山本圭さん逝去，81歳。兄の学さん「私など足元にも及ばぬ名優でした」。

>>>俳優の山本圭さん逝去，81歳。兄の学さん「私など足元にも及ばぬ名優でした」。

　演技派として知られた俳優の山本圭（やまもと・けい）さんが3月31日午前9時20分、肺炎のため死去。81歳。
 シェークスピア劇などで舞台俳優とし活躍する一方，ドラマや映画に出演，硬軟演じ分ける実力派の名脇役として，存在感を示しておられました。

　テレビドラマはあまり観ない私たしですが，19～20年放送のテレビ朝日ドラマ「やすらぎの刻～道」は，毎回テレビ画面に釘付けでした。
　倉本聰さんの昭和の匂いが薫る筋書きと，主演の石坂浩二、浅丘ルリ子，加賀まりこさんらを取り巻く，昭和の名優が続々出演の豪華キャスト。わけても，石坂浩二，ミッキー・カーチスそして山本圭さんの三人の飄々とした絡み合い，とりわけ海釣りシーンはペーソツに溢れていました。
　いま，名優 山本圭が亡くなったとの報に接し，一抹の寂しさを拭えません。『やすらぎの郷(中) 第46話~第90話』から，第53話での　死について語る出演シーンの一部分を抜き書きします。

　出典：　やすらぎの郷（下）双葉社発行　5ページ

▼◆▼　磯
　マロ（ミッキー・カーチス）、大納言（山本圭）、栄（石坂浩二）の三人が、黙って釣糸をたれている。

マ　ロ　「ポックリ、サッと逝けりやいいけどよ。　そううまく行くとは限らんぜ」
二　人「　－　」
　　　　　　潮騒。
マ　ロ　「死ぬ時のことって考えたことあるか」
　　　　　　短い間。
二　人「（同時に）ある」
　　　　　　　間。
マ　ロ　「痛いンだろうな」
大納言「痛いっていうより苦しいンじゃないのか？」
マ　ロ　「どの位の間」
大納言「早けりや2、3分。長けりや30分か」
　　　　　　　間。
マ　ロ　「イヤだな永い時間苦しむの」
大納言「だからオレ麻酔科の、ここのホラ辻井先生と親しくして、苦しみかけたら早いとこサッと、注射打って下さいって頼んであるンだ」
マ　ロ　「成程。　－　あら、いつのまにか餌とられてる」
　　　　　　潮騒。
大納言「オレの友達で臨死体験した奴いるンだけどな」
栄「一度死んだの？」
大納言「死んだんだそいつ、交通事故で」
マ　ロ「痛かったって？」
大納言「それがさ、全然痛くも昔しくもなかったンだって」
二　人「（同時に）　ホントけ」
大納言「車がぶつかってイケネー！つて思ったとき、痛みより何より真綿みたいな、何ともやさしい手がそいつを抱き上げて、そオッとフワフワの花園みたいなとこに置いてくれたンだってさ。痛みも苦しみも全然なくつて、何とも気持ちいいもンなンだってさ。それで気がついたら病院の集中治療室で、御臨終ですって声がきこえたンだって」
マ　ロ「誰の声」
二　人「ア、喰ってるよー・」
大納言「（あわててリールをまく）　ア、逃げられた！」
マ　ロ　「誰の声」
大納言「医者の声よ。－　人間って死ぬ時、聴覚だけは最後までかなり長いこと生きてるらしいね」
二　人「ホントー」

　　　　　　出典：やすらぎの郷(中) 第46話~第90話　　56～62ページ　　倉本聰著

 

やすらぎの郷(中) 第46話~第90話   倉本 聰 双葉社

 

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┗■　山本圭（やまもと けい、1940年7月1日 - 2022年3月31日）

　俳優。大阪府大阪市生まれ。成蹊大学政治経済学部を中退。大学中退後，1960年に俳優座養成所第12期生となり，1963年に正式に入団（1980年に退団）。2022年3月31日午前9時20分，肺炎のため死去。81歳没。
　兄の学さんは，「私など足元にも及ばぬ名優でした」としのんでいます。

　1962年，父方の叔父山本薩夫監督の『乳房を抱く娘たち』で映画デビュー。
　1966年，テレビドラマ『若者たち』で三男・佐藤三郎役を演じて人気を獲得（1968年からの映画化三部作にも同役で出演）。毎日映画コンクール助演男優賞を受賞。 その後も『戦争と人間』，『小林多喜二』などの映画作品に出演，内面に強さを秘めた人物像を演じている。
　舞台俳優としても知られ，シェイクスピア作品に多く出演している『ハムレット』のほか，1978年に男優のみの配役で行われた俳優座の公演『お気に召すまま』ではシーリア役を演じている。
　テレビドラマでは主役級の脇役として活躍。
　趣味は渓流釣り。

 

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