ここ数日、育児地獄だった。
四歳の甥、ぽん助と取っ組み合いながらも一歳の姪、プチ子も見なければならない。
特にプチ子はなんでも口に入れようとするので不用意に細かいモノは置いておけない。
みいぼうは旦那が仕事行ってる間、一人でこいつらの面倒を見ながら家事もこなしているのか・・
近所にパチンコ狂いのろくでなしが居る。
以前から金に困ると俺や友人に「親が病気で」だの嘘をついて金を借りようとしてくる。
一見、善人面しているので近所の評判は良かったが流石にここ数年は皆、本性を見抜いたか、一家揃って軽く村八分になって来ている。
昨年の五月頃だったか?
常に異様な形相で、二言目には「ヤミ金の取り立てが厳しい。死にたい。」とか言ってたが無視した。
自分で撒いた種だろ。
その後、ふと不安になり地区の若い衆に奴に金貸してないか聞いてみたら案の定、ほとんどの連中がうっかり貸していた。
またしても「親が病気で」とか泣かせる話をでっち上げてだ。
しかも最初は家まで金を受け取りに来ていたが、二回目以降はパチンコ屋まで持って来てくれとか言ってたそうな。
ざけんな!なんだそれ?
パチンコに使いますと言ってるようなモノだろうが!
おのれぇ~!!
友人一同で野郎を吊し上げ、俺達同年代の金は後で良いから下の者の金だけでも先に返させることにした。
その額は百万近い・・
それから数ヵ月後、野郎も含め友人らと呑んだくれていると、酔った野郎が調子に乗って
「俺ももう三十路過ぎたし、そろそろ結婚して親を安心させたいんだよね。」
黙る一同。
バカなの?
「ウチの横の土地、ぱんさーん家の土地でしょ?
将来、あそこに家建てるから売ってくれよ?
やっぱ男はさ、自分の城が欲しいもんだよな!」
・・借金地獄で基地外になったのか?
野郎が便所に行った直後、一同大爆笑。
今年の三月、別の用事で野郎に電話したら今、病院にいるとか言い、背後から赤子の泣き声が聞こえた。
まさかとは思ったが、近所の人の話によると野郎、変な女と籍を入れ、家に女房子供と一緒に住んでいるそうなのだ。
だがその事を俺や友人らには頑なに隠そうとする。
そりゃあ借金地獄の分際で結婚したなんてバレたら殺されるだろうしな。
バカだなあ。
大方、ヤミ金に追われてた昨年の五月頃に、気晴らしに中出ししたら出来ちゃったんだろうな。
野郎がどうなろうと知ったことじゃないが、産まれてきた子供が可愛そうでならん。
嫁の親はどう思ってんだろ?
どうせこれからも金に困れば友人らに金をせびることだろう。
「誰にでも幸せになる権利はある」
と言うが、現実を見据えず、周囲の人々を大切にしない輩は地獄に堕ちるしかないのだな。
この間、新しい職場の上司のA氏と呑みに行った。
開口一番、A氏は
「ぱんさー君、彼女とかキープしてる女とか居ないの?」
と、修行僧のような風貌ながらいきなり俺の下半身事情を詮索してきた。
更にA氏は
「鶏の生と死を利用する仕事だからこそ、死んでいく鶏達の分までヒトのオスとして全力で生き、結婚して親になって自分の「生」を未来に繋いでもらいたいんだ。」
と、俺が日頃うっすらと考えていたことをズバリと言ってくれた。
確かに。
世間体とか、誰が結婚したからとか、寂しいからとか、安っぽい恋愛ドラマに刺激されたからとか、毎日タダでデキるからとか、そんなチンケな理由ではなく、命を扱う仕事をしているからこそ、一匹のオスの生き物として結婚とかそう言ったモノに対してちょっとだけ前向きになって来ていた今日この頃。
今のところ、一緒になる恐れのある女は影も形も無い。
だがせめて
「こんな男と一緒になるんじゃなかった」
「こんな親に産んでほしくなかった」
と、愛すべき者達を絶望させるような男にはならないよう、今は足元を固めておく。