スノーマン見聞録

ジャンルも内容も気の向くまま~“素浪人”スノーマンの見聞録

賢治の声聞

2011年09月19日 | 雑感
何年か前に

東北を旅したことがある。

岩手の宮沢賢治記念館にも足をのばした。
記念館は大きな敷地(公園のような)を有し、結構な人が集まってきていた。
賢治が他界してから、そうとう月日が経っており、現在でも変わらぬ人気があることに
驚いたほどである。
館内では、賢治の童話映画が日々上映されているとのこと。
当日は『注文の多い料理店』が上映されていたので、どんなものかと入館した。


注文の多い料理店は、日常人間は動物の肉を食し生きているが、この童話はその逆。
動物に人間が食される怖さを通し、人間の業と思い上がりを厳しい視点で表現していた。

賢治の童話はどれも凄い。強烈である。そしてやさしさも。

なめとこ山の熊
もしかり。熊うちの小十郎が熊を殺すことで一家を養う。殺すほうの小十郎も
殺されるほうの熊も、、。
小十郎は、母熊と子熊が月光を浴びて会話を交わしている和やかな光景を見て、鉄砲を撃たなかった場面など、、。
この作品の最後の場面では、人間が熊の霊を天上に送り還す熊祭りの
代わりに、熊たちが小十郎の霊を天上に還す儀式の場面で終わる。
小十郎の「熊ども、ゆるせよ」という最後の言葉。
なんと切ない苦しみと悲しさ!

賢治作品は凄いとしかいいようがありません。


賢治には最愛なるトシという名の妹がおりました。
その妹は若くして病に倒れ、他界してしましました。
春と修羅という詩があります。賢治の唯一刊行された詩集です。
その中に、『永訣の朝』というトシを悼む詩があります。

トシが他界する日の朝、トシは賢治に“あめゆじゅとてちてけんじゃ”と懇願します。
あめゆじゅとは雨雪のこと。とてちてけんじゃはお国なまりで、
とってきてという意味です。

トシは、賢治がとってきてくれた雨雪を口に含み、死んでゆくのです。


・・・・・
ああとし子

死ぬといふいまごろになって

わたくしをいっしゃうあかるくするために

こんなさっぱりした雪のひとわんを

おまへはわたくしにたのんだのだ


・・・・・
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)


祈りの詩として心に響きます。


賢治は、仏教特に法華経に心酔しておりました。
法華経の真髄・実践を、童話・詩を通して訴えかけているのです。

生と死をこれほどまでに厳しく見つめた稀有の人でした。
 (賢治の世界は、素粒子・岩石・地学・農業・植物・動物・宇宙と幅広い)

“正しく強く生きるとは、銀河系を自らの中に意識して、これに応じていくことである”
                                       『農民芸術概論綱要』

真っ暗闇の夜空・銀河系宇宙を
『よだかの星』のよだかのように、凛として進んで行きたいものですね。

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