1日2時間集中できるとして、約1~2ページ。1週間に4日程度が限界だから、4~8ページ/週。残り80ページとして10~20週。なんとか寒くなるまでには終わりたいものだ。
こういう「ノルマ」計算をしていると、受験勉強をやっていた半世紀以上前の夏休みを思い出した。当時は分厚い参考書が科目別に何冊もあり、日数×1日の勉強可能時間合計を科目別に割り振り、その時間で参考書1冊を仕上げるには1時間で何ページ進まないといけない、というノルマ計算をして、実行したものだった。その点、今は趣味でやっているのだから、「納期は存在しない」、楽しめば良いというのは幸せな限りだ。
2014/08/05 Galois群の定義
少しずつわかってきた。
Galois群とは(以下証明省略)
(1)用語の定義
・「基本体(fundamental field)」P
・その「normalな拡大体K」(Normal extension of P)
Kはextension of Pだから、K=P(θ)
normalの定義によりKは有限、かつ、if α∈K then” any element conjugate
to α”∈K
またKは decomposition field of f(x) over P でもある(別途証明あり)
・automorphism S : K→K(Kの自己同型写像S)はhomomorphism S of K onto itselfだから、次の性質を持つ
α、β∈Kならば、(α+β)^S=α^S+β^S 、 (αβ)^S=α^Sβ^S 、 (α^S)^(- S)=α
(べき記号「^」は写像の操作を作用させることを示す。α^Sとはαに写像Sを作用させること)
・automorphism S of K over P(体P上の拡大体Kの自己同型写像S)とは、
if c∈P then c^s=c(つまりKに含まれるPの元はSの作用では不変)
このとき、automorphism S of K over Pの集合は、写像の積の演算(下記)により、群となる(別途証明)。
α^(ST)=(α^S)^T、α^((ST)U)=α^(S(TU))、α^E=α、SS-1=S-1S=E
(2) 「Galois群」の定義
このautomorphism S of K over Pの群を「Galois群」という。
それにしても骨があるテキストブックだ。1日2時間かけてやっと3ページぐらい進むが、翌日その最後の2ページの復習から始めないと進まないので、結局1日1ページのペースになっている。