少しずつですが、梅が綻んできました。
いまだ数えられるほどしか咲いていませんが、日差しが少しずつ暖かくなりつつありますので、月末には5分咲きくらいにはなるのではないかと思います。
寒い地方の方には、なんだか申し訳ないような気がします。
梅が香をまとひ托鉢鎌倉路 by rinshou
山形の寺にいたころ、師匠と私は寒の入りからひと月の寒中托鉢を続けていました。
最終日の節分の日は、各戸ごとに「立春大吉」「鎮防火燭」の祈祷札を配って歩いたものでした。
その日は師匠と私だけでは手が足りず、近所の子供たちをお手伝いにお願いしてお札を配って歩きました。
午後3時ころから3時間ほどかけて、周囲の集落を全部回ります。
節分といっても東北は山形のことですから、戸外の気温は氷点下。ときには雪混じりの天気の中を歩きます。吹雪になることもあったなあ。
お盆にお札を載せて、子供たちは各家々の玄関先を訪ねます。
家の人は御札を恭しく受け取ると、喜捨のお米をお盆にそっと載せてくれます。
御札を配る子供たちも、御札を受け取る大人の方も、みんな仏さまの顔をしていました。
何百軒もの家々に、一軒ずつ御札を配って回ります。
子供たちにとっては、お寺のお手伝いで少し大人になったような誇らしげな気分もあったに違いありません。
それでもやはり3時間は重労働。お札を配り終わるころには子どもたちも手がかじかみ、お腹もぺこぺこです。
子どもたちと一緒に寺に帰ると、カレーライスや揚げ餃子での慰労会を行うのが恒例の行事でした。
大人たちは餃子をつまみに熱燗やビールで一杯。子供たちはカレーをお腹いっぱい食べて、お菓子のお土産をもらって迎えに来た家族の方たちと帰っていきます。
「また来年、お手伝いお願いねー」
みんなニコニコしながら、雪道を実に楽しそうに帰って行ったものでした。
翌日、集落の家々の玄関先には前日に配った「立春大吉」の御札が貼ってあります。
雪はまだまだ降りやまないけど、今日から暦の上では春なんだ。心からそう思ったものでした。
今は本寺の若方丈さんが寒行托鉢を続けておられます。尊い修行ですが、どうかお身体を壊しませんようにお気をつけ下さい。
お寺が集落の心の支えになっている、そんな風景がまだ残っている私の故郷のお話でした。
雪避けて貼る墨の香の立春符 by rinshou
いつかきちんとお話にまとめてみたいと思います。今日はここまで。
山形、今日は雨ふりだそうです。
そろそろ雪解けしてもらわないと、体力的にも経済的にもかなり苦しくなってきます。
融けた雪がまた凍ると、これもまた厄介なのですが・・