人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

2003年 ヴェローナのアレーナでトゥーランドットのカラフ・デビュー / Jose Cura / Turandot in Verona

2016-08-21 | オペラの舞台ートゥーランドット



プッチーニの最後のオペラ、トゥーランドットでカラフが歌うアリア「誰も寝てはならぬ」は、TVCMやフィギュアスケートなどでもよく使われ、有名な曲です。ホセ・クーラも、コンサートのアンコールでほとんど必ず歌っているように、テノールのアリアのなかでも、最も人気がある曲の1つではないでしょうか。

クーラがトゥーランドットのカラフ役にデビューしたのは、意外に遅く、2003年、イタリアの野外劇場ヴェローナのアレーナでした。ヴェローナのアリーナは、夏のオペラで大変に有名です。クーラは2000年代前半に何回も出演しています。巨大な石造りの野外会場に、巨大な迫力の舞台です。

このデビュー以来、クーラは、現在もこの役を歌い続けています。今年2016年の9月には、ベルギーのリエージュにあるワロン王立歌劇場で、クーラ自身が演出・舞台デザインなどを行い、カラフでも出演するプロダクションが予定されています。ワロン王立歌劇場の2016/17シーズンのオープニングを飾る舞台となります。今後、詳しい情報が入りましたら、またまとめて投稿したいと思います。

今回は、2003年カラフデビューのヴェローナの舞台について、その時のクーラのインタビューの言葉や、舞台の画像、そしていくつかの動画を紹介したいと思います。

*以下の投稿でも、クーラのトゥーランドットの解釈を詳しく紹介しています。2006年にチューリッヒ歌劇場の出演の際のインタビューや、動画を掲載しています。とても興味深く、ユニークです。ぜひこちらもご覧ください。
 → 「ホセ・クーラ トゥーランドットの解釈」

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――2003年のインタビューより
●クーラの声にとって、困難なカラフ

バリトンに似た私のような深い声にとって、カラフは困難な役柄だ。
私の声の重心は、少しトーンが深い。カラフの声は非常に甲高いために、彼の解釈には、工夫が必要だった。






●アレーナの演技や声楽上の制約

音響の面では、アレーナより悪い劇場もあるほどで、特に問題はない。
唯一の問題は、テノールの伝統的スタイルとは違う私の演技スタイルには、適していないことだ。
私は、動きや身振りを必要最低限にしている。しかしアレーナでは、演技の全てが大規模で、ジェスチャーや動きが拡大される。
またボーカル・ダイナミクスは、全てが2、3度上昇し、プッチーニのオーケストラの密度によって、オペラ劇場におけるピアノは、アレーナでメゾフォルテになる。






●カラフのキャラクターは、すべて自分の反対

カラフのキャラクターは、私が人生で信じていることの、そのすべてで反対であり、彼に自分を投入することはない。
私は、私と私の家族の犠牲のおかげで、現在の場所に到達した。私は、誰も傷つけ利用したことはない。




●トゥーランドットは寓話

カラフは権力を求める野心家だ。欲しいものを手にするために、躊躇なく、大切な人の命を危険にさらす。
トゥーランドットは寓話であり、カラフによって、人間の悲惨さとエゴイズムが、道徳的に実証される。

リューの死にあっても、彼は止まらない。彼は自分が探し求めるものを得るまで、最後まで、トライし続ける。それは権力だ。
カラフは、「愛している」とトゥーランドットに一度も言わない。それは、彼女の権力のみに興味があるからだ。








●素晴らしい音楽、しかしメッセージは・・

カラフと同様に、ヴェルディのオペラ、アイーダのラダメスも、アムネリスの権力を見ている。
アイーダにおいて、その最後に、ラダメスは罪を贖う。しかしカラフは違う。
トゥーランドットのオペラの終りは、非常に感情的な音楽を伴っている。にもかかわらず、ひどいメッセージを内包している。
それは、権力志向が最終的に成功するというものだ。

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2003年ヴェローナ・アレーナでのプッチーニのトゥーランドットから、「泣くなリュー」の動画をYouTubeから。
トゥーランドットの感動的なシーンの1つ、リューに語りかけるカラフ。
Jose Cura 2003 "Non piangere, Liù" Turandot


2003年ヴェローナのトゥーランドットから、ホセ・クーラの歌うカラフ「誰も寝てはならぬ」を。TouTubeより。
鳥かごみたいな枠のなかで歌う、カラフ。
Jose Cura 2003 "Nessun dorma" Turandot


2003年ヴェローナのトゥーランドット、「死のプリンセスよ! 」からラストまで。
Jose Cura 2003 " Principessa di morte!" Turandot


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カラフのキャラクターには共感できない、自分とはすべて反対、と断言するクーラですが、プッチーニの音楽的な到達に対しては高い評価と敬意をもち、「ヴォーカリストの地平を開く作品」と述べています。そういうことから、現在に至るまで出演を続けているのだと思います。

こうした解釈、長年の舞台経験をふまえて、今年の9月にクーラが演出する作品は、どのようなものになるのか、とても楽しみです。フェイスブックでのクーラのコメントによると、プッチーニが亡くなり、その後、弟子が引き継いだ部分については、カットすることになりそうだという話です。そうすると、ハッピーエンドではなく、リューの死で終り、よりいっそう、カラフの冷酷さ、権力志向をきわだたせて、終る・・ということになるのでしょうか?

ワロン王立歌劇場のトゥーランドットは、放映されるという情報もあります。ますます、楽しみです。


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