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「身の丈」経営,「身の程」人生

身の丈,身の程を知って生きる・・・・・

行政,補助金に頼らない地域再生の取り組み-やねだん3

2010-08-12 16:51:47 | これでいいのか鹿児島


 鹿児島県鹿屋市串良町柳谷地区。行政上の正式名は「やなぎだに」だが,地元では「やね
だん
」と呼んでいる。この集落は人口315人,電車もバスの便もない。この小さな集落
が「過疎からの奇跡の復活」を遂げ,全国的にも注目を浴びている。06年までは下降をた
どり285人まで減った人口が,07年には増加に転じた。財政面でも豊かとなり,06年
にはに住む110世帯に1万円の「ボーナス」が渡された。
 こうしたエピソードは麻生内閣の時,国会でも取り上げられ,一躍全国的な関心を集め
た。

 1996年3月の柳谷公民館の総会で公民館長に選出された豊重哲郎(当時55才)氏
は,行政に「おんぶにだっこ」では,人もも育たないとし,集落を蘇らせるため,次の
ような施策を打ち出した。それは,「行政にたよらない村おこし」である。そして,高齢者
への福祉対策だけでなく,子どもも元気でここに住んで見たいと思える地域を目指す,との
目標を掲げた。

 豊重氏はその実現には,まず資金作りが必要とし,減反政策で放り出されていた畑での特
産品のサツマイモ栽培を提案し,地元高校生に「イモ作りで儲けたら,東京ドームでイチロ
ーを見よう」と呼びかけた。当時のイチローはオリックスのスター選手。なれない畑仕事に
四苦八苦の高校生を見かねて,大人達が指導や手伝いをかって出た。やがて畑は世代を超え
た語らいの場となる。98年の売上げ7万円,00年は63万円,02年は90万円と収益
アップを果たし,見事イチロー観戦を実現した。

 「微生物を使って土着菌を製造」

 さらに,地中の微生物に込めぬかなどを発酵させた「土着菌」づくりである。さらにそれ
を使ったサツマイモの有機栽培,そして有機栽培で育ったサツマイモを原料としての焼酎造
りと活動の幅を広げ,05年には収益500万円を得るまでに達した。
 この収益金で,高齢者のための「緊急警報器」設置,手押しクルマの「シルバーカー」の
購入,子ども向けの授業料ゼロの「寺子屋」塾の設立・運営,さらには06年の住民への1
万円ボーナスと,着々と成功をおさめた。

 自主財源の確保で,高齢者の元気を回復する一方,「若者の流出」にも取り組み,アーテ
ィスト限定で全国から若者募集を打ち出した。07年,豊重氏は,無人となっている「古民
家」を利用し,芸術家に限定しての無償での移住を呼びかけた。これに応じて,彫刻家,画
家,写真家,陶芸家などが移り住んだばかりでなく,やねだんの活気を知った集落出身の若
い世代が「子育てしたい」と県外から,Uターンしてきたのである。


 「やねだんに移住した芸術家が住む迎賓館」

 それまで閉店していたスーパーは「ギャラリーやねだん」として,作品の展示販売に活用
されるなど,無惨な空き家が貴重な財産として活用されている。やねだんの人口は131世
帯・315名となり,集落の過疎・高齢化に歯止めがかかったのである。


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やねだん4

やねだん-2

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実践!地域再生の経営戦略―全国36のケースに学ぶ“地域経営”
日本政策投資銀行地域企画チーム
金融財政事情研究会

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3 コメント

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Unknown (鈴木五郎)
2010-08-16 21:15:56
 カキコミさせて頂きます。

 お恥ずかしながら、現在、内之浦町大浦地区を舞台として小説を書いております(笑)。16年前当地を訪れて「ここに、写真家として住みたい」と思ったことが、原点です。
 とはいえ、「写真家として食えるようになる」こと適わず・・・。
 “自称芸術家”ではなく、本当に芸術家として一人立ちをしている方というのは、写真に限らず、どんな分野でもごく一握りじゃないのかな~と思います。
 柳谷に集まった芸術家の方々って、どの程度の力を持った方々なんでしょうか・・・・。
 ついつい意地悪く考えてしまいます。

 あっ、でも昔、宝島に住んでいた頃、確かに画家先生が島に住んでおりました。で、やっぱり島の人たち同士では「あの先生、どうやって食っているんだろう・・」って、噂しあっていましたっけ・・。
 
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Unknown (RK)
2010-08-17 00:45:19
 芸術家に資格や基準はありませんので,「私は芸術家」だと宣言すれば,誰がなんと言おうと芸術家ということでいいのではないでしょうか。
 とは言っても,私自身は,自分から「研究者だ」あるいは「学者」だと公言する奴は大嫌いです。芸術家,学者,あるいは研究者といった評価は,その人の業績,あるいは人となりをみて,第三者からの尊敬を込めての敬称と,私は考えます。
 勤務した大学や研究機関では,これといった業績もあげず,創造性や独自性などないくせに,ぬけぬけと「研究者面」「学者面」する奴には,「お前ごときが学者面するな,研究者面するなと」,面と向かって罵倒していました。
 ちなみに私は,「マーケティングの実務家」と,自称しています。
返信する
『相思相愛』になれるのか? (鈴木五郎)
2010-08-17 13:37:08
 小林先生、お付き合いしてくださり、ありがとうございます。
 う~~ん、自分の疑問としては、柳谷の住民の方々と芸術家の方々の間で、『相思相愛』の関係を築けているんだろうかな~という一点です。(失礼な書き方となるかもしれませんが、現実。それじゃあ、鹿児島県民の方のうち、実際に“写真展”とやらに足を運ばれた経験のある方って、どれくらい???と同種の疑問という意味です)

 ともあれ。小林先生も、ぜひぜひ一度は内之浦町大浦地区を訪れる機会があらんことを。そして、大浦小中学校の校訓「負けるな」を、ナマで見上げる機会があらんことを。
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