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第9回高雄映画祭が開催中!

2009年10月28日 14時29分34秒 | 台湾ニュース

 高雄市政府新聞処の主催で毎年行われている「高雄映画祭」が、10/16~29まで開催中です。
 高雄市政府では2000年から、映画などの文化振興に力を入れ始め、2001年には初めての高雄映画祭がスタート、翌年2002年には、高雄映画図書館が落成し、それまで台北を中心とした北部に偏りがちだった、映画などのエンターテイメント産業が、徐々に高雄にも流入し始めました。

 高雄映画祭の規模は年々拡大し、今年は、「ファンタジー」「世界の窓」「ピープルパワー」「高雄スピリッツ」など9つのテーマに沿って、台湾や日本、韓国などアジアを中心に、世界中から集まった70を超える作品が上映されています。
 また、特定の監督にスポットを当て、その監督の手がけた複数の作品を紹介するイベントには、韓国の監督と共に日本の中村義洋が選ばれ、「ジャージの二人」「ルート225」など4作品が一挙に上映されています。

 その他にも、今年は特に日本勢が高雄映画祭を圧巻。

・浅野忠信、中村獅童ら6人の監督によるオムニバス映画「R246」
・北村拓司・監督の「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」
・三木聡・監督の「インスタント沼」

 などなど、おなじみの名前がずらり、既にチケット完売のものも続出しています。
 以前当番組でも紹介した、酒井充子・監督の「台湾人生」も、この高雄映画祭で念願の台湾上映を果たしています。(「台湾人生」紹介の過去ブログ)

  さて、今年の高雄映画祭と言えば、話題を呼んだのがこれ。


世界ウイグル会議のラビア・カーディル議長のドキュメンタリー映画「愛の十カ条」

 オーストラリアの製作会社が版権を持つこの作品は、世界ウイグル会議(国際的なウイグル人組織)のラビア・カーディル議長の半生を、ドキュメンタリー形式で描いた作品です。

 中共・新疆ウイグル自治区出身のラビア女史は、元は中共の政治協商会議の委員を務めるなど、中国大陸におけるウイグル族の代表的存在でした。しかし、度重なる北京当局批判などによって1999年に逮捕され、現在はアメリカで亡命生活を送っています。
 中共は、7月にウイグル自治区内で発生した大規模な抗議暴動を指揮していたのはラビア女史であり、彼女はテロリストだと強く非難しています。
 今年8月にオーストラリア・メルボルンの映画祭で同ドキュメンタリー映画が上映された際には、「両国の友好を壊す行為」とこれを強く批判、上映阻止のための様々な働きかけが行われたと言われています。

 高雄映画祭では当初、映画祭の9大テーマのうち、「ピープルパワー」に該当する作品の一つとして、「愛の十カ条」の上映を決定していました。ですが、北京当局はこれに激しく反発、高雄を訪れる中国大陸の旅行客やビジネス客らは激減しました。
 高雄市政府は「政治的論争を引き起こす事は本意ではない」と、一旦は映画祭での上映を取りやめ、映画祭開催前の9/23,24に二日間だけの特別上映を行いました。


特別上映への切り替えについて報道陣の質問に応える陳菊・高雄市長
(写真:高雄市政府新聞処提供)

 ところが、この特別上映が、チケットが瞬く間に完売し問い合わせが相次ぐなど大好評だったため、再度映画祭での上映が決定されました。
  10/1には、高雄に足を運ぶ事のできない人たちのために、台北などその他の地域でも、有志団体らによる特別上映が行われました。


10/1、台北市内の大安森林公園での無料特別上映
宣伝はほとんど行われなかったが1000人を超える観衆が集まった
(前列左から二番目は謝長廷・元行政院長)


食い入るようにスクリーンを見つめる人々

 ちょうどこれと前後して、一部民間団体が、ラビア議長に訪台を要請。ラビア議長は快諾しましたが、内政部は、「世界ウイグル会議は、東トルキスタン組織と密接な関係を持っており、また同会議の事務局長はインターポールから危険人物と指定されている」事などを理由に、「国家安全上の配慮からラビア女史の入境は認めない」事を決定していました。
 東トルキスタン組織(東トルキスタンイスラーム運動・ETIM)とは、新疆ウイグル自治区の分離・独立を目指す活動をしている組織で、北京当局のほか、アメリカも同組織をテロ組織と認定しています。

 しかし、ラビア女史自身を「テロリスト」と非難しているのは中共のみ。2006年のノーベル平和賞にもノミネートされたラビア議長は国際的には人権活動家と認識されており、アメリカ政府が米国滞在を認め、世界各国で講演活動などを行っています。
 また、世界ウイグル会議の事務局長が危険人物と指定されている件について、インターポールは「会員国から要請があったため指定しているに過ぎず、『危険指定』はイコールでテロリストではない」とコメントしています。
 内政部長はこうした指摘に対し「ラビア議長がテロリストだと言った事は一度もない」と改めて説明したものの、ラビア議長は強い不快感を示し、謝罪を要求しています。

 両岸関係の改善を進める現政権にとって、中共が敵視している人物を招く事は、確かに大局的な利益にそぐわない行為でしょう。訪台を要請した民間団体の目的も不明確です。
 出入境管理は主権の行使であり、主管機関が「適切ではない」と判断したのであれば、それは尊重されるべきです。
 しかし、7月末に訪日したラビア議長は今月下旬から再び日本を訪れており、今日現在も、日本国内の大学で講演を行っています。
 「同議長の所属組織が、テロ組織と関係している」という入境拒否の「理由」には、若干の違和感が残るのも確かです。

 幸いな事に、政府は「言論の自由は守られるべきで干渉は受けない」と、高雄市政府による映画祭での再上映の決定には何ら意義を唱えず、中共からの非難についても「台湾の民主主義をより理解すべき」とこれに反論しています。
 台湾という存在の難しさ、そして台湾の民主を同時に垣間見たこの「『愛の十カ条』上映騒動」、台湾の人々、そして中国大陸の人々はどう見ていたのでしょうか。
 「愛の十カ条」は、今日28日午前、好評のうちに、高雄映画祭での最後の上映を終えました。(華)

高雄映画祭2009公式HP(中国語および一部英語)



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