奄美剣星

ノート

隻眼の兎(第22話/ 終章1)

2009-03-26 06:58:08 | 伯爵令嬢シナモン

Ⅵ.終章 スーパー・クリスタル(その1)

 ──私は銀河帝国選挙侯エンキドウ。〈月の王〉ネルガル派の軍団はわれらの四倍、圧倒的に不利な状況だ。私と盟友ギルガメッシュは、死中に活をみいだすべく敵中突破をはかった。/『選帝侯エンキドウ回顧録』より

 銀河帝国における軍団は統合軍の形態をとっているため、一個軍団は一個艦隊と同義である。火星の衛星フォボスほどの大きさである鉄鍋のような形をした超弩級戦艦が旗艦で、これを半分にした大きさの弩級戦艦、さらに一回り小さくした巡洋戦艦、航空母艦、駆逐艦、小型艇となり、このほか揚陸艦や補給艦・輸送船が続き、銀河系の渦のような布陣となっている。それが敵側四個、味方側一個存在し、月と地球の間でいまにも激突しようとしているのだった。
 ネルガル派四個軍団艦隊は、主力にして近衛軍団艦隊である第一軍団艦隊を中心に、前衛に第二軍団艦隊、左翼に第三軍団艦隊、右翼に第四軍団艦隊が布陣した。ギルガメッシュ派第五軍団艦隊は、このうちもっとも月側に寄った敵右翼第三軍団艦隊を食い破って、後方に抜ける策をとった。
 ──斉射!
 全戦闘艦が砲門を開けた。閃光とともに、双方に多数の艦船が被弾した。次に、大鼠(ねずみ)のような形をした小型艇にまたがったライオンほどの大きさをした〈騎士猫〉多数が現れ、手にした大鉞(まさかり)を、ぶるんぶるん、と振り回して敵艦の分厚い装甲を破って内部へ突入していく。
 その戦いの最中、サングラス猫を肩に乗せた巨神ダイダラムは、月面に開いたクレーターの一つに降りていった。その後を、環状に手をつないだ白兎の群れ〈月の王〉ネルガルが続く。ネルガルが叫んだ。
「開け、〈ウトナピシュティムの扉〉よ。〈鍵〉はもってきた。わが祖先、銀河帝国始皇帝ウトナピシュティムよ。〈スーパー・クリスタル〉をわが手に──」
 巨神ダイダラムは両脚を失い、手にしている棒状の武器メイスも半分になっている。そのダイダラムのメイスがクレーターの底に突き刺さった。途端、クレーターの底が開いて、中へ吸い込まれていく……。

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隻眼の兎(第21話)

2009-03-25 05:15:05 | 伯爵令嬢シナモン

Ⅴ〈月の王〉(その7)
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 ──走りながら、「間に合えよ」と叫んで、眼帯を右眼からずらし閉じていた片目を開いた。〈兎〉族の特徴なのだろう、ギルにせよネルガルにせよ右眼にはある種の魔力があるようだ。ギルが片目を見開いた途端、赤い〈糸〉から、ぼっ、と青い炎が噴きあがって、飛翔していく巨神ダイダラムを追っていった。フンババは、
「くっ、くるな!」
 とわめき散らした。青い炎は〈兎〉ギルが、火口を囲んで作った結界である。青い炎は榛名富士が吹き上げるオレンジ色の噴煙を包み込み、さらにダイダラムの脚にたどり着いた。ダイダラムの脚が、ぱらぱら、とクッキーが砕けるように崩れていく。
 白兎の群れが環状に列をなした〈月の王〉ネルガルもまた青い炎に包まれていた。しかし、そいつは砕けはしなかった。白兎たちは環状列のまま一斉に手をつなぐと、ふわっ、と宙に舞い上がり結界の青い炎をさえぎった。これも一種の結界で、いわば盾のようなものだろう。巨神ダイダラムは両脚を失ってはいるが飛翔は続いている。こめかみをハンマーで敲いたような衝撃を伴った〈月の王〉ネルガルの高笑いがきこえた。
「ギルガメッシュ、おまえの負けだ。おまえの第五軍団は、わが麾下(きか)軍団が壊滅させるのは時間の問題。月に閉じられた〈ウトナピシュティムの扉〉を開くのも及公(だいこう)だ」
 及公 というのは、朕(ちん)とか余とか高貴な人がつかう自称だ。〈兎〉のギルがつかう自称である寡人(かじん)は謙遜したいいまわしだ。それに引き替えネルガルのいう及公というのは、「おおやけに(影響)を及ぼす(人)」という意味があり、「俺様」みたいないい草になる。嫌な奴だ。それにしても〈ウトナピシュティムの扉〉とは何なのだろう?
 僕はまだ杉の大木になってしまったおじいさんにすがって泣いていた。僕に代わって疑問を口にしたのは、おじいさんの友人の〈ちょんまげ〉さんだった。問いに答えたのは、ちょっとだけお喋りな〈猫〉のエンだった。
「〈ウトナピシュティムの扉〉とは、銀河帝国始皇帝の霊廟の扉だ。始皇帝が宇宙を統一して銀河帝国を築き上げた秘密は〈スーパー・クリスタル〉にある。〈スーパー・クリスタル〉は強大なエネルギー体とも超巨大結界ともいわれていて、始皇帝は銀河七王国連合艦隊を超巨大結界に吸い込ませ撃破し宇宙のすべてを手に入れたのだという」 
 そういい終えたとき僕たちのところにやってきた〈兎〉のギルが、
「友よ、さあ、行こう」
 と〈猫〉のエンにいった。エンはうなづくとサーベルを抜いて宙に8の字の放物線を描き穴を開けたのだった。その間、〈兎〉のギルは泣きじゃくる僕を抱きしめながら、マントの内から青く光る〈クリスタル〉をとりざし、おじいさんの木の幹に当てた。ギルの〈クリスタル〉から、しずくのような青い光が落ちていく。
 〈猫〉のエンはいった。
「なっ、なにをなさるのですか、殿下? そんなことをなされば、あなた様の寿命が半分になってしまう──」
「いいんだ」
 〈兎〉のギルは、〈ちょんまげ〉さんと〈仙人〉さんに向かって、
「最後の戦いになる。宗司が後を追ってきたら困る。押さえていて欲しい──宗司、今度こそさよならだ」
 といった。そして8の字の穴に、エンが飛び込み、続いてギルが飛び込んだ。僕は反射的にその後を追いかけようとしたが、〈ちょんまげ〉さんたちに押さえられた。
(ギル君──、エン君──)
 〈猫〉のエンがつくった結界はみるみる閉じていく。 

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隻眼の兎(第20話)

2009-03-24 06:28:18 | 伯爵令嬢シナモン

 ブログ村ランキングを発表のベースとする連載自作小説『隻眼の兎』もついに第20話となりました。

 ここだけの話し、第3話のあたりで執筆していたというのにINポイント0点が2日続き、すっかり落ち込んでしまい、(第10話で終わらせてやる──)と、ダイダラムなる巨神を登場させ、強引にクライマックスへもっていきました。すると意外なことに、読んでくださる方がまた増えだしましたのです。元気を得た私は、「人類最強戦士の休日」のエピソードを加えて起承転結の承としました。「月の王」は転になります。
 面白いもので、執筆を休むとその日あるいは翌日のポイントは0となり、書き出すとまた着実にポイントが頂けるという如実な結果は、皆様の激励と考えております。昨日は自宅引っ越し作業の疲れで執筆休載しましたところ見事IN・OUTともに0点でした。
 思わぬ刺客は、立ち上げて1週間たらずの娘ブログ『伯爵令嬢シナモン』の存在。昨日ついに親ブログ『狼皮のスイーツマン』のランキングを抜いてしまいました。(……シナモン、君ねえ、パパうえはとっても複雑だよ) それでは──。/著者より
.
Ⅴ〈月の王〉(その5)
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 〈ちょんまげ〉さんたちのバズーガ砲から飛び出したロケットが火口縁の岩に、どすっ、と突き刺さり、コードの先についた起爆スイッチをおじいさんが勢いをつけて、ぐいっ、と押した──起爆、どんっ、と岩が砕け、環状の列をなした銅鑼を敲く白兎の群れである〈月の王〉ネルガルの一角は崩された。
 おじいさんたちが、親指をだして「グウッ」とやって笑った。サングラス〈猫〉フンババは、
「おっ、おまえら……何をしたか判っているのか──」
 と歯ぎしりして悔しがった。〈月の王〉である兎たちは動きを止めて一斉におじいさんのほうを向いた。兎たちは皆片目をつぶっている。それの眼が一斉に開かれ、おじいさんの視線と重なった。その刹那──。
「おじいさん!」
 僕がそういい終わりかけたとき、おじいさんに異変が起きた。〈ちょんまげ〉さんや〈仙人〉さんも唖然としだした。おじいさんの脚が樹の根となって地にへばりつき、胴が幹、腕が枝、小枝になった指先からは葉が開きだし、ついに杉の大木になってしまった。
(そおおじいいい……っ)
 僕を呼ぶ最後のおじいさんの声だった。木になってしまったおじいさんの幹にしがみついて僕は泣くしかなかった。
 〈月の王〉ネルガルである白兎たちの視線はおじいさんから月に向けられた。明けの刻間近となった空は藍(あい)色となり、月は満ちて丸く、そこに映し出された兎のシルエットがゆらめいた。榛名富士は、先ほどとは桁違いの大きな振動を始めだしたのだった。
 ついに〈猫〉のエンの防御陣を突破した巨神ダイダラムは、火口の縁に達し、白兎の列の欠けたところに立ったのだった。そして、サングラス〈猫〉フンババを肩に乗せたまま、火口へ飛び込んでいった。 
「ギルガメッシュ殿下、エンキドウ、私の勝ちだ」
 火口の底に落ちきる前に、どんっ、と炎を交えたガス噴射が起こり、巨神ダイダラムは、フンババと月へ打ち上げられていったのだった。月では裏側から正面に向かって、きらきら、といくつも輝くものがあった。〈猫〉のエンが、肩で息をしながらこっちへやってきたので、〈ちょんまげ〉さんたちがエンにきいた。
「なんだい、ありゃ?」
「ギルガメッシュ殿下と、吾輩を乗せてきた第五軍団だ。地球側を刺激しないように月の裏に待たせていたのだが、ついにネルガル派四個軍団の艦隊に追いつかれたようだ。始めたな──」
「始めた。戦闘か? 勝てるのかい?」
「全力を尽くすのみだ」 
 火口周辺を猛スピードで走っていた〈兎〉のギルは──。

 
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隻眼の兎(第19話)

2009-03-22 16:26:41 | 伯爵令嬢シナモン

Ⅴ 〈月の王〉(その4)

 ──巨神ダイダラムを〈猫〉のエンが引きつけている間に、猛スピードでロープウエイのホームを回って駆け、今度は〈月の王〉ネルガルの群れが環状に列をなす火口の縁のさらに外側を大きくさらに回わりこんだ。サングラス〈猫〉のフンババは、
「殿下、〈結界〉をつくって、巨神ダイダラムが天へ飛翔するのを阻止しようというのでしょうが、その手は食いませんよ」
 というと、腕から体毛を一つまみむしって、ふっ、と息を吹きかけ宙へ飛ばした。すると榛名神社と同じようにまた、体毛が十羽のサングラス〈猫〉となって、〈兎〉のギルに襲いかかっていった。これを見た〈猫〉のエンも慌てて同じようにして毛をむしり、十羽の分身を作ってフンババの分身を追わせたのだった。
 〈猫〉のエンの分身が、サングラス〈猫〉フンババと戦っている間に、エン自身も〈兎〉のギルに向かって全力で走り盾となった。〈猫〉のエンは例の如くサーベルで宙に穴を開け闘牛士のように、オレイ! とかけ声をあげて器用に敵の分身を誘い込み、罠である穴の中に落としていった。
  ごごごごご……と火山が地鳴りした。たぶん、〈月の王〉ネルガルの仕業だろう。〈猫〉のエン君がいうように、火山の力を借りて巨神ダイダラムを打ち上げようというのだろう。僕のわきに立っていたおじいさんたちが顔を見合わせた。〈ちょんまげ〉をしたおじいさんの仲間の一人がいった。
「噴火するのかねえ? こないだ噴火したのはいつだったっけ?」
 〈仙人〉のように肩まで長く伸ばした白髪のもう一人が答えた。
「うーむ、一五〇〇年前くらいだったかな? 軽石が二メートルほど積もってな、北麓の渋川市あたりが壊滅したようだ」
「そりゃーえらいことじゃ。食い止めんとなあー」
 おじいさんたちはまるでコタツで茶飲み話でもしているかのような口調である。渋川市が壊滅するほどの火山爆発ならば、榛名湖周辺の街だってただじゃ住まないはずだ。沙羅のことが心配になった僕はちょっといらついて、
「おじいさん、火山爆発を止める、なんか方法はないの?」
 おじいさんは、パイプ煙草をゆっくりふかし、
「数珠つなぎになって火口を回っている銅鑼(どら)を鳴らして踊っている兎ども、要は、あいつらの規則的な動きを乱してしまえばよいのだろう──」
「そうじゃあのーっ、しげさんのいう通りじゃあ」
 おじいさんの二人の仲間である〈ちょんまげ〉さんと〈仙人〉さんは、また、例の自家製バズーガー砲の装填(そうてん)を始めた。 
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隻眼の兎(第18話)

2009-03-20 21:18:00 | 伯爵令嬢シナモン

Ⅴ 〈月の王〉(その3)

 沙羅の幻はしばらく僕をくすぐったのだが、無駄と判るとすぐに消え次、次に来たのは両親の声だった。
「宗司、おまえ、そんなところで危ないじゃないか。こっちへ来い。一緒に避難しよう」
「そうよ、宗司。さあ、お母さんたちのところへきなさい」
 僕は答えなかった。幻たちは腕やら肩を引っ張った。この場は無視するに限る。サングラス〈猫〉フンババの手口はもう読めたような気がして、少し〈兎〉のギル君について考える余裕ができた。
 銀河帝国──TVアニメやら漫画にありがちな設定、〈猫〉のエン君のいうことは本当なのだろうか? いや、〈兎〉のギル君や〈猫〉のエン君、さらにまた巨神ダイダラムの存在そのものが常識の枠を超えてしまっている。ならばいっそ銀河帝国があると仮定しよう。
〈猫〉のエン君が、〈兎〉のギル君が正統な皇帝継承者だとして、〈月の王〉ネルガルは反乱者だといっている。果たしてギル君たちは正義の味方なのだろうか? 僕やおじいさんを権力闘争に巻き込んで利用しているだけなのではなかろうか? だいたい、モスバーガーに突然現れたこと自体が不自然だ。
 いや待て、ネルガル派であるサングラス〈猫〉フンババは、〈兎〉のギル君ばかりか僕らにまで牙をむけてきたではないのか? 目をつぶっているとやたらに時間が長く感じられ、どうどう巡りで、そんなことを悶々(もんもん)と考えた。さらにこんなことも考えた。
 〈猫〉のエン君がいっていた〈スーパー・クリスタル〉という存在は何なのだろう?
圧倒的に強いはずのネルガル派をも覆してしまう存在〈スーパー・クリスタル〉。第一にそんなに強いのならば、榛名湖に封印されていた巨神ダイダラムをあえて召喚させる必要性などあるまい。いったいどういう脈絡があるというのだろう?
 〈兎〉のギル君と出会ったときにいった、「ほおっ、〈クリスタル〉を持っているのか?」といった僕自身の中にある〈クリスタル〉とは何なのだろうか? 一夜に起きた一連の不思議な出来事のすべては、〈クリスタル〉という言葉がキーワードになって、すべてをリンクさせているのではなかろうか?
 僕の中で一つの解答が出来上がりつつあったとき、おじいさんの声がした。
「インドネシア独立革命義勇軍OB会参上──宗司、禅問答か。よいことじゃ、悩めよ青少年、思考することは明日への糧となる」
 僕は、ぎゅっ、と赤い〈糸〉を握って、注意深く目を開けた。
「偉い、宗司、心眼を会得したか!」
 そう声をかけたのは本物のおじいさんと仲間の二人だった。目を開けた瞬間、僕の腕をつかんで盛んに引っ張っていた両親の幻は消えた。少し上の火山の縁では〈月の王〉と呼ばれる無数の白兎が輪になって銅鑼を鳴らし、眼下のロープウェイではサングラス〈猫〉フンババを肩に載せた巨神ダイダラムが〈猫〉のエンを踏みつぶそうと暴れていた。〈兎〉のギルは──

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