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猿山政治論

巷に溢れる情報から妖しく光る原石をピックアップ!ステロタイプ的政治論に囚われぬ独自の世界観で「きれいごと」抜きに鋭く分析

最終章:日本は敵を間違えると滅びます~日本は核武装すべきか(13)~

2009-09-02 11:29:01 | 日本核武装
まず最初に申し上げておきたいことですが、日本は国土が狭いですので、メガトン級の水爆を10発20発も食らえば、住むところがなくなってしまいます。

核攻撃をする側にすると、これほど効率的に数千万人を殺戮できる国は日本しかないでしょう。

事そこに到ったとすれば、お互いが無駄に血を流さぬよう事前に覇権国家間での話し合いはついていますので、どこも助けてはくれません。

冷戦時代ですら米ソはイデオロギーなどという「建前」は二の次で、相互の利害得失をベースに意思決定しておりましたが、現在の米国・中国・ロシアは100%「損か得か」で動いていますので、日本など一属国のために他の覇権国家と直接事を構えることなど金輪際ありません。

ですから米国・中国・ロシアなどの覇権国家を核武装の仮想敵国にするなどあり得ない話で、そんなチキンゲームともいえない自殺行為をまじめに選択する論者がいるとすれば(いてますが・・・)、いいお医者さんをご紹介しますので早期の入院治療をお勧めします。

アホな洗脳芸能人コメンテータではなく、情報に精通しておられる頭脳明晰な専門家が、テレビなんかで中国を核武装の仮想敵国とするような勇ましい論調をとっている場合、人気取りでないかぎり、反日・売日的な何らか暗い政治的意図を隠していることは絶対に間違いありません。気をつけましょう。

考えても御覧なさい。

じいさんばあさんから小学生に至るまで「日本は絶対勝つ」「天皇陛下のためなら死んでも本望だ」と、脳味噌の隅から隅まで洗脳されつくされて「サイコ民族化」し、万歳突撃を強制されてすらそれに従うという兵士として極めて最適化されていた当時の日本人が1億火の玉となってすら勝てなかったのですから(これだけの大国の国民がこぞって洗脳されつくされた例は歴史上当時の日本だけでしょう)。

今みたいに失うものを持ってしまった臆病で身勝手な日本人など戦えるはずもないのです。

もし、米国・中国・ロシアの3覇権国家に一発でも核を使用されることが確定的になり、外交的に対処できない状態になったら、あっさり降伏しましょう。

そして新しいご主人様の下で、民族一致団結して、面従腹背したたかに生きてまいりましょう。これが日本人に唯一残された選択肢です。

これまでも宗主国の支配下で、私を含め日本人の多くは植民地にされていることを鮮明に意識することなく、長らく脳天気に生きてきたのですから、それを思えば我慢できるでしょう。

もし、ここで敵覇権国家の挑発に乗れば、何の発言力・抵抗力も残さないまま、新たな宗主国の絶対支配下に置かれることになります。

そこではある意味紳士的だった第二次世界大戦後のGHQ支配などとは比べようもない蛮行が行われるかもしれません。また日本が今度こそ立ち直れないようにがんじがらめに締め付けてくることは疑いありません。

第二次世界大戦に際しても、もし日本が南満州鉄道とその周辺の利権の範囲で、堅実に植民地支配を行っていれば、米英に付け込まれるスキはなかったかも知れません。

ところが、少し調子に乗って傀儡満州帝国創設まで突っ走ってしまったために、大義名分を得た米英は、待ってましたとばかりに日本を孤立化させ、最期は戦略物資の供給を禁止することで、巧妙に日本から喧嘩を仕掛けるように仕向けて行ったわけです。

核武装は、まさに現在の「満州」ともいえる存在です。確かに北朝鮮のなりふり構わぬ汚いやり口には、一発かましてやりたいところですが、覇権国家の日本に対する軍事的攻撃の口実として悪用されては元も子もないということを忘れてはなりません。

覇権国家にとって日本は金の卵を産む大切なニワトリであり、覇権国家間で取引される高価な商品なのですから、北朝鮮に勝手に核攻撃などさせて宝物に傷をつけさせるはずはないのです(北朝鮮もこのことはよく知ってます)。

万が一核ミサイルを一発撃ってきたとしても、パトリオットで打ち落とせるかもしれません。また原爆レベルの破壊力では、日本のどこに打ち込まれても、それだけで日本が滅びることはないのです。

誤解を恐れずにいえば、100万人殺されても、日本は大丈夫です。

さらに、ここまでされれば、日本が核武装するのに反対する声もトーンダウンせざるを得ないでしょうから、それを踏み台に一気に核武装することも可能な外交的環境が整うかもしれません。

そうした上で、もし復讐するなら北朝鮮に1000発核ミサイルを撃ち込むことも原理的には可能ですし、逆にこれを猶予することで、対覇権国家外交を有利に進めるカードとして上手に利用してもよいのです。

北朝鮮のような鉄砲玉国家に勝っても、何にも持ってないんですから・・・。失うものがない者を相手にするほど馬鹿らしい話はないですので、ともあれ外交的チャンスが巡ってくるまでは、しっかりした準備をしながら、犠牲を恐れず、時を待つ忍耐力が必要です。

本当の勇気というのは、こういう局面でこそ試されるのです。

そして、まだしばらく続くであろう今後の現宗主国支配下、また新たな宗主国支配下では、しっかり確保した経済力・優秀な外交力を背景に、これまでの自国民を食い物にしながらの服従一辺倒のポチではなく、したたかなポチ・保健所送りにならない程度に物言うポチ(ワンワンとしか言えないのでは寂しいですが)にならなくてはいけません。

最後に、これまで述べた要点を箇条書きに要約して、このシリーズを終わりといたします。

①米中ロを絶対に核武装の仮想敵国としてはならない。

②仮想敵国は北朝鮮に限定する。

③核武装は米中ロ三国の暗黙の了解がない限り実施してはならない。
→明示的にOKというはずはありませんので、米中ロ三国が黙っておらざるを得ない状況を外交的魔術により創出せざるを得ません。

④核実験一歩手前までの研究は、機密が保持できることが条件ではあるが進めてもよい。
→実質はばれていても対外的には「そんなことはしていません」とシラを切れるだけの余地が残っているうちはOK。シラを切れなくなり、外交的にも手当てできなくなればスウェーデンのように「開発を放棄しました。ごめんなさい。」と言ってそこで休止し、次のチャンスを待てばよい。

⑤核兵器の搭載可能な運搬手段(巡航ミサイル)は、別の理由を適当につけて開発する。同時に非大気依存推進潜水艦「そうりゅう」ではまだ頼りないので、できればミサイル水中発射能力のある原子力潜水艦を開発しておく。
→「そうりゅう」の採用したスターリング機関は、石油消費が減ることを恐れた国際石油資本に葬られ、永らく日の目を見なかった「幻」の推進機関です。

⑥国土を巻き込んだ戦時下においては自爆装置と化すことになる原発の移転・地下化・順次廃止(別方式に転換)を進める。

以上

筆:猿山太郎

ほんとにいいの?核攻撃に備えたインフラの整備~日本は核武装すべきか(12)~

2009-08-30 10:21:05 | 日本核武装
(6)核攻撃に備えたインフラの整備

ここでは、これまでの流れどおり、北朝鮮を仮想敵国として話を進めたいと思います。

北朝鮮は、日本全土を射程に置いたノドン・テポドンといった中長距離弾道ミサイルを保持しており、早晩、核弾頭の小型化にも成功することになるでしょうから、パトリオットで撃墜できない限り、被害は避けられません。

先制核攻撃が困難な日本の国際政治情勢下で、我々に可能なことは、できるだけ被害を小さくし、回復を早めるインフラ整備を進めることであり、この点核武装賛成・反対を問わず賛成していただけるのではないでしょうか。

では、どうすればよいのか?

「原発の移動と地下化」を中心に思いつくまま列挙してみました。

①原発の移動と地下化

台風の進路を見れば明らかなように、日本では概ね西から東に向かって大気が移動しますので、中日本・西日本に原子力発電所を設置するというのは、極めて危険です。

チェルノブイリ原発事故の被災面積を地図で指し示した画像・映像をご覧になった方もいらっしゃるでしょうが、広大な旧ソ連であったからこそ、かろうじて国として存続できているのであって、日本であんなことになれば、事故が発生した原発の東側は、ほとんど人が住めなくなってしまうわけです。

何を考えてこんな安全意識のかけらもない原子力政策を採用したのかについて、その理由を私は存じ上げませんが、現在、原子力発電所は、全国各地ばらばらに、日本原電及び各電力会社が各々所有しています。

日本中に自爆装置としての原発を配置することを条件に、原子力研究が宗主国より許されたといった裏の経緯があったのではないかと疑いたくなるほどに、危険な原子炉配置となっているわけです。

もしこれから、仮想敵国からの核攻撃を想定した対策を採ろうというのであれば、次のような措置を早急にとるべきでしょう。

・原子力発電所は核兵器製造用を除き順次廃止する。

・技術的に可能であれば送電効率は落ちても原子力発電所を小笠原諸島等太平洋上の離島に設置する。または茨城県・福島県・岩手県に集中的に設置する。

・原子炉本体は、地下の強固な岩盤内に設置し、攻撃で直接破壊されにくくし、破壊されても速やかに封じ込めることができるようにする。

・原子力発電所を中心とした防空体制の整備と、特殊部隊による侵攻対策として自衛隊部隊の常駐を行う。特に若狭湾、福島県浜通り、浜岡原発には、連隊規模で原子力発電所防衛に特化した部隊を編成し配置する。

・代替発電方式(できれば風力発電のように分散化可能な発電設備の方が強い耐攻撃性を持ちます)の開発・設置をスピードアップする。

②主要建築物への核シェルター設置義務化

あとで蒸し焼きになる可能性は十分ありますが、主要建築物には、近くにいた幸運な方々だけでもとりあえず第一撃を避けることができるような設計を組み入れる必要があります。

③大都市における地下鉄網の整備

大都市における地下鉄網の整備は、第二次大戦前から進められてきたことで、大戦中の空襲でも基本的なインフラは生き残った実績があるように、核攻撃後の被爆地救援活動の動脈としても有効なインフラです。

もちろん平時も社会インフラとして重要な役割を果たすものですが、都営大江戸線に見られるような治安面・軍事面からの意図も含んでのことである点は、認識しておくべきです。

④警報システムの整備

現在、地震警報システムは、実用的な水準に達しつつあります。この地震警報インフラを利用して、北朝鮮の弾道ミサイル発射状況に関する偵察衛星・早期警戒機からの情報を、政治的意図を排除した純防災的観点から、国民に速やかに伝達するシステムも準備すべきでしょう。

他にも、交通網、通信網、水・食料、被爆地救援活動等様々な対策が必要で、相応のコストが必要になってきますが、これまで蓄積のある地震対策インフラを上手に利用して無駄のない対策をとるべきでしょう(私などが知らないだけで、既にそれを意図して整備が進められているのかもしれません)。

国際政治情勢を無視して、北朝鮮程度の国力の国を相手にするだけを考えてよいのであれば、さっさと核武装し、早いうちに先制核攻撃で潰せますので、こうした手の込んだインフラ作りなど考える必要もなく、コストも桁違いに小さくできるわけですが・・・。

ともあれ、専守防衛とはお金と手間がかかるものです。こうした経済的余力が現在の日本にあるのかどうかも核武装を判断するための材料となってくるわけです。

筆:猿山太郎

中国に開戦の口実を与えるな!!~日本は核武装すべきか(11)~

2009-08-28 17:07:28 | 日本核武装
(5)核兵器運用上の要件

前回までに述べましたとおり、巡航ミサイルまたはハープーンあたりが、運搬手段として、比較的実現可能性の高いものになってきそうですので、それを前提に以下考察してみたいと思います。

①仮想敵国を北朝鮮のみに限定する。

 日本が核武装する大義名分があるとすれば「核武装したテロ国家(日本はそう言い続けなければなりません)北朝鮮が日本を仮想敵国としている」ことに尽きますので、その外交的スタンスに完全に一致した核兵器運用を行うことが最も望ましいわけです。

また、現在の世界で、日本を核攻撃する可能性がある国は北朝鮮しかないわけですから、仮想敵国を北朝鮮のみに限定することで、必要十分な対応といえましょう。

ただ、これだけ気をつかっても、諸外国から経済的に手痛い制裁を受けることは間違いないでしょうし、核兵器開発に着手したタイミングを見計らって、米国の了解をとりつけた中国が軍事的攻勢をかけてくる可能性も捨てきれません。
 
②報復攻撃に特化する。

北朝鮮が核ミサイル発射の準備を進めている場合でも、それに応じた報復準備を進めることまではできますが、先制核攻撃は避けなければなりません。

もし、本気で北朝鮮が核ミサイルを発射するつもりであったとしても、首尾よくそれを発射前に撃破してしまうと、北朝鮮は「発射するつもりはなかった。日本に核攻撃を仕掛けられた」と主張し、米国・中国はそうとわかっていながら日本を非難し制裁を加えてくるでしょう。

従って、先制攻撃するとすれば、偵察衛星等を利用した攻撃準備の証拠をしっかり掴んだ上での、通常兵器による先制防御くらいですが、それでも日本が悪者になる可能性は高いでしょう。

日本には、一応パトリオットがありますので、もしかすればうまく打ち落とせるかもしれませんし、一発は食らわないと仕方ないでしょう。 

圧倒的な軍事力を持つあの米国ですら、自国の非にならないよう、開戦の口実作りにはいつも腐心しているわけですから・・・。

専守防衛とは、これほどの痛みを伴うものであることを、義務教育を通じてぜひ国民全員に行き渡らせる必要がありますね。

正論から言うと、その上で改めて専守防衛を説かなければなりませんが、日本国民は洗脳によりモノを知らされていないだけで、性根はそこまで美しい理想主義者とも思えませんので、きっと先制攻撃に世論は傾くような気はしますが。
 
あと、ここで懸念されるのは、米国・中国と北朝鮮が裏で取引し、日本を中国に叩かせる口実作りに、北朝鮮と日本の間で戦闘行為を起こさせようと画策した場合です。

ご存知のとおり、米国は、200年にわたるインディアン虐殺もさることながら、米西戦争(メイン号事件)、第一次世界大戦(ルシタニア号事件)、第二次世界大戦(真珠湾攻撃)、第二次イラク戦争(9.11)と、常に敵国に原因があるかのように偽装して、開戦の口実を作り出す奸智に長けた国ですので、日本を中国に売り飛ばす際に、こうした手段を取る可能性は高いと思います。

そうした懸念がある場合は、通常兵器による先制防御すら避けなければなりません。

結論から言えば、パトリオットで守りきれず北朝鮮の第一撃で日本の大都市が損害を受けたとしても、中国と全面対決というよりましですので、一度被害を受けた後、おもむろに報復するしかないでしょう。

③中国・ロシアに直接脅威を与えることはしない。

 
核兵器を装備した以上、潜在的脅威がゼロになることはあり得ないのですが、せめて運用上、そうした脅威が事実上存在しないことを、明示的に証明する必要があります。

具体的には次のような手段が考えられます。

・保持する核弾頭・運搬手段の数・種類・スペックを公開する。

・航空機を利用した巡航ミサイルを使用する場合は、配備した基地を明示した上で、運搬用の航空機及び巡航ミサイルのスペックを、北朝鮮を攻撃するのに必要な範囲にダウングレードすることになるでしょう。
 潜水艦と異なり、常時核ミサイルを積んだ戦闘爆撃機を遊弋させておくというのは、事故のリスクが高く、開戦の口実作りの謀略に巻き込まれる可能性があるため採用できません。

・潜水艦を利用する場合は、数隻の潜水艦を北朝鮮近海で常時遊弋させておくことになりますが、ロシア・中国を攻撃可能な海域に入った場合には、両国がそれを検知できるシステムをこちらから提供することも考えられますが、北朝鮮にそれを利用されたり、将来の国際情勢の変化によりロシア・中国と対決せざるを得なくなった場合に、当該システムを無効化するにしても、相手に逆手をとられることを考えると弱腰に過ぎるような気がします。
また、いくら前近代的な北朝鮮潜水艦相手でも、日本の潜水艦の正確な位置を知られてしまうと極めて危険ですので。
この点、日本がそこまで気を使わなくても、ロシア・中国なら、人工衛星等を利用して勝手に位置を検知・追跡しているはずですので、外交的に捌き切るように努力すべきでしょう。

④米国をはじめ外国の軍事的支援を一切排除する。

いざというとき裏切られる可能性のある米国には、一切頼ることを避けるべきです。

偵察衛星・早期警戒機を自前で運用して、独自に北朝鮮の動きをつかんで、適切に対処するシステムを作り上げておく必要があります。

さらにいうと、米国を巻き込んだ場合、中国に参戦の口実を与えることになってしまいます。

ましてや米・中が裏でつるんでいた場合はなおさらです。とにかく米国は、自国が被害を受けないところ(極東や中東)で大きな戦争を起こして、しっかり儲けないと国が立ち行かない軍産複合体帝国なのですから・・・。

続きは次回に

筆:猿山太郎

巡航ミサイル?ハープーン?でも核弾頭の小型化は必須~日本は核武装すべきか(10)~

2009-08-27 11:26:18 | 日本核武装
(5)核運搬技術上の要件

 北朝鮮をターゲットとした場合には、一般的に運搬手段としては、次のようなものが挙げられます。

①固定サイロ型中距離弾道ミサイル
②地上移動型中距離弾道ミサイル
③潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)
④巡航ミサイル(空中発射・水上艦発射・潜水艦発射・地上発射)
③ステルス爆撃機(巡航ミサイルとペア)

 この中で報復手段として最も効果的なのは、潜水艦発射型弾道ミサイルですが、次のような理由から開発に時間がかかりすぎ、製造開始から実戦配備までを短期間で行うことが要求される日本の場合、現実的ではありません。

①SLBM発射潜水艦については、全く技術的基盤がなく、原子力推進・水中発射型となれば、日本の技術力をもってしても1年2年で独自開発できる代物ではありません(これが最大の理由)。

②SLBMについても、潜水艦に格納できる特殊なサイズに収める必要があり、巡航ミサイル(直径50cm程度)ほどではなくても、一段のコンパクト化が求められます。

③SLBMは、格納スペース及び発射作業効率の観点から固体燃料推進型のミサイルにしなければなりません。
 ただ固体燃料は液体燃料と異なりバルブによる流量調整ができず、原則として燃料の塊がお尻の方から順番に燃えていくだけですので、精密な姿勢制御及び燃焼制御の技術的ハードルが高く、最新型のHⅡBロケットですら単純に出力を上げるための補助ブースターにしか使用されていません。
 SLBMはこれを主エンジンとして使用しなければならないわけですから、なお一層の制御技術の上積みが必要です。
 この点「もう日本では固体燃料推進関連技術は確立している」という論者の皆さんの主張は必ずしも正確ではありません。

また、固定サイロ型弾道ミサイル・地上移動型弾道ミサイルについては、固体燃料推進エンジンの制御技術を確立できれば、慣性誘導装置他の技術は日本の技術力なら問題はないと思われます。

ただ、固定サイロ型は、敵の第一撃の目標となりやすく、地上移動型にしても日本本土の被害を都市部以外にも拡大する要因になりかねません。

さらに、ステルス爆撃機については、わが国は保持しておらず、またF22ラプター同様米国は売却を拒んでくるものと思います。

残る巡航ミサイルはジェット推進エンジンですので、日本にも技術的蓄積がありますから比較的早く開発できそうですし、パーツ毎に分けて表向き民生品の開発としてプロジェクト途中までは開発を進めることもできます。

また、小振りですので生産ラインも、既存の自動車等の生産ラインの設計・施工技術があれば早期に立ち上げることができます。

ただ、弾頭の小型化が最も強く要求される運搬手段となります。

常識的には、以上の範囲なのですが、防衛省OB太田述正アングロサクソン文明と軍事研究ブログにおいて、現おやしお型(通常型)潜水艦に搭載されているハープーン対艦ミサイルを利用する案が紹介されていました。

射程は120km程度と短いのですが水中発射・慣性誘導と他の面では申し分ありません。

近代的対潜哨戒能力がないに等しい北朝鮮が相手であれば、原潜まで準備する必要はまったくありませんし、射程距離と通常型潜水艦(相手が覇権国家クラスだと1年もぐったままでいられるような原潜でなければ行動を容易に把握されてしまいます)を利用するという面で、他の覇権国家への実体的な脅威も少ないので、対北朝鮮の報復手段としては手ごろな案だと思いました。

ただ、最大の問題は、弾頭の小型化です。ハープーン対艦ミサイルは直径が35cm程度と、巡航ミサイルよりさらに細くできています。

もともと巡航ミサイルは核搭載を前提として設計されており、米国の持つ最新の弾頭小型化技術を前提に精一杯直径を縮めたものです。たとえば巡航ミサイル用核弾頭W84(100kt以上の威力)は、直径30㎝で長さ80㎝ですが、それを直径50cmのミサイルの筺体に収めています。

これを、初心者の日本が、さらに15cm縮めるというのが技術的に可能かどうか・・・。

なお戦術核では、155mm榴弾砲用W48核砲弾や空対空ミサイル核ファルコン用W54弾頭など小型化されたものも開発された実績がありますが、何れも威力は1kt(広島原爆の15分の1)を切っており、戦略目的には不足です。

さらに、核弾頭から照射される放射線防護対策を、直径35cmに収めるという性能最優先の中で、どうやって実現するのでしょうか?

前回と今回の話をまとめますとこんな感じです。

①運搬手段としては、巡航ミサイルか、ハープーンでほぼ決まり(特にハープーンなら搭載機能に絞った技術開発でok)。
②核弾頭の小型化が必須(米国の1970年代レベルの核技術は必要)。
③小型化が十分でなければ、地上発射型のミサイル開発が必要(少々時間がかかります)。
④原料のプルトニウムは確保できそう。

続きは次回に

筆:猿山太郎

核弾頭の小型化には意外と時間がかかるのでは?~日本は核武装すべきか(9)~

2009-08-25 19:04:59 | 日本核武装
(4)核弾頭(爆弾)開発技術上の要件

初めて開発するわけですから、まずは原子爆弾ということになります(水素爆弾は原子爆弾を信管代わりにします)。

また、原子爆弾には、砲身型(ウラン原爆・広島型)、爆縮型(プルトニウム原爆・長崎型)がありますが、民生用技術がそのまま適用できないため独自開発には課題が山積しており、様々な技術分野の専門家を半ば強制徴用した上で相当期間の大プロジェクトを実施する必要があります。

本命とされる爆縮型にまつわる課題に絞ってもざっとこれくらいあります。

①小型・軽量化

広島型・長崎型共に4~5トンの重量(大型人工衛星並)があり、特に長崎型は直径が150cmもありました。

長崎型は爆縮レンズと呼ばれる臨界発生装置が直径130cmを超える球形であったためにこのような大きさになってしまいましたが、Wikipediaによると、現在では30cm程度に小型化されているとのことです。

ちなみに1950年代後半には早くも25cmカノン砲による戦術核砲弾発射実験が行われたくらいで、さらなる小型化が進んでいます(核搭載巡航ミサイルの直径は50cm程度です)。

また形状も、MIRV化された弾道ミサイルの円錐形の弾頭中で水爆起動装置として格納しやすいように、球形から楕円形へと進化しています。

②安全装置

地味なようで非常に大事な問題です。爆縮型は分解保管していない限り異常電流が流れれば当然爆発します。

構造がシンプルな砲身型などは内蔵するTNT火薬が自然発火でもすれば必然的に核爆発して危なすぎるので第二次大戦後は作られることがなかった代物です。

この安全装置に関する技術は一から開発する必要がありそうです。

③完成品保管

すばやく報復核攻撃をするためには、分解保管しているようでは話になりません。

核弾頭内の物質が劣化しないような材質と構造を確保し、北朝鮮の攻撃に即座に報復できる発射体制を常時とり続けなければなりません。

④核実験データ

繊細な技術を要する爆縮レンズの設計・開発・製造には、実地の核実験とコンピュータ上のシミュレーションが欠かせません。

作ると腹をくくれば核実験くらいは平気でしょうが、シミュレーションプログラムには、パラメータとして実地の核実験の観測データの蓄積が必要で、自前では核実験を繰り返さない限り得ることはできません。

フランスが1996年の包括的核実験禁止条約に調印する直前に駆け込みで核実験を強行したのも、観測データを得るためでした。

特に弾道ミサイル用の楕円形の爆縮レンズを開発するには、複雑な爆縮計算が必要で、その計算根拠となるパラメータを確定するため、観測データ収集が不可欠です。

⑤兵器用プルトニウム

日本の場合は、青森県の六ヶ所再処理工場で、非核保有国としては唯一プルトニウムの抽出が可能な設備を保持しています(ただし現在のところまだアクティブ試験中)。

ただ、純粋なプルトニウムの保持は核拡散防止条約で禁止されているため、再処理後、即座に兵器用のプルトニウムとして転用できないようウランとの化合物として保管することになっています。

このように一旦ウランとの化合物にしてしまうと、改めてプルトニウムを取り出すことが難しくなるそうです。

⑥特殊火薬の開発

爆縮レンズに適した爆発力・耐変質性・制御容易性等を兼ね備えた特殊目的の火薬が必要です。

核弾頭ひとつ作るにしても、楽観論者は6ヶ月くらいで大丈夫だろうとおっしゃってますが、私は疑問に思います。

現在とは技術力等条件がまったく違いますが、マンハッタン計画には、約12万人の科学者及び技術者と、当時のお金で約22億ドル(今だと十兆円くらい?)が投入されています。

また、核開発中の覇権国家による軍事的圧力及び経済制裁を、外交的に回避できない場合は、配備までの期間を短縮するために、弾頭そのもの又は製造技術を購入するしかないでしょう。

今の日本人に、ここまでできますか???

続きは次回で

筆:猿山太郎