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GM破綻

2009-06-03 | essay
遂に、米国、否世界最大の企業であるGMが16兆もの巨額の負債を抱え破綻した。

この100年に一度の世界同時不況がモロに直撃した形だが、一体全体、これからの世の中はどうなっていくのだろう。

“強きアメリカ”“古き良きアメリカ”の象徴であるGM。映画でお馴染みの'50年代、'60年代のアメリカ発ムーブメントは、コカ・コーラ、Gパン、プレスリーにジェームス・ディーン。ラジオから流れる大リーグ中継。そして、そのシーンには、必ずと言っていいほど、キャデラックがついて回る。

私の世代では、“Back to the Future”“Field of Dreams”で、憧れのアメリカを知ったことだろう。

このニュースを耳にし、ふと思ったのは、平家物語の有名な一説である。


祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす
おごれる人も久しからず ただ春の夜の夢のごとし
たけき者もつひには滅びぬ ひとへに風の前の塵に同じ


人間は一世代30年と言うが、同じく企業も国も栄枯盛衰のリズムがあるらしい。GM100年、そして米国は建国以来たかが200年強の国家である。

その間、スペイン無敵艦隊や大英帝国の栄光を引き取ったアメリカは、目覚しい発展を遂げ、1900年代の人類の壮大な実験であった共産主義とのイデオロギー戦争でも相手の自殺点によって勝利し、今や世界唯一の超大国となった。世界の警察までをも自認し、第二次大戦以降、アメリカは世界の頂点に君臨し続けてきたのである(当然、その国益に沿って世界が運営されてきたという側面も否定できない事実である)。そして、アメリカの「自由と民主主義」という価値観は普遍性を帯びて世界に広まり、共産主義なき後、イスラム社会との対決が先鋭化しつつあるところなのは、ご承知のとおりだ。

以前TVで見たが、最近の中高生は、昔、日本とアメリカが戦った、という事実を知らない、もしくはあり得ないと思うのだという。それほど今の日本の若者にとっても、アメリカとは偉大なる存在なのだ。

しかし、歴史は輪廻するのが常だ。GMが破綻したことからも、今までのアメリカ発の大量消費社会というのは終焉を迎えたと言っても過言ではあるまい。一方、世界中がもっと学ばなければならないが、投機的な金が金を生む仕組みは結局のところいずれバブルとして崩壊してきたことが示すように、社会基盤として頼るべきは、もっと堅実な産業、すなわち製造業であるべきなのだろうと思う。労働力の安い国々で付加価値の少ないものが作られ、日本も含めた先進諸国は、アメリカが自ら形作ってきた個の時代に対応し、知恵のいる「ものづくり」が求められていくことになる。

それとともに、アメリカが戦後生んできた行き過ぎた拝金主義や個人主義が、日本社会においては歪みを与えているように思える。狩人であった肉食人種と、農耕を共同で行ってきた草食人種とでは、そもそも価値観が違うはずなのに、である。

GM破綻の要因の一つに、肥大化した労働組合がある。過去ストライキ権を盾に勝ち取ってきた労働者の権利を、結局手放さず、会社もろとも吹き飛んでしまった。一個人の安住も、組織の安住に包含されることを知るべきである。

私は、金で買えないもののありがたみを忘れてはいけないと思う。金で買えないプライスレスなものこそ、人間として大切にすべきことが多い。

今世界が普遍的と思われているアメリカ的な価値観も、長い目で見れば流行りすたりが出てくるのだろう。もはやこの流れが変わらないと諦めるのではなく、本来日本が大切にしてきた価値観を、誇りを持って次の世代につなげていくこと。これは、あらゆる日本人に課せられた義務だと思う。

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