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水曜どうでしょう 「迷走中」…最大の見所はエンディング?

『私は貝になりたい』

2008-10-03 10:20:41 | 映画
あまりにも悲惨すぎて
つらくて、死にそうになります。
見るべき映画なのですが
自分に力の無いときには
絶対に見てはいけない。
かなりの痛手になってしまいます。

戦争という国を挙げての暴力の渦に巻き込まれてしまった
一人の不幸な男と、その家族。
わたしたちって
人権というのは最低限、守られると思っているでしょ?
というか、
守られると思っていなければ生きていけない。
でも、
守られないと知ったときの恐怖。
悪いことなどしていないのに
“罪”を償わされる絶望感。

戦争をしてはいけないと
つくづく考えさせられる。
今現在も同じように人権を平気で踏みにじるような出来事が
世界中のいたるところで行われている。
という現実を忘れてはいけない。

というのが、
この映画から受ける“戦争のばかばかしさ”への教訓。

でも、
それとは全然別に・・・

今の日本はこれとある意味まったく同じ情況なのかもと思った。

人権を踏みにじられるというのは
戦争には限らない。
「つまらない人生だった・・」
と、
貧しく生まれた主人公豊松が回想する。
生まれつき足が不自由で、
小学校を出ると床屋に丁稚に出され
兄弟子や親方に小突かれ
のろまだのぐずだのと言われ続け
妻のふさえと出逢い、
爪に灯をともすような暮らしで
やっとのことで少しの幸せを得たところで来た赤紙。
兵隊にとられてからは
上官に牛や馬のごとく扱われ、
文字通り、踏みつけられ、
それでも生きて帰ってきた、これからだと思ったところで
今度は戦犯として逮捕。
「やらなきゃ殺す。」と脅されて
米兵の捕虜を殺した(殺してもいないけど)ことで
絞首刑の判決。
幼い子をおぶって雪の中を歩き回り
救命の嘆願書の署名を200人分集めた妻の努力もむなしい。

豊松の人生で
希望は見えたかと思えば、
すぐにはかなく消えて去る。

生きてきたのは何のためだったのだろう・・・
そんな事を思うのは当然。
「どうしても生まれ変わらなきゃいけないのなら
 私は貝になりたい。」
もう人間はイヤだ。

これを他人事と思えない人が
この豊かで平等のはずの日本には大勢いると思う。
シウだって
いつそう思う日が来るかわからない。



戦犯裁判のシーンで
言葉の壁もあるのだけど
考え方に決定的な違いがある日本人と連合軍のやりとりがもどかしかった。
「最終的には死刑は自分の意志で決めたはずだ。」という裁判官。
「どこの国の話ですか?!わたしたちには心なんか無かった。
 牛や馬と同じなんだ。」という豊松。
獄舎で看守と心を通じさせるところは少し救いだったけれど。


フランキー堺さんが中居君と同じ役をした同名作品のリメイク。
シウはタイトルだけ知ってたけど
これはリメイクされて、
多くの人の目に触れることになって良かったと思う。
現代にこそ必要な問題提起だと思うから。

中居君のハンサムなのに、
どこか貧相なお人よしな雰囲気が
清水豊松にぴったりでした。
そして
仲間由紀恵さんの芯のしっかりした感じもハマり役でした。

芸達者クサナギ君も存在感出していました。

ハーグ条約に反する
一般人への絨毯爆撃に矢野中将(石坂浩司)が意見するところ。
そうだよね、
あれを忘れちゃいけないよね。
アメリカは今もあれを中東でやっているのよね。


私は貝になりたい - goo 映画
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12 Comments

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ずっしり心にのしかかりそうな映画ですね。 (haroharo)
2008-10-03 12:36:18
生きていることの根幹にかかわるような内容みたいです。
なぜ生きているか? ということよりもっとつらいこと 生きている人間同士がなぜ 他人の人権をないがしろにできるのか? なんだろうと思います。

みんなが同様に 人生を謳歌できることは難しいことなんでしょうけど、最低限の人権は守られるべきでしょう。
最低限がどこなのかは 議論されることなんですが、すくなくとも 生きることの権利は奪ってはいけないことですよね。

映画 見にいきたいです。
ありがとうございます (ランディ)
2008-10-03 15:42:20
はじめまして。
真摯な感想に感動しました。
映画を観る希望がでてきました。

これからもすてきな感想を読ませていただき
たいです。
haroharoさん (シウ)
2008-10-03 23:53:53
ぜひ見てください。
とはいえ
上でも書いてますが
相当な覚悟がいりそうです。
自分が保証されていると信じる
世の中の平等や自由は
意外にもかんたんに壊されてしまうかもという
漠然とした恐怖に襲われます。

生きる権利は最低限奪われないものだとおもいたいですが
それすら
確実ではないのかもと。

本当に
なぜ人間同士が殺し合い、踏みにじりあうのか・・
なんだろう?ですよね。
ランディさん (シウ)
2008-10-03 23:55:58
ありがたいお言葉に感謝します。
気分にまかせ
適当に書いていて、
お恥ずかしいです。

ただ、シウが書いたことで
「じゃ、見るのをやめよう。」
ってならないように、ということだけ
気をつけているつもりです。

拙いブログですが
またよろしければ、
見にいらしてください。
覚悟が決まりました (かのん)
2008-10-04 02:08:39
初めまして。こんにちわ。
人様のブログを読んで、涙が流れたのは正直初めてです。読み返してもまた泣けて。
私は中居ファンです。
心の片隅でフランキーさんと比べられて、何か言われたら・・と、つまんない事まで考えてたりしました。でも、これは伝えるべき映画。
そう思ってはいても不安だった想いが、涙と共に消えました。しっかり観ようと思います。
真っすぐな眼での感想をありがとうございました。
納得しました。 (ランディ)
2008-10-04 16:47:32
たびたびお邪魔します。

コメントのお返し、ありがとうございました。
実は、感想を読んで映画を観るのが嫌になる
くらいの所にお邪魔したこともあり、それに引き換え、
シウさんの感想はとても感動しました。
それは、シウさんの心がけによるものだった
のですね。
観たままの素直な気持ちをぶつけるのも
ブログの醍醐味ですが、色んな人が読むブログ
ですし、思いやりも大事ですよね。

とういことで、今日はシウさんのお勧めの
「容疑者Xの献身」を観て来ました。
本当に、テレビドラマの延長ではなく、ひとつの作品として誠実に作られていました。
でも、湯川先生の魅力も健在で、よりシリアスな湯川先生のかっこよさもスクリーンに映えて
いました。堤さんと松雪さんの演技もすばらしかったです。今年、邦画は豊作のような気が
します。

では、失礼いたします。
かのんさん (シウ)
2008-10-05 21:11:30
コメントありがとうございます。
シウこそ、そんな風におっしゃっていただいて
とても嬉しいです。

リメイクするととかく以前のものが良かったと言われたりするし
正直そういうことも多いと思います。
で、シウはフランキーさんが演じたこの作品をしっかりと見たわけではないので
なんともいえませんが、
中居さんのこの作品での演技はとてもよいものでしたし
そして何よりも
中居さんが演じたことで
この重いテーマの作品にふつうなら足を運ばない人たち(シウも含め)が
劇場に見にいく、ということに
すごく意義があると思います。

何かの現象を起こす映画じゃないかと思っています。
ランディさん (シウ)
2008-10-05 21:15:25
またもやありがとうございます。

シウの心がけとはいえ、
もともと浅はかなので
何でもすごく良く見えてしまうという所もあるんですけど・・・。

容疑者X、良かったですよね。
福山さんが演じているということで
それが興業収益的にはプラスでもあり、
でも映画が名作として残るかどうかという点ではもしかするとハンデになるかもって思っています。
どうしても人気ドラマの延長という誤解を受けてしまいそうなので・・。
そういうことを福山さんもすごくわかっている感じがしますよね。
色々なところで聞く福山さんのコメントが
とても謙虚で良いなと思います。

本当に、おっしゃるとおり
最近の邦画はハズレ無い、という感じですね。
Unknown (U・M)
2008-11-20 19:59:36
自分も中居版に先駆けて昨日フランキー版(
テレビドラマ版)を見ましたが・・・
見終わって言葉が出なかったですね。
所ジョージ版も見たのですが、あの時はラスト
で泣いてしまいましたが、この「正真正銘の
オリジナル版」では泣く事も忘れる程深い
衝撃、悲しみ、怒りを覚えました。

「人間は、本当に凄い物に巡り合うと言葉を
吐く事さえ忘れる」と言う言葉がありますが、
このオリジナル版は正にそんな感じでした。
U・Mさん (シウ)
2008-11-21 09:00:31
中居版について
年配の方などの中では特に
力不足なのでは?という声が出ていると思いますが
やはり今回、彼だからこそ
再度このテーマに注目させることができると思います。
映画を見て、フランキー版と同じ、その絶句という情況を味わえるかどうかわかりませんが
世代を超えて語り継ぐべき悲劇ということで
意義があると思います。

貝になりたい・・・なんて
人として、そんなに悲しいことがあるでしょうか。

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