別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

碁石から

2005-11-06 | アートな時間

  日曜美術館 「天平人動物とあそぶ・第57回正倉院展」 をみる。 
 美しい碁石を辿った日のことが思い出された。     

 2004年2月10日は
 春霞流るるなへに青柳の枝くひ持ちて鶯鳴くも 巻十・1821 
を学んだ。    
 春霞が流れるようにたなびく。 ちょうどその折、 青柳の枝を口にくわえて鶯が鳴いている。 (清川妙の万葉集)
正倉院御物の、紅や紺の碁石に彫られた花喰鳥の模様が思い出されます、と結ばれた。   

 以前目にしたかも知れないが、さっそく正倉院宝物写真のなかに花喰鳥を探した。 北倉25より 合子(ごうす・碁石の容器)に納められていたという、色鮮やかな愛らしい碁石を見たのだった。 
  花喰鳥のモデルは八頭(ヤツガシラ)。 冠をつけた鳥のすがたも、やわらかな線でふっくら浮き上がっている。 紅・紺・黒・白の碁子(きし)、合わせて516枚が伝わる。 小さなものにこめられる遊びごころ。 精緻なしごと。 配置も表情も少しずつちがう、手しごとの温かさ。   

  我が背子と二人見ませばいくばくかこの降る雪の嬉しからまし 巻八・1658

  あなたとふたりで見たとしたなら、この降る雪も…  と詠んだ光明皇后。 聖武天皇とむつまじく遊ぶところも浮かんでくる。 わくわく学びながら、 こちらまでうれしくなる。 
  その日、コピーの一部をノートに貼り、のこりの碁石は丸くきりぬいて、手紙の封緘シールとして使った。  枝くひ持ちて…   受けとる方の微笑みも想像して。
  色もデザインもそっくり釦やイヤリングにしたいと思った。 いつまでも天平の色や風を感じていたい。

 


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。