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『ChatGPT活用術「仕事で役立つプロンプトの極意」ー深く正しく回答を得る方法―』
(江坂和明著 秀和システム)
- 生成AIについて思考してみよう(はじめに)
2025年のトレンドとして、注目すべきテーマの一つに、生成AI(Generative AI)があります。
大規模言語モデル(LLM;Large Language Models)の生成AIや、そこから発展した、“AIエージェント”(各々のシステム環境から情報を収集し、自律的に判断・行動を行うシステム。今後は、「補助ツール」から「自立してタスクを遂行するエージェント」へと進化し、人間の業務領域を大きく支える機能を果たし、「業務の効率化」などに寄与することが期待されている)、“マルチモーダルAI”(テキスト・画像・音声など複数のデータを組み合わせて分析・処理できる仕組み。「カスタマーサポートの高度化」や、「高精度な医療診断支援」への応用が期待される)“社内データと生成AIを連携するRAG(Retriever Augmented Generation;検索・拡張・生成)技術〔注〕”等は、日々進化しており、活用による経営面でのメリットを考えると、目を離せません。
以上を踏まえつつ、生成AIの入門編である紹介本から、生成AIを上手く使うコツであるプロンプト(指示文)と、プロント以外の生成AIの基本的なことに触れてみたいと思います。
紹介本が示す「プロンプトの極意」は、生成AIにおける基本です。この基本を身に着けることは、生成AI関連を活用する上で必須と思います。是非紹介本を読んで体感的に身に着けて下さい。(「プロンプトの極意」は次項でご紹介します。)
一方、プロンプト以外の生成AIの基本的な考えや注意すべき点について、紹介本を参考に、以下で、項目別に記述してみます。
【生成AIは「口の立つ新入社員」。これを、有力な「コーチ」に変えるには?】
紹介本は生成AIを「口の立つ新入社員」と位置付けています。生成AIは、膨大な学習データを基に、ディープラーニングを行い、新たなデータや結論を生み出します。
しかし、その情報の正確性は保証されておらず、一つの「ツール」「下書き」として捉えるべきです。つまり、生成AIの提供する情報を仮説として捉え、検証と修正を行った上で活用することが重要です。これにより、「口の立つ新入社員」を「コーチ」に変え、パワーアップに繋げることが出来るのです。
【利用する上での注意点】
利用する上での主な注意点は、著作権などの権利侵害、機密情報の漏洩、セキュリティリスクが挙げられます。
著作権については、紹介本は「生成Aiが出力されるデータには、元データにおける保護されるべき著作権の情報の一部が含まれる可能性があり、生成AIの内容を利用する前に、著作権を侵害していないか確認しましょう」と注意を促しています。因みに、生成AIのアプリ「Perplexity」は、情報源(出典)が明示されますので、著作権侵害を回避するために活用できます。
機密情報の漏洩については、生成AIに入力された情報はそのまま学習データとして利用される可能性がありますので、個人情報や機密情報は入力を避ける必要があります。オンプレミス環境では、学習を避ける対応をとることで、学習データとして利用されるリスクを回避できます(〔注〕を参照)。
セキュリティリスクについては、不正なアクセスや操作などによってデータが漏洩したり、AIモデルが悪用されたりするリスクがあります。これを回避するには、オンプレミス環境に於いて、各種セキュリティー強化製品と連携することで、実現できます(〔注〕を参照)。
【生成AI関連の進化による未来社会】
生成Ai関連の進化が社会にもたらす影響について、『「AIは社会を大きく変える可能性を秘めている。多くの分野で人間の代わりに作業を担い、(ビジネス、製造業、医療、金融、教育などの分野で)効率化〔注〕をもたらすだろう」が、一方で「そのプロセスの中で危険がないとも限らない」(甘利東大名誉教授;ITmedia 2025.2.25記事)』とある様に、「最終的な判断と創造的な発想は人間にしか出来ない」ことを念頭に置きながら、バランスの取れたアプローチによる、適切な活用が、未来の社会発展にとって重要です。
〔注〕《図》『「生成AI活用例(1)(2)」&「生成AI活用の勘所」&「RAG」』を参照ください。URLは下記です。
URL:https://blog.goo.ne.jp/sakaigmo/e/5a21b6cbeb57247107e8b4907aab4b80
- 生成AIを効果的に活用するための「プロンプトの極意」
紹介本「ChatGPT活用術」に示されている「プロンプトの極意」は、ChatGPT以外の生成AIのアプリケーションでも応用できるものです。紹介本の示す「プロンプトの極意」の注目点を項目別に示します。
【プロンプトエンジニアリングの3つのポイント-〔〕で表示の3つ-】
〔指定した方法で回答させる、プロンプト技術―4例―〕
<文字数や文章の表現方法を指定>
具体的な数値や条件を示すことで、期待に沿った回答を得やすくなります。出力文字数の指定(ex;「200文字以内で回答して下さい」)や、文章の表現の指定(ex;「マニュアルとしての文章で説明して下さい」)等です。
<回答を読む読者のレベル、対象読者を指定する>
「新入社員向け」「経営層向け」「技術者向け」「中学生向け」など、読者のレベルを指定したり、「対象読者は、お客様センターに問い合わせを頂いたお客様」など、対象読者を指定することで、読み手の理解度が増したり、コミュニュケーションを向上させる等の効果を生むことが出来ます。
<生成AIの役割を指定する>
生成AIに対し、「貴方は、経営コンサルタントです」等の“職業的な役割(identity)”の指定は、専門分野における深い知識・洞察・戦略の情報を得る際に有効です。また、「貴方は、プロジェクトマネジャーです」等と“行動上の役割(Role)”の指定は、具体的な行動・手順を求める際に有効です。
<生成AIの文章の味付けを調整する>
生成AIを利用してビジネス文書を作成する際、文章のトーン、ティスト、スタイルを調整することで、文章の味付けを変え、目的や読者に合わせた効果的な表現を実現できます。
トーン(Tone;文章全体の感情や態度)、ティスト(Taste;一つ一つの文章の個性やニュアンス)、スタイル(Style;文章の構造や形式、言葉づかい)の各々のプロンプト文例計34個が、紹介本に記されています。
〔回答の精度を上げるための、プロント技術―2例―〕
<ロジカル・シンキング・ツールの活用>
ビジネスで使われるロジカル・シンキング・ツールの論理に沿って情報を整理し、その情報を生成AIに入力することで精度の高い回答を得ることが出来ます。
例えば「SWOT分析」を使って、競争力を高める為の戦略を立てる「ツール」になります。「ツール」を使い、分析・検証を重ね、実効性のある戦略を立案しましょう。
「A品により市場へ新規参入します。SWOT分析を用い、企業の内部と外部の環境を包括的に理解し、競争力を高めるための戦略を立てたい。SWOT分析の事例を示して下さい。実例を踏まえ、よく考えて具体的に示して下さい。」とプロンプトを入力すると、「A品により新規参入する企業の、戦略を立てるための事例を示します」に加えて、強み(S)、弱み(W)、機会(O)、脅威(T)のそれぞれのジャンルについて、具体的実例が示され、更には、強みを生かし、弱みを克服しながら、機会を最大限に活用し、脅威に対応する、具体的な戦略が示されます(紹介本P157~160)。
(ロジカル・シンキング・ツールについては「ロジカルシンキングがよくわかる本<今井信之著 秀和システム>」のP94~194を参照ください。)
<生成AIと「壁打ち」をする>
「壁打ち」とは、自分の考えを他者に聞いてもらい、質問に答えながら頭を整理したり漏れを無くしたりするプロセスを言います。この場合の他者(相手)は、生成AIです。
生成AIとの「壁打ち」は、アイデアの客観度を高め、視点を広げる手段として重要です。多様な提案やフィードバックを得ることで、創造性や問題解決力を高められます。
特に、上述の、“職業的な役割(identity)” “行動上の役割(Role)”を、生成AIに入力・設定することで、レベルの高い、オーダーメイドな「壁打ち」が出来、より深い相談・議論が出来ます。
〔補足的な文章の追加で、より良い回答を得られる、プロンプト技術―7例―〕
(以下で、ビジネスに有効な追加文章を「」で、7つ例示します。)
「実例を踏まえ、具体的に」、「時系列に従い、ステップ・バイ・ステップで具体的に」、「ケーススタディを交えて」、「ベストプラクティスを明示しつつ」、「このデータから得られる予想外のインサイトについて具体例を使って説明を」、「短期的及び長期的視点から」、「他社の成功事例と比較して分析を」。
【その他のポイント】
紹介本には、上述以外にも、有効なプロンプトについて、書かれています。是非お読みください。
- 生成AIの進化を追求、活用し、未来を切り拓こう(むすび)
生成AI及びその発展形である、AIエージェント、マルチモーダルAI、RAGなどは、日々進化し、活用の好事例がニュースやSNSで流れています。これらの進化を追い求め、活用し、経営に生かして行きましょう。
【酒井 闊プロフィール】
10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。