君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二章五話

2015-04-28 01:30:15 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編二章
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 人類の首都星
惑星メサイア ミュウの星 ノアに近い位置にある
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる
<人物>
ジョミー ノア前副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っていた
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任していたが…
セルジュ 軍事惑星ペセトラの評議会議長代理(現在、軍部で最高位)

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二章五話

  物質転移直後 惑星ノアの辺境・砂漠の遺跡

「ハアッ…何度やっても辛いな…」
「そうですね…なかなか慣れませんね」
 それでも、ヴィーはジョミーに肩を貸したまま、滴る汗を拭いつつ言った。
「ジョミー。やはり彼らは…気絶してしまいましたね…」
 そう言って視線を落とす、床にはベリアルとセドルが倒れていた。
「しかたがない。何も準備をしていなかったのだから…どうしようもない」
 ジョミーはヴィーの肩から手を降ろすと、ベリアルとセドルの手首をとり脈を診た。
「シールドを作ってやったのに。所詮、彼らは人間ですからね。医務室に運んで」
 と、ヴィーが待機していた部下に命じた。
 自動で運ぶストレッチャーが二人を乗せて動き始めた。
「あ、待って。処置が済んだらベリアルに潜りたい、用意をしておいてくれないか」
 ジョミーはベリアルを運ぶミュウに言った。
「わかりました。今、力が安定していない事を忘れないで下さいね」
「ああ、わかった」
 ヴィーの部下はベリアルたちを運んで行った。
「ジョミー。どうして深層に?ここにはあなたの補佐が出来るようなミュウはいませんよ」
「君なら出来るよね。でもいいよ。一人で大丈夫。機械の助けを借りる。それにさっきまで会話していたから、表層にまだある」
「なら、引き出すのは簡単ですね。それにしても、何故彼らは薬なんか使ってきたのでしょうか…あなたの記憶を知りたいなら方法は他にもある」
「どうあっても、僕を籠絡しておきたかったのだろう…」
「籠絡?どうして?」
「僕はトォニィはもちろん、セルジュにも関係しているからね」
「それで、薬を盛るのですか?そんな人間。彼らは、執着するに値しませんよ」
「執着…。そうか、そう見える?」
「ジョミー。エンジェル・クラウンって知っていますか?」
「天使の冠?いや、知らない」
「多分、あなたに使われたのはそれです」
「新薬?」
「はい」
「そうか…」
「ジョミー。セドルの深層には潜らなくていいのですか?」
「彼には直接聞くよ」
 ヴィーは、セドルはジョミーの味方ではなくて、ベリアルに薬を渡したのは彼に違いないと言っているのだった。
「……」
 ジョミーは、一度信用したら曲げない。
 それが執着だと言うのですよ。とヴィーは思った。
「あなたが、信じる人間は一人でいい」
 医務室に向かうジョミーの後ろ姿にヴィーは一人呟いた。

  医務室

 機械に繋がれたベリアルがベッドに寝かされている。
 電気がベリアルの脳を刺激していた。
「アガレス・ベリアル・ジュニア…どこだ…」
 ベリアルの深層に潜るジョミー。
「ここです」
 彼はすぐに見つかった。だが、世界が微妙に揺らいでいた。
「ジョミー・マーキス・シン」
「まさか、あなたの方から声をかけてくるとは思いませんでした」
 ベリアルの上空に浮かんでいたジョミーが彼の横に静かに降りる。
「僕が怖くないのですか?」
「怖くはないな」
「それでは、どうして薬を使ったのです?」
「自白剤か…。あれはセドルが使うようにと言ってきたのものだ。自分では人質の価値は無いだろうと言っていた」
「そうですか…」
「それより、何故ここなんだ」
「ここ?」
 ザーッと言う音がして景色が変わる。
 そこは、三十年前のあの部屋だった。
「…こ…ここは」
 ここは、二人の記憶が交差した場所。
「ジョミー。真実がここにあるのか?」
 彼らがいるのは廊下だった。目の前のドアを開けるとそこにはあの時があるのは明白だった。
「ベリアル。この先に…」
 ジョミーがベリアルの肩を掴む。
 いつのまにか彼は小さな子供になっていた。
「!」
「あなたは誰?ジョミー?」
「そうか、世界が揺らいでいるのは…二人分の記憶で安定していない所為か…」
「ジョミーって誰?あなたがそうなの?」
「ああ、そうだ。ベリアル。君は何故ここに居るんだ?」
「ベリアルお父様?お父様が僕をここへ連れて来たんだ」
「…お父様?」
「お父様は僕に優しくしてくれるんだ」
「…そんな…」
「どうしたの?」
「ああ、大丈夫だよ。君は成人検査はまだなんだろう?」
「成人検査?」
「知らないのか?」
「君はどこの生れなんだ?」
「ニュクス」
「やはりそうか…」
「ジョミー?」
「ベリアル。そのドアを開けて真実を見ておいで。僕は止めないよ。その先には、あの時と同じように君のお父様と僕が居る」
「うん。行ってくる」
 ベリアルはドアを開けた。
「お父様。お呼びですか?」
「私の可愛いベリアル。こっちにおいで」
「この子は誰?」
 ベリアルの父、アガレス・ベリアルはペセトラの将校だった。
 あの頃の僕は、必死になって地球の情報を集めていた。髪を変え、瞳を変え、身体も完全な女になり、僕は夜の街にいた。人類の裏側で生きる。十四歳の少女娼婦。それがその時の僕だった。
 アガレスとの出会いは単なる偶然だった。
 彼の趣味は男でも女でもどっちでも良かった。幼ければ幼い程いい。その彼が法を犯して手に入れたのがアガレス・ベリアル・ジュニア。
 僕はそう気が付いた時にすぐにそこから立ち去れば問題は無かったのかもしれない。
 だが、なかなか捕まえられない軍の将校と接触出来たチャンスを逃したくなかった。
 僕との行為を済ませたばかりのその体で幼いベリアルを弄び始める。
「……」
 ジョミーは「こいつをここで殺していい」と思いながら見つめた。その視線でさえ彼には快感なんだと気付き、吐きそうになった。
「お前のその眼、気持ちいいな」
「アガレス・ベリアル。遊びはもうお仕舞だ。堪能しただろう?今度はもっと深い所で愛し合わないか?」
 魅惑で夢を見させて、情報を得る。僕にとってそう難しい事じゃない。
 簡単な事だったが、目の前で苦しみ始めたアガレスを見てベリアルが僕にしがみついてきた。
「やめてー」
「ベリアル?」
「ジョミー!」
 その瞬間、部屋のドアが開き、僕はベッドから引きずり降ろされた。
「ハーレイ?どうして?」
「兵士が取り囲んでいます。逃げましょう」
 バラバラと沢山の足音が近づいて来る。僕らは別の部屋へと隠れた。窓ガラスを破って何かが投げ込まれる。僕はその煙にむせた。やがて体の動きが鈍くなった。その所為か僕はテレポートが出来なかった。
「あの子を、彼を助けなきゃ」
「ダメです。人類にまかせましょう」
「こっちだ」
 という合図に僕らは窓を割り、ギリギリをすり抜けるフレッチァに飛び乗って逃げた。
 僕にはその後の事はわからなかった。
 僕ら、ミュウはペセトラ空域を後にした。

「ジョミー・マーキス・シン。いや、ソルジャー・シン」
「…ベリアル」
 そこには大人のベリアルがいた。




  続く




※ちょっと短いですね。
後で、追加修正を入れるかもしれません><;



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