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「両岸第一」の新聞『旺報』が創刊

2009年08月11日 23時10分53秒 | 台湾ニュース

 台湾における代表的な新聞は4紙。
 
創刊の古い順に、『中国時報』、『聯合報』、『自由時報』、『蘋果日報(アップルデイリー)』となっています(蘋果日報以外は、創刊当初は別の名称)。

 台湾も日本と同様、インターネットの普及に加えて、折からの不景気による広告収入減や売り上げ低下、紙代の値上がりなどで、紙メディアはどこも非常に厳しい経営を強いられています。
 最近では各紙とも以前に比べて枚数が減って薄くなり、また他紙の二倍ほどもある分厚さで知られていた蘋果日報は、紙代節約のため紙面自体の大きさを小さくしたりと、涙ぐましい努力が続けられています。

 新聞業界全体が低迷しているこのご時世に、なんと今日8月11日、台湾で新しい日刊紙が創刊されました。
 『中国時報』を発行している中時旺旺グループが創刊した、『旺報』です。


 『中国時報』は、元々「中時グループ」というメディアグループの中核でしたが、2008年、中国大陸で広く成功している台湾企業・旺旺グループに買収され、「旺旺中時グループ」となりました。
 煎餅菓子の製造・販売から始まった旺旺グループは、中国大陸に進出してから急成長し、今ではホテルや不動産などを手広く営んでいます。
 メディア進出が長年の夢だったと言う創業者である蔡衍明・董事長(会長)は、11日の創刊記念パーティーで「私は今、メディアグループの会長ではなく、メディアの創設者になった、大変感激している」と喜びを語りました。

 11日の創刊記念パーティーで気勢をあげる旺旺中時グループの蔡衍明・董事長
(写真提供:CNA)

 
 パーティーには、春柏・総統府秘書長や監察院院長、行政院大陸委員会の頼幸媛・主任委員、海峡交流基金会の江丙坤・董事長、更には連戦・国民党名誉主席など、政府関係者や中国大陸との関係が深い事で知られる政治家らが駆けつけ、祝辞を述べました。
 馬英九・総統および蕭萬長・副総統も、祝賀メッセージを送っています。
 


上:馬英九・総統「台湾を主体とし、人民に有利となるように」
下:蕭萬長・副総統「相互理解増進、交流促進」

 
 他4紙よりも小さめのタブロイド紙版のこの『旺報』のキャッチコピーは、「台湾優先・両岸第一」。台湾で初めての、中国大陸報道を専門とする日刊紙です。
 経済活動を中心とした両岸交流の拡大と馬英九政権発足以降の両岸関係の急速な改善を背景に誕生したこの『旺報』は、両岸関係をいっそう促進し、台湾の中国大陸に対する理解をより深め、両岸関係をより緊密なものにする事を目標としています。

 日本にも、例えば華僑の人たちを主な対象にした、台湾や中国大陸のニュースを専門に扱う情報誌というのは存在していますし、特定の外国や地域だけを紹介する観光雑誌などは日常的に目にします。
 ですが、『旺報』がそれらと大きく異なるのは、商業雑誌ではなく「新聞」という報道メディアの形を取っている事、そして、中国大陸による台湾向け媒体ではなく、「台湾企業」による「台湾向けの中国大陸専門紙」である、という事です。

 以前は、台湾で中国大陸出身の人に接する事はほとんどありませんでしたが、最近では中国大陸出身音配偶者も増え、また台湾各地で、中国大陸からの観光客を目にするようになりました。中国大陸との関係が改善・進展している今、中国大陸に関するより詳しい情報や正しい理解を一般に広める事は、確かに必要とされていると思われます。
 どこでも気軽に手にする事ができる「新聞」という形を取れば、中国大陸ビジネスとは無縁で、インターネットを使いこなせる年齢でもなく、そもそも中国大陸の情報に関心がない、という人たちに対しても、中国大陸に関するいっそうの理解や親近感を促す事ができるでしょう。

 ですが、一方の中国大陸は、台湾についてどの程度の理解があるのでしょうか。
 周知の通り、現在の中国大陸は、以前よりもずいぶん規制が緩くなったとは言え、情報は基本的に党中央の統制下にあり、ごく一部の人を除いては、一般の人々は台湾について驚くほど何も知らない、というのが現状です。
 これはほんの一例ですが、中国大陸に進出している台湾企業向けの雑誌(香港資本)が最近、記事の中で李登輝・元総統の写真を使おうとしました。ですが、中国大陸の若い現地スタッフは李登輝・元総統の顔が分からず、全く別人の写真を選んで印刷に回してしまったのです。若いとは言え、仮にもメディアで働く人が、です。

 今年は、中華民国政府が台湾にやってきてから60年目になります。その年に、中国大陸を主要拠点とする台湾企業による、「台湾優先・両岸第一」を謳う『旺報』の創刊。この間の台湾海峡両岸の歴史と、台湾が経てきた歩みを振り返ると、隔世の感を禁じ得ません。
 既に飽和状態にある台湾の新聞市場の中で、『旺報』が今後どのような発展を遂げていくのか、それは、台湾の民意をはかる一種のバロメーターになるのかも知れません。(華)

 


 
台湾の既存4大紙+新規参入『旺報』の特徴

『中国時報』(創刊1950年)10元
 
・一般的には国民党よりと言われる
(国民党政府による情報統制が厳しかった民主化以前に発行を許されていた経緯から)
・現在は中国大陸報道に重点(2008年、旺旺グループに買収されたため)

 
『聯合報』(創刊1951年)10元
 
・一般的には国民党よりと言われる
(国民党政府による情報統制が厳しかった民主化以前に発行を許されていた経緯から)
・知識人からはオピニオン紙として評価

 
『自由時報』(創刊1980年)10元
 
・一般的には民進党よりと言われる
・現在台湾系3紙(中国、聯合、自由)の中では発行部数最多

 
『蘋果日報』(創刊2003年)15元
 
・香港系紙、センセーショナル路線が売り
・台湾4大紙の中で発行部数最多

 
『旺報』(創刊2009年)10元
 
・中国大陸報道専門紙
・今後の発展はまだ不透明



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