スノーマン見聞録

ジャンルも内容も気の向くまま~“素浪人”スノーマンの見聞録

ザラスシュトラ

2013年06月14日 | 雑感
当ブログで《悪魔のはなし》を載せたことがありますが、実は善悪二元論を説いている《ゾロアスター教》のことがきっかけでした。

ゾロアスター教は、紀元前12~9世紀・古代アーリア人・神官ザラスシュトラにより生れた。この世は善と悪との闘争の舞台。世界の終末には救世主が現れ、必ずや善が悪に勝利するといった呪術や儀式、聖火を操る民族宗教。

ザラスシュトラは六大天使と六大悪魔を考案し、多神教の神々の神格整理という宗教改革を成した古代アーリアの聖人といわれる。

ちなみに、ゾロアスターとはザラスシュトラをギリシャ読みしたもの。

この中央アジアに出現したアーリア人の民族宗教がその後の世界に及ぼした影響は図り知れないという。

列挙してみますとこうなります、、、。

● 独自のものと思われていたユダヤ・キリスト教の終末論やメシア(救世主)思想と極似している。
(善悪二元論ゾロアスター教と一元論・三位一体のキリスト教とは、互いに争っていたのですが)

● イラン高原・ペルシャ帝国時代にゾロアスター教が国教となる。その後イスラムにより征服され衰退したが、
  いたるところにその影響を与えている。
  アーリア人が悪を追い払う聖なる色彩【緑色】~イスラムモスク宗教建造物に緑色を多く使用しているなど。

● 西北インド域にも進出し(亡命説もあり)、階級制度の厳格なバラモンを形成し・ヒンズー教に発展していった。
  アーリア人の社会は、神官階級・戦士階級・庶民階級の三階級に歴然と仕切られていたという。

● アーリア人はヨーロッパに移動、ゲルマン・北欧民族に発展していったと言われる。

● アーリア人の未来仰信仰や太陽信仰が、日本における弥勒菩薩信仰・阿弥陀仏信仰に影響を及ぼす。

● ペルシャ風娯楽チャトラング~シャー王(王)戦車(飛車)・象(角行)・馬(桂馬)等を用いたゲームが娯楽として
行われていた。~ヨーロッパに伝わるチェスの原型  ~アジアに伝わる将棋の原型 とも言われる。

● ゾロアスター教神官のことをマギと呼ぶ。異様な幻術・奇術の使い手としての【マジック】の語源でもある。

● ペルシャ・ササン朝でのネーウ・アンダフシールという遊びは、子供の時遊んだ日本独自と思われたスゴロクの原型。

● ゾロアスター先祖霊信仰儀式が日本に伝わる大乗仏教・盂蘭盆会(うらぼんえ)儀式に極似しているという。

● チベットやインド一部などに今も残る秘境での死体処理《鳥葬》(ちょうそう)。
  拝火教といわれるゾロアスター教~最も聖なる火で不浄な死体を焼くことは冒涜とされた為ともいわれる。

● ゾロアスター教を母体とするミトラス教(ヘレニズム・ローマ世界で紀元1~4世紀に絶大な支持を集めた)から拝借した
祭儀に『クリスマス』がある。~本来は冬至における太陽神ミトラス復活のための大祭であった。


等々挙げたらきりがない。

それから特に注目すべきは、、、。

ご存じのこととは思いますが、あのヒットラー率いるナチス・ドイツが冷徹にもゲルマン民族至上主義(アーリア民族)を推し進め、親衛隊の機関としてアーネルエンベ(アーリア民族遺産研究協会)を設立するなど、新たな神官階級・騎士階級を作り出し、その裏返しとして劣等民族を組織的に虐殺するといった、異常な歴史的悲劇につながったことでも知られる。

驚いたことに、ナチ党のあの【卍マーク】はアーリア人伝統のハーケンクロイツをシンボルとしているのである。

19世紀になってイラン高原のアーリア人・インド大陸のアーリア人・ヨーロッパのゲルマン民族(アーリア人)がインド・ヨーロッパ語族に属することが、当時の研究で判明することにより、政治的民族主義が台頭。ザラスシュトラはアーリア民族の英雄と讃えられるようになっていく。

同時に古代アーリア民族の英雄としての『ザラスシュトラ』研究も盛んに行われた。

哲学者ニーチェの著書『ツァラトゥストラはかく語りき』のツァラトゥストラとはザラスシュトラのドイツ語読み。
(ニーチェはヒットラーの思想形成に多大な影響を与えたとも言われている)

ニーチェの著したツァラトゥストラの権力への意思、超人思想をゲルマン民族が世界を征服する指針としたのか、、。


ヨーロッパには600数もの古代民族がひしめき合っていたといわれている。

なにも統一しなくたって、多神教で多民族でよかったのかもしれませんね。

あのプラトン曰く、 『正義とは各人が自分のことを為し、余計な手出しをしないことである』と。



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