ひろむしの知りたがり日記

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ブルース・リーのドラゴン拳法(1) ─ ジークンドーの核“詠春拳”

2013年12月15日 | 日記
2012年1月29日にこのブログを初めて以来、まもなく2年になろうとしています。振り返ってみると、そのうちのかなりの記事が、武術がらみの内容になっています。もちろん、それは自分にとって関心のあるテーマだからなのですが、そもそもぼくが武術好きになったのには、3つのきっかけがありました。
1つめが小学校3年生で始めた柔道で、2つめが劇画『空手バカ一代』、そして3つめがブルース・リーとの出会いでした。「燃えよドラゴン」を初めて見た時、それまで目にしてきたヒーローものなどとは比べものにならない迫力あるアクションに、すっかり魅了されてしまったのです。今年は彼の没後40周年であるということもありますし(もうすぐ終わりですが・・・)、わが精神構造に少なからぬ影響を与えたブルースについて、武術家としての側面を中心に書いてみたいと思います。

ブルース・リーは1940年11月27日、俳優である父李海泉<リー・ハイチュアン>の巡業先であるアメリカのサンフランシスコで生まれました。やがて李一家は香港に引き上げ、九龍城で暮らします。そんな中、幼いブルースが初めてやった中国拳法は、父親の見よう見まねで始めた太極拳でした。しかし、武術というよりは健康体操として庶民に認識されていた太極拳に満足できず、14歳の頃に友人から実戦的な武術があると聞いて出かけて行ったのが、葉問<イップ・マン>の詠春拳道場でした。

詠春拳は清代末期、福建少林寺で拳法を学んだ厳四<イムセイ>の娘詠春<ウェンチョン>が、女性であるという身体的ハンデに悩まされ、それを苦にすることなく使えるように技術改良を加えたものであるとされています。手技を主体とし、自分と相手の手を絡み合わせるようにして攻防を行う拳法で、その特徴についてブルースは、①至近距離での攻防においてたいへん優れている、②相手と自分を結ぶ最短距離で攻撃するのでロスが少ない、③相手と相対しての練習を常とし、力の流れを感じ取る訓練をするといった点を挙げています。この詠春拳の技術は、「燃えよドラゴン」の中でも使われています。ハンの要塞島で行われた、彼の手下でかつて妹を死に追いやったオハラとの試合において、最初に互いに片手の甲を合わせた態勢から、いきなりブルースが目にも止まらぬ速さでオハラの顔面を叩くというシーンで使われているのがそれだそうです(松宮康生著『ブルース・リー最後の真実』)。
詠春拳は、のちにブルースが創始するジークンドー(截拳道)の核となりました。

 
  ブルースの名を世界に轟かせた映画「燃えよドラゴン」のパンフレッド(日本公開1973年12月22日)

葉問のもとで修行に励んでいたブルースですが、これはちょっとやり過ぎ─というエピソードを残しています。ある日、彼は師匠の指導を独占するために、「今日は、練習は休みだ」と嘘をつき、他の道場生たちを帰らせてしまいました。そのことは後で葉問に知られ、もちろん、ブルースはこっぴどく叱られたそうです。
そこまで熱を入れて取り組んだ詠春拳の修行ですが、わずか2年ばかりで終わりを迎えます。ブルースは高校で、香港の12校が参加するボクシング選手権に出場し、3年連続で王座を守っていた相手に3ラウンドノックアウト勝ちするといった表舞台での活躍のほか、裏ではストリート・ファイトに興じるというやんちゃな若者でしたが、1959年4月29日、喧嘩相手を徹底的に痛めつけたことが原因で香港にいられなくなり、5月17日に単身サンフランシスコへ戻ることになるのです。

アメリカに渡って3年後、ブルースは『基本中国拳法』(原題 CHINESE GUNG FU - The Philosophical Art of SELF-DEFENSE)を著して、詠春拳の基本技術を紹介しています。ブルース自身はいずれ、もっと詳細な『ダオ・オブ・チャイニーズ・グンフー』を出版するつもりでいましたが、その後の彼の人生の激変および早過ぎる死によって、その企画はついに実現しませんでした。
彼は詠春拳のほかにも、17歳の時には少林拳の第一人者といわれた王雲展<ワン・ユンチャイ>に入門したり、邵漢生<シウ・ホウサン>について節拳や功力拳を学ぶなどいろいろな拳法を研究し、自らもジークンドーを創始しています。それにもかかわらず、結果として『基本中国拳法』がブルース自身の手になる最初で最後のグンフー技術書となったことに、彼と詠春拳の因縁の深さを感じずにはいられません。

【参考文献】
川村祐三著『詠春拳入門 [増補改訂版]』BABジャパン、1998年
ブルース・リー著、松宮康生訳『基本中国拳法』フォレスト出版、1998年
松宮康生著『ブルース・リー最後の真実』ゴマブックス、2008年


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