私が桑つみから帰って時間をみたら三時半だった。六時頃になったら夕飯たきをしなければならない。まわすに計って*1、井戸に行って、釜をみがいた。すぐに光芳が帰ってきて、またすぐに遊びに行ってしまった。私も「遊びにいきたいなあ」と思った。それだけど、お母さんに言われた通りにしなければならない。釜のまわりはきれいだったのでみがくのは疲れなかった。そこに利子ちゃんが遊びに来たのだけど、私は、「夕飯たきするのだから行かない」と言った。そしたら利子ちゃんはつまらなさそうに家に帰っていった。私はその時、「利子ちゃんはいいなあ」と思った。そのうちにとぎ*2終わったのでほっとした。時計をみたら六時二〇分だった。私は急いでかまどに釜をかけた。くずぎ*3に火をつけて、どんどんもし始めた。くずぎは一度にぼうっともしつかった*4。それですぐに消えてしまう。そのうちに光芳と雅次が帰ってきて、光芳はお風呂に雅次は牛に餌をくれた。
もしているうちに釜がにえたって、ふたのわきから湯気がぶくぶくと出てきたので、すぐにふたを取って少しもし火*5をひいた。
そこにお母さんが帰ってきたから、「かあちゃん、おしる*6をにいるの*7。」と言ったら、「にいな。」と言ったので鍋を洗ってかまどにつっかけた。そしてすぐに煮えてしまった。おばあさんが来て、「かずこ、ごはんは煮えたの。」といったので、私は、「おばあさん、煮えたよう。」と大きな声で言った。そこへ光芳が来て、「ねえちゃん、ごはんのおかず作ったの。」と言ったから、「まあだよ。」といったら光芳が、「早く作れよう*8。」と言ったのですぐに作った。ようやく終わったので、ほっとして外を見たらもう暗くなっていた。そして、道に出たらおじいさんと、お父さんが向こうから帰ってきた。お父さんが、「かずこ、夕飯はできたの。」と言ったので、「とっくにできているよう。」と言った。家の中に入ったら光芳が、「ねえちゃん湯がわいたよ。」と言ったので、私はいっとう先*9に、一人で入りました。はいったあとは疲れがぬけたような気がしました。その後、雅次と光芳が入りました。
家の人がみんなそろって夕飯を食べる時、おじいちゃんが、「かずこの煮いた*10ごはんはおいしいなあ。」と言った。
みんながそろって、「かずこのしたのはとてもうまい。」といった。私はとても嬉しかった。それで心の中で、私はこんどはまっと*11うまくしたいと思いました。
*1 まわすに計って:ますの米の量を計って
*2 とぎ:米を洗うこと
*3 くずぎ:松葉等の落葉
*4 もしつかった:燃えついた
*5 もし火:燃やしている火
*6 おしる:おつけ
*7 にいるの:にるの
*8 作れよう:作って
*9 いっとう先:一番先
*10 煮いた:煮た
*11 まっと:もっと
大塚基氏編「ある夏休みのことです」