海から少し離れた森へと、飛竜(ロドス)さんに乗せて来られたガウラと私、塩王子とネズミのハンスで降り立つ。陰気な森の入口付近には泥沼があり、銅色に近い土は少しふにゃふにゃの感触がする。
薄暗い森の中からは生き物の鳴き声が聴こえ、森と言うよりこれじゃあ熱帯地方のジャングルみたいだ。足元を這うグロテスクな蛇を見て、ガウラに慌ててよじ登った。
「ニャニャニャンッ!(こ、これはぁ・・・森にゃのか・・・)」
怖すぎて舌を噛んでしまった。
涙目でガウラを見上げると、彼に抱き上げられる。口の中に舌を入れられ甘い雰囲気に入りそうだ。
KY(空気読めない)ガウラの頭頂部を素早く叩いた塩王子が私達を睨み付けた後、牙を剥きだした蛇の頭に突き刺す。身動き取れない様に、いつの間にか全身を氷漬けされていた蛇は大剣の餌食となった。
「ニャ・・・(うぐ・・・)」
「死霊(デス)の森(フォレスト)と言う。この森には沢山の罠と魔物が居るからな。心して掛からないと、リオ以外の者は無傷で済まない場所だ」
軽々と剣を大きく一振りして、蛇の血を弾いて物騒な事を口にする。大して表情に出さない塩王子を眺めて、不思議に思って見ていると――
「俺は既にこの森を制覇したからな。先に進む事にする。お前達はハンスと共に来い」
じゃあなと言って、普段は目にする事の無い背中の黒い翼を大きく広げ、森の奥へと進んだ塩王子。残された私達四人は、木枯らしに吹かれ途方に暮れた。
「ニャアァァ(ハ、ハンスゥゥ・・・)」
あんの塩王子め・・・! 私とガウラの頭を叩く(※34話参照)は、こんな危険そうな森で放置するは・・・ドSだ。絶対ドS!! ディッセント国の、傲慢な王様と良い勝負してる。
灰色の飛竜(ロドス)さんに乗せてもらおうにも、森の中は狭いから一緒に入ってこれないみたいだ。私の頭に乗っかっている灰色ネズミに、なんとかしてと恨みがましい声を投げ掛けた。
「チュゥゥ(オイラは主のルビお嬢に、闇属性転移魔法(バレディス)で紫鉱城(ラドギール)まで転移して貰ったんだ。だから、屋敷に辿り着くにはこの森を通らないとオイラでも無理なんだよなーー・・・)」
「ばれでぃす?」
ガウラが、私の頭に乗っかってるハンスに問い掛けた。くるりと一回転して得意げに彼が喋る。
「チュウウウッ(魔族の世界で使える転移魔法(バレディス)は、闇属性の第二上級魔法だ。黒石があれば、魔族なら誰でも使えると思う。ファインシャートでは、光の精霊の恩恵が強すぎて黒石があっても転移魔法だけは使えないけどなっ)」
「ニャアアッ(そっかぁ・・・闇の精霊さんがいるんだねっ。じゃあ、光の精霊は・・・)」
「光源鳥・コンドルフォンよ♪」
耳に心地良い、女の人特有の高くて甘い声が聴こえた。
森の奥からゆっくりと姿を現した女の人は、良く見知ったあの人――
「ニャアアアッ(ルビリアナさんっ)」
「チュウウウッ(ルビお嬢――!)」
「ギャアアアッ(ルビリアナお嬢さま、お早う御座います)」
「おはよう、リオちゃん、ガウラ。ハンスとロドスも、案内御苦労サマッ」
先日着ていた服とは一転、真っ黒のボレロを羽織り、ラインストーンを散りばめた黒のワンピース姿のルビリアナさん。背中から真っ黒い翼を広げて宙に浮いている姿からは、黒衣の堕天使を連想させた。
「ニャア?(コンドルフォンって・・・?)」
“コンドルフォン”という、光の精霊の存在が気になって彼女に訊いてみた。するとルビリアナさんは目を伏せて、垂れ流した黒髪のひと束を指に巻き付ける。口から溜息を零す様は、内にある苛立ちを抑えるしぐさに見えた。
「光鳥の姿として擬(なぞら)えた、光の精霊・コンドルフォンを直接使役する使い手がファインシャート・・・ディッセントの国王だけだから、この目で確かめた事もないし分かんない。私は闇の精霊・・・グレイマイアと契約してるけど、使役するのはまだ無理だしぃー?」
頭がこんがらがってきた・・・。つまり、ルビリアナさんなら転移魔法は唱えられても、闇の精霊を使役する事は出来ないと言う事か。えっと、じゃあダークゲートは・・・? ファインシャートで使ってた・・・よ? 闇属性転移魔法(バレディス)とまた違うの? ややこしい話に目を回していると・・・
「フニャアアァァ(フワァァァ・・・もうだめ)」
「チュウゥゥゥ!!(ストップ! ルビお嬢、猫の嬢ちゃんが目を回してフラフラしてるぞっ)」
「ルビリアナッ、何とかしろ!」
「ん? あら大変。リオちゃんに何かあったら大変だものね♪」
漆黒の翼をはためかせ、私達の方へ近づくルビリアナさん。目を閉じて意識を集中してている。手にしたロッドの頭部分にある黒色の鉱石が、彼女の声に妖しく呼応した。
「黒石に宿りし深淵(しんえん)、言霊に乗せて転移の力を開放せよ、・・・――闇属性転移魔法(バレディス)――!」
ブンッ
黒くて丸い魔法陣が地面に現れ、足元からは黒い靄が溢れ出る。
目を開けたルビリアナさんの紫色の瞳はさらに力強く、長い黒髪が風により無造作にたなびいた。瞬間、何も見えなくなる――
****
「ニャアア――(ふへぇーー、な、なんだったのぉぉ・・・)」
自分の視界が黒に染められた途端、そこから別の景色を目にした。
ガウラから離れた場所に立ち竦み、生い茂った草を毛むくじゃらの前足で踏む感触に気づく。地面からフと視線を上げると、見た事の無い景色に絶句した。
「ニャ!」
「あれは・・・」
私の目に飛び込んで来たのは、沢山の木の枝が絡み合い“屋敷”を支えている光景だった。
一本の樹齢三千年位ありそうな大木と周りの木々や木の葉が支え、屋敷を空中で固定させている。
こんな高い位置にあるのなら、地上を這う生き物は屋敷に辿り着くのは困難じゃないのか。空を飛べない、木も登れない魔物限定だけど。
「ニャアア(デルモントは何でもアリだね・・・)」
「チュウウウッ(オイラの主は、魔族の王族に次いでの階級を持ってるんだ。下手な魔族より力を持ってるし、何よりここいらの魔物や樹木達はこぞってルビお嬢に媚びるんだ。お嬢の愛を受けたくてね。この世界じゃもう当たり前だよ!)」
「ニャ、ニャア~(へえ~~)」
そもそも自分の元居た世界と違うと知ってから、心構えは既に出来ていた。
でも紫鉱城(ラドギール)やマルルさんが造った砂の楼閣(ろうかく)に黒水晶の御神殿、目の前にある木の枝で支えられた屋敷を見たら、今までの目にした光景が可愛く思えるほどだ。
「ニャアアア・・・(太陽や星は無い、けどデルモントの方が進んでるってことはないよねぇ・・・?)」
「リオちゃん、私達魔族はデルモントで生き残るために、必死な想いで鉱石を使いこなせるまでになったのよ。ファインシャートへの行き来をクロウ家で管理するのに、闇の精霊・グレイマイアの信頼を得てまでね☆ ・・・ソルトス殿下は既に寛いでいらっしゃるし、部屋の中へ案内するわ。話はそれからよ」
普通に感じたままを喋ったら、ルビリアナさんが普通に反応してくれた。にこやかな表情だけど、目だけ笑ってない。彼女に感化されて、静かだった森が鬱蒼(うっそう)とざわめき出す。
ザワザワ・・・
「フギャァァッ(ヒッ、)」
「グルルウ・・・!」
「チュウウウウッ(ルビお嬢~~! オイラの事忘れてない? ねぇ!?)」
ルビリアナさんからの刺すような視線と、森からの敵意。
一瞬だけ、隠しきれない底冷えのする冷気を獣の本能で察知してしまった。
全身が総毛立つ。私を抱いてくれるガウラも感じ取ったのか、闘争心を体で示して唸りを上げていた。
ガウラの唸り声に正気を戻したのか、ルビリアナさんは表情を見せない様に私達の前を歩き出す。
屋敷の少し手前の所まで来ると、彼女は前方向に右手を上げて合図する。その仕草をした後、周りの木々が和らいだ雰囲気になり、木の枝がルビリアナさんの体をやんわりと包み込んだ。
「ニャニャニャッ(ほわぁ・・・!)」
「なっ、これは・・・!」
木々が意思を持つかの如く、ルビリアナさんの頬、肩や腕に甘えるように擦り寄っている。
「大丈夫よ、リオちゃん、ガウラ。大人しくこの子達に身を委ねるといいわ。ハンス、頼んだわよ♪」
「チュウウウッ(任せとけ、お嬢!!)」
ルビリアナさんの体に巻き付いた木の枝、足を支える枝と沢山の木々に持ち上げられた彼女は屋敷へと姿を消した。ハンスが見上げながらポツリと呟く。
「チュウウッ(ルビお嬢なら、黒翼で飛べば一瞬なのに・・・)」
「ニャア(はぁ・・・??)」
「チュウウウッ(猫の嬢ちゃんと、ガウラのおっさんが空を飛べないから、屋敷まで行けるようにやり方を教えたんだよっ。お嬢なりのサービスだ)」
枝にも驚いたけど、私の心臓は激しく動悸したままだ。
・・・もしかして、私は知らずにルビリアナさんを怒らすような事を言ったのかもしれない。とりあえず、ハンスの言う通りにして私を入れた三匹は、枝に乗っけてもらって招待に応じることになる。
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薄暗い森の中からは生き物の鳴き声が聴こえ、森と言うよりこれじゃあ熱帯地方のジャングルみたいだ。足元を這うグロテスクな蛇を見て、ガウラに慌ててよじ登った。
「ニャニャニャンッ!(こ、これはぁ・・・森にゃのか・・・)」
怖すぎて舌を噛んでしまった。
涙目でガウラを見上げると、彼に抱き上げられる。口の中に舌を入れられ甘い雰囲気に入りそうだ。
KY(空気読めない)ガウラの頭頂部を素早く叩いた塩王子が私達を睨み付けた後、牙を剥きだした蛇の頭に突き刺す。身動き取れない様に、いつの間にか全身を氷漬けされていた蛇は大剣の餌食となった。
「ニャ・・・(うぐ・・・)」
「死霊(デス)の森(フォレスト)と言う。この森には沢山の罠と魔物が居るからな。心して掛からないと、リオ以外の者は無傷で済まない場所だ」
軽々と剣を大きく一振りして、蛇の血を弾いて物騒な事を口にする。大して表情に出さない塩王子を眺めて、不思議に思って見ていると――
「俺は既にこの森を制覇したからな。先に進む事にする。お前達はハンスと共に来い」
じゃあなと言って、普段は目にする事の無い背中の黒い翼を大きく広げ、森の奥へと進んだ塩王子。残された私達四人は、木枯らしに吹かれ途方に暮れた。
「ニャアァァ(ハ、ハンスゥゥ・・・)」
あんの塩王子め・・・! 私とガウラの頭を叩く(※34話参照)は、こんな危険そうな森で放置するは・・・ドSだ。絶対ドS!! ディッセント国の、傲慢な王様と良い勝負してる。
灰色の飛竜(ロドス)さんに乗せてもらおうにも、森の中は狭いから一緒に入ってこれないみたいだ。私の頭に乗っかっている灰色ネズミに、なんとかしてと恨みがましい声を投げ掛けた。
「チュゥゥ(オイラは主のルビお嬢に、闇属性転移魔法(バレディス)で紫鉱城(ラドギール)まで転移して貰ったんだ。だから、屋敷に辿り着くにはこの森を通らないとオイラでも無理なんだよなーー・・・)」
「ばれでぃす?」
ガウラが、私の頭に乗っかってるハンスに問い掛けた。くるりと一回転して得意げに彼が喋る。
「チュウウウッ(魔族の世界で使える転移魔法(バレディス)は、闇属性の第二上級魔法だ。黒石があれば、魔族なら誰でも使えると思う。ファインシャートでは、光の精霊の恩恵が強すぎて黒石があっても転移魔法だけは使えないけどなっ)」
「ニャアアッ(そっかぁ・・・闇の精霊さんがいるんだねっ。じゃあ、光の精霊は・・・)」
「光源鳥・コンドルフォンよ♪」
耳に心地良い、女の人特有の高くて甘い声が聴こえた。
森の奥からゆっくりと姿を現した女の人は、良く見知ったあの人――
「ニャアアアッ(ルビリアナさんっ)」
「チュウウウッ(ルビお嬢――!)」
「ギャアアアッ(ルビリアナお嬢さま、お早う御座います)」
「おはよう、リオちゃん、ガウラ。ハンスとロドスも、案内御苦労サマッ」
先日着ていた服とは一転、真っ黒のボレロを羽織り、ラインストーンを散りばめた黒のワンピース姿のルビリアナさん。背中から真っ黒い翼を広げて宙に浮いている姿からは、黒衣の堕天使を連想させた。
「ニャア?(コンドルフォンって・・・?)」
“コンドルフォン”という、光の精霊の存在が気になって彼女に訊いてみた。するとルビリアナさんは目を伏せて、垂れ流した黒髪のひと束を指に巻き付ける。口から溜息を零す様は、内にある苛立ちを抑えるしぐさに見えた。
「光鳥の姿として擬(なぞら)えた、光の精霊・コンドルフォンを直接使役する使い手がファインシャート・・・ディッセントの国王だけだから、この目で確かめた事もないし分かんない。私は闇の精霊・・・グレイマイアと契約してるけど、使役するのはまだ無理だしぃー?」
頭がこんがらがってきた・・・。つまり、ルビリアナさんなら転移魔法は唱えられても、闇の精霊を使役する事は出来ないと言う事か。えっと、じゃあダークゲートは・・・? ファインシャートで使ってた・・・よ? 闇属性転移魔法(バレディス)とまた違うの? ややこしい話に目を回していると・・・
「フニャアアァァ(フワァァァ・・・もうだめ)」
「チュウゥゥゥ!!(ストップ! ルビお嬢、猫の嬢ちゃんが目を回してフラフラしてるぞっ)」
「ルビリアナッ、何とかしろ!」
「ん? あら大変。リオちゃんに何かあったら大変だものね♪」
漆黒の翼をはためかせ、私達の方へ近づくルビリアナさん。目を閉じて意識を集中してている。手にしたロッドの頭部分にある黒色の鉱石が、彼女の声に妖しく呼応した。
「黒石に宿りし深淵(しんえん)、言霊に乗せて転移の力を開放せよ、・・・――闇属性転移魔法(バレディス)――!」
ブンッ
黒くて丸い魔法陣が地面に現れ、足元からは黒い靄が溢れ出る。
目を開けたルビリアナさんの紫色の瞳はさらに力強く、長い黒髪が風により無造作にたなびいた。瞬間、何も見えなくなる――
****
「ニャアア――(ふへぇーー、な、なんだったのぉぉ・・・)」
自分の視界が黒に染められた途端、そこから別の景色を目にした。
ガウラから離れた場所に立ち竦み、生い茂った草を毛むくじゃらの前足で踏む感触に気づく。地面からフと視線を上げると、見た事の無い景色に絶句した。
「ニャ!」
「あれは・・・」
私の目に飛び込んで来たのは、沢山の木の枝が絡み合い“屋敷”を支えている光景だった。
一本の樹齢三千年位ありそうな大木と周りの木々や木の葉が支え、屋敷を空中で固定させている。
こんな高い位置にあるのなら、地上を這う生き物は屋敷に辿り着くのは困難じゃないのか。空を飛べない、木も登れない魔物限定だけど。
「ニャアア(デルモントは何でもアリだね・・・)」
「チュウウウッ(オイラの主は、魔族の王族に次いでの階級を持ってるんだ。下手な魔族より力を持ってるし、何よりここいらの魔物や樹木達はこぞってルビお嬢に媚びるんだ。お嬢の愛を受けたくてね。この世界じゃもう当たり前だよ!)」
「ニャ、ニャア~(へえ~~)」
そもそも自分の元居た世界と違うと知ってから、心構えは既に出来ていた。
でも紫鉱城(ラドギール)やマルルさんが造った砂の楼閣(ろうかく)に黒水晶の御神殿、目の前にある木の枝で支えられた屋敷を見たら、今までの目にした光景が可愛く思えるほどだ。
「ニャアアア・・・(太陽や星は無い、けどデルモントの方が進んでるってことはないよねぇ・・・?)」
「リオちゃん、私達魔族はデルモントで生き残るために、必死な想いで鉱石を使いこなせるまでになったのよ。ファインシャートへの行き来をクロウ家で管理するのに、闇の精霊・グレイマイアの信頼を得てまでね☆ ・・・ソルトス殿下は既に寛いでいらっしゃるし、部屋の中へ案内するわ。話はそれからよ」
普通に感じたままを喋ったら、ルビリアナさんが普通に反応してくれた。にこやかな表情だけど、目だけ笑ってない。彼女に感化されて、静かだった森が鬱蒼(うっそう)とざわめき出す。
ザワザワ・・・
「フギャァァッ(ヒッ、)」
「グルルウ・・・!」
「チュウウウウッ(ルビお嬢~~! オイラの事忘れてない? ねぇ!?)」
ルビリアナさんからの刺すような視線と、森からの敵意。
一瞬だけ、隠しきれない底冷えのする冷気を獣の本能で察知してしまった。
全身が総毛立つ。私を抱いてくれるガウラも感じ取ったのか、闘争心を体で示して唸りを上げていた。
ガウラの唸り声に正気を戻したのか、ルビリアナさんは表情を見せない様に私達の前を歩き出す。
屋敷の少し手前の所まで来ると、彼女は前方向に右手を上げて合図する。その仕草をした後、周りの木々が和らいだ雰囲気になり、木の枝がルビリアナさんの体をやんわりと包み込んだ。
「ニャニャニャッ(ほわぁ・・・!)」
「なっ、これは・・・!」
木々が意思を持つかの如く、ルビリアナさんの頬、肩や腕に甘えるように擦り寄っている。
「大丈夫よ、リオちゃん、ガウラ。大人しくこの子達に身を委ねるといいわ。ハンス、頼んだわよ♪」
「チュウウウッ(任せとけ、お嬢!!)」
ルビリアナさんの体に巻き付いた木の枝、足を支える枝と沢山の木々に持ち上げられた彼女は屋敷へと姿を消した。ハンスが見上げながらポツリと呟く。
「チュウウッ(ルビお嬢なら、黒翼で飛べば一瞬なのに・・・)」
「ニャア(はぁ・・・??)」
「チュウウウッ(猫の嬢ちゃんと、ガウラのおっさんが空を飛べないから、屋敷まで行けるようにやり方を教えたんだよっ。お嬢なりのサービスだ)」
枝にも驚いたけど、私の心臓は激しく動悸したままだ。
・・・もしかして、私は知らずにルビリアナさんを怒らすような事を言ったのかもしれない。とりあえず、ハンスの言う通りにして私を入れた三匹は、枝に乗っけてもらって招待に応じることになる。
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