時戻素

昔の跡,やがてなくなる予定のもの,変化していくもの,自身の旅の跡など・・・

(237) 一人称「先生」

2009年11月27日 05時22分10秒 | Weblog
 学校や塾の先生が使っている独特の一人称に「先生」というものがある。自分の知る限りでは小学校の先生はほぼ全員,中学校でも多数派になると思う。高校や大学ではほとんど聞かなくなった。それ以外の一人称には私,僕,俺などが記憶をたどったところ見受けられた。
 特に意図があって「先生」と言っている先生は少なく,慣例的に「先生」と言っている人が大半であるのではないかと推測している。先生という言葉も人により捉え方は違うだろうが,何か「偉そうな」イメージがある。それを自分で言うと言うことは,自分が先生だと誇示しているのではないかという意味合いで受け取ることもできるように思う。それが原因かは分からないが,自分で自分のことを先生といえない先生もいるそうだ。しかし,普段の授業などでは一人称「先生」を使わない先生が朝礼でのスピーチになると「先生は・・・だと思います。」と言っていたり,塾でアルバイトをしていた知人が教育実習に行った時に「自分で先生といえないタイプだけど,実習中は先生を一人称にしていて,気持ちが悪かった」と言っていたりするのを考えると,先生が自分のことを先生と呼ぶのは,改まった場で私(わたし)とか僕とか俺ではなく,私(わたくし)と呼ぶのと同じで,ちゃんとした場で使える一人称なのかもしれない。年が上になるにつれて使わなくなる点も面白い。昔から年賀状のやり取りをしている先生がいるのだが,以前は「先生は元気です」と書いていたのが,ある時から「私も年をとるはずですね」のように一人称が変化していた。比較的低年齢層に使う一人称なのかもしれない。小・中学生に特に男の先生は「私」はというと堅苦しく聞こえ,「僕」ではくだけていて,少し弱々しいし,「俺」だと高圧的だし,しかも子どもにもあまり使わせたくないと思っているしなどと考えていると低年齢層にあわせる一人称があまりないのもあるかもしれない。

 日本語の一人称の使い分けは,使う方の立場の時は悩まされるところもあるが,人の使い分けなどの基準を考えてみると興味深いことが分かることが結構多い。

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