人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

ホセ・クーラ トゥーランドットの解釈 Puccini / Turandot Jose Cura

2016-03-18 | オペラ・音楽の解釈

/

ホセ・クーラは、2003年のロールデビュー以来、プッチーニのトゥーランドットのカラフ役に継続的に出演しています。
今年2016年には、ベルギー・リエージュのワロニー王立劇場で、ついにトゥーランドットを演出することになりました。カラフで出演もするようです。
クーラのHPによると、9/23、25、27、29、10/1、4の予定です。
“トゥーランドットはプッチーニの自伝的作品”“カラフは冷酷で権力志向”とかねてから語ってきたクーラのトゥーランドット解釈がどんな舞台になるのか、たいへん興味深いです。 

 → クーラ演出を紹介した記事まとめ 演出―トゥーランドット  クーラの演出構想メモやインタビュー、レビューなど記事5本

2006年にチューリヒ歌劇場で初演され、繰り返し再演される人気のプロダクションに主演した際の、写真、動画、そしてインタビューから、クーラのトゥーランドットの解釈に関わる部分を紹介します。



●物語の核心は、女性の世界と男性の世界との対決
トゥーランドットは愛の物語ではない。貪欲な人々が、権力と利権を奪取しようとする話だ。
カラフは彼自身の王国を失い、別の王国を世界中で探して旅していた。彼は望むものを手に入れるために愛する人を危険にさらす。
プッチーニのオペラ、トゥーランドットの核心は、トゥーランドットの世界(女性の世界)とカラフの世界(男性の)との間の対決だ。それは偉大な謎。フロイトの理論。カラフのエゴイズムが王国の征服に乗り出す。



●カラフの仮面の裏は
カラフのキャラクターはロマンチックではない。王女トゥーランドットはカラフを愛するが、カラフは彼女の王国、金と権力のために彼女を望んでいる。彼は表面的には魅力的だが、仮面の裏は、愚かでうんざりさせられる。

カラフは冷酷な男であり、冷血、権力志向。リューの献身と犠牲、父のために全く配慮をもたない愚かさだ。目にした女性の性的魅力にひかれるが、しかし彼女のために自らの愛情の感情をまったく発展させていない。

私自身は、心理的に深い役柄がすきだ。しかしカラフは、深みのない非常に一面的な男。私が何年もカラフを避けてきた理由でもある。
カラフの中には、蝶々夫人のピンカートンを見出すことができる。小児性愛者であり、15歳の少女を誘惑して痛みを感じない男だ。



●トゥーランドットの特殊性
トゥーランドットは非常にトリッキーなオペラだ。「誰も寝てはならぬ」その1曲だけで有名になっている。しかしオペラは本当に非常に複雑だ。女性と男性の間の紛争や対立の意味で、非常にフロイト的だ。



●プッチーニの後を引き継いだアルファーノの評価
プッチーニが途中で死に、その後を引き継いだアルファーノ作曲の部分について、「アルファーノはたわごとの仕事をしてくれた」 と言うのは間違っている。それは公正でない。
彼はプッチーニではない。彼ができることを行い、師に奉仕しようと謙虚に、最善のことを行った。



●最後のデュエットの意味
演じる際、特に最後のデュエットで、より身体性を示す。最後のデュエットは、まさにフロイト的瞬間だ。心理的にではなく、性的に彼に降伏する。もちろんステージ上でセックスはできないが、私たちは想像しようとする。




******************************************************************************************************************

クーラのカラフ解釈がよくわかる演出、演技が、チューリヒのプロダクションです。
非常に残念ですがクーラのカラフには正規の映像がありません。Youtubeからいくつかの動画を紹介します。

クーラが「冷酷な男、権力志向」「同じ男と思われたくない」というカラフの「 泣くなリュー」
Jose Cura "Non piangere, Liù" Turandot


一刀両断にカラフを切り捨てるクーラ、やはり少し傲慢に、しかし非常にセクシーに魅力的に演じています。
「誰も寝てはならぬ」06年チューリヒの動画
Jose Cura "Nessun dorma"


問題のラストシーンの動画。ぜひご覧になってください。クーラの解釈、「身体性を示す」演技が見どころ。そして、ユニークで、あっと驚かせるラストの演出も必見です。
Jose cura "Principessa di morte!" Turandot (Act3 amazing last!)


チューリヒのプロダクションには何度も出演していますが、ますます過激になる二重唱のシーン‥。2011年、トゥーランドットはマルティナセラフィン。
Turandot - Principessa di morte, principessa di gelo... Finale


●クーラ語録
「オペラ、トゥーランドットが歌い続けられているのは、音楽が素晴らしいからであり、美しく、そしてそれを歌うことが、本当の喜びを与えるからだ。」
「プッチーニのオペラ、トゥーランドットは、ボーカリストに新しい地平を開く作品だ。」

******************************************************************************************************************

最後におまけ。最近のクーラのカラフの動画を。2015年5月のドイツ、ボン歌劇場の舞台から、「泣くなリュー」を。まだまだパワフルで、迫力あるカラフです。
José Cura - Turandot - finale 1 atto


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 3人のオテロ クーラ、ボー... | トップ | 2016年 ザルツブルクでのイ... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。