私の趣味のマンドリンについてネットサーフィンしていますと、時折思わぬサイトに出会うことがあります。
Ginger's Genealogy (ジンジャーの家系)と題するサイトもそんなサイトの一つです。
このサイトは1900年初頭米国に生まれた人の家族歴を何代にも亘って丹念に調べ上げてネットに公開しているものです。
自分の先祖についてよくもここまで詳しく調べたものと感心します。
特別著名な人というわけではないですし私に何の関係もない人の家族歴そのものに特段興味はないのですが、先祖の家族の中にたまたまマンドリンを弾いていた人がいた関係でこのサイトの中のブログに”The Mandolin of Italy”と題したイタリアのマンドリンについて述べた箇所が出てきます。
市井の人が調べた内容にしてはとてもよく書けていますので拙訳ですがご紹介したいと思います。
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イタリアのマンドリン
イタリアのマンドリン
イタリアで最も際立った音色の一つにマンドリンのトレモロの音調があります。
トレモロと呼ばれるこの弾き方はとてもイタリアっぽく聞こえます。
マンドリンが人気のあったきっかけの一つに19世紀後半イタリアを統治したマルガリータ女王の存在がありました。
ピザのマルゲリータは彼女の名前に由来します。
女王は芸術の守護者で画家や作家、音楽家に資金を援助し、文化施設を設立しました。
そして彼女自身もマンドリンを弾き、多くの女性がマンドリンを弾くよう促しました。
(中略)
イタリアの長い伝統に音楽家が理髪師として生計を立てていました。
彼らは自分のマンドリンやヴァイオリン、ギターを理髪店に持ち込み手の空いた時演奏していました。
理髪という職業は肉体労働者として働くより音楽家の手をより良く保護し、日中早いうちに店を閉めるときは音楽家は広場に集まって夜遅くまで演奏することができました。
オペラ「セビリアの理髪師」では理髪師がマンドリンを演奏しました。
イタリアの女性はマンドリンオーケストラを結成しヨーロッパ全土で演奏しました。
(中略)
マンドリンはエジソンのシリンダー(円筒)型蓄音機で最初に録音された楽器の一つでした。
マンドリンアンサンブルは巡回公演を行い、学校や大学にマンドリンオーケストラが結成されました。
Rhode Island(注:米国北東部の州)在住のイタリア人移民Giuseppe Pettine(1876-1966)はマンドリンに興味を駆り立てられた演奏家の一人でした。
彼はアメリカに渡る前母国で神童として知られていました。
「The Mandolin」と呼ばれる短いドキュメンタリー「イタリアのセレナーデ」はイタリアのマンドリンの辿った道を語っています。
(中略)
本サイトのサイドバーにはイタリアのOld-time Trioという三重奏団が演奏するSulle falde dell’Etna (エトナ山の山腹にて)という素敵なビデオクリップがあります。
このトリオは19世紀後半から20世紀初頭にかけて作曲されたマンドリン、ベース、ギターのための伝統的なイタリアのダンス音楽の演奏を得意としています。
このトリオはローマ出身の3人のプロ音楽家で構成され、イタリアおよび海外で幅広く演奏しています。
「エトナ山の山腹にて」は20世紀初頭有名なイタリアのマンドリン奏者だったGiovanni Giovialeによって作曲されました。(翻訳ここまで)
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この記事がよく書けていると思いました理由に
・マンドリンの大家、中野二郎氏をして「マンドリンの母」と言わしめたマルガリータ女王のことが記されています。
Queen Margarita
・イタリアで伝統的に音楽家が理髪師として生計を立てていた話はGiovanni Gioviale(1885-1949)の伝記(本ブログのここ)にも出てきます。
・1900年前後のマンドリン演奏の録音事情(本ブログのここ)に言及しています。
・The Mandolin - The Serenade Of ItalyはYouTube(こことここ)にもアップロードされています。
・イタリアが誇るマンドリニストGiovanni Giovialeのことは本ブログ(こことここ)でも取り上げました。
Gioviale作曲の楽譜はネットにもいくつか公開されていますが「エトナ山の山腹にて」の楽譜は残念ながら見つかりません。
マンドリンに直接関わりないと思われる人がマンドリンの歴史についてツボを押さえてよくここまで書けたと思いますが、これにはきっと何か元ネタがあるのではとよくよくネットを探しましたらやはりありました。
Essence of Italyというサイトの中の”The Mandolin : The Serenade of Italy”と題するブログです。
Essence of Italyはとても素敵なサイトで、中にイタリアの著名なマンドリニスト、Carlo Aonzo(1967-)についての記事(こことここ)も見られます。
Carlo AonzoのCDについては本ブログ(ここ)でもご紹介しました。
こうして興味を繋いでネットサーフィンは次から次へと広がってゆきます。
切りがありませんのでこの辺で。