なみもよう

詩やら短歌やらをかきます

日常の飽和

2015-02-28 23:09:34 | 
吐き気が飲みこんだ
明日を消して困った
歩いた歴史を吐いた
過去を解雇してやった
明日は今日を嗤った
吐き気で飲みこんだ
腹が膨れたようだ
様式美を恐れては泣いた
様式美を恐れては泣いた
でも好奇心に殺された
猫の死骸を笑うんだ
明後日は戦争だ
明後日は戦争だ

楽園の樹の下で

2015-02-16 14:34:01 | 小説
水の流れる音で目を覚ますと、木漏れ日が優しく差し込んできた。青々とした瑞々しい葉が揺れている。

どうやら夢を見ていたようで、先ほどまで見ていた情景からの急な転換に頭が追いつかない。どんな夢かは思い出せないが、眦がかすかに濡れていたので、痛みや悲しみを伴うものだったのかもしれない。

体を起こすと、自分に影を差していた樹は、とても大きなものだったことが分かった。私が寝転んでも、足先まで影が下りているし、あと二人は余裕で日陰を堪能できそうな広さなのだ。

「おかえりなさい、ユグドラシルの子」

声が響いた。

「哀しい夢でしたね」

「分かるの?」

「貴方の母ですから」

風が頬を撫でた。何故かも分からないが、ああ、還ってきたのだ、と、そう思った。

「ユグドラシルの子よ、今はおやすみなさい。いずれ迎えが来ますよ」

「お迎え?」

「そうです。貴方を愛し、貴方に愛される者。新しきユグドの父なる者です」

目眩と眠気が襲ってくる。でも、それは好都合だと思った。哀しい夢を、思い出してしまいそうだったから。

「だから、おやすみなさい。やさしい夢を見させてあげましょう」

ありがとう。それは言葉になったかは分からないが、ひとつ思い出した。

私を迎えに来る、男の名前を。

死に装束でワルツを

2015-02-10 22:47:20 | 小説
「奥様が庭で踊ってらっしゃいます」

 小作人が青ざめた顔で言うので、妻の好みにさせた美しい庭に出た。妻はワルツが一等好きで、よくこの庭で私の手を引いたことを思い出した。

 ふわり、と、白が踊っていた。最期に妻に着せた、西洋のドレスだった。

「お前、」

 震える声で呼ぶと、白い影が振り返り、微笑んだ。あなた、と、呼ぶ声が聞こえた気がした。

 白い手が、こちらに差し伸べられた。


 泣きながら、一人で踊った。
 妻が愛した、ワルツを。