紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「空白の起点」笹沢左保

2005年05月30日 | さ行の作家
初・笹沢左保です。なんだか“2時間サスペンスの原作”という
イメージが強い方ですが、読んでみても、そういった雰囲気を
醸しつつ、息をつかせぬ展開でぐいぐいと引き込まれていきます。

大阪出張の帰り、新幹線の中から小梶鮎子は男が真鶴の海岸付近で
突き落とされるの目撃する。東京に着いた鮎子のもとに、その男性が
父であることが知らされる。その父には多額の生命保険がかけられて
いたことから、保険会社の調査員・新田が調査を始め…。

どこか“陰”のある主人公(新田)が事件の真相に迫っていく、その
臨場感がたまりませんね。男女の機微も、なんだかとっても
“大人の香り”がしますですよ(笑)。とはいっても、鮎子は19歳。
新田だって、中年と呼ぶにはまだ早い30代前半ですよ。
なのに、私から見ても“大人の香り”に溢れているなんて。
こういう物語を現代(といっても、そんな昔の作品ではないけどね)に
持ってきたって、こうもサスペンスフルな展開にはならないでしょう。
なんだか時代に合わせて、自分も子供に戻った感覚で読んでました。
ちなみにテーマ曲は「聖母たちのララバイ」だったり(笑)。


空白の起点」笹沢左保(ケイブンシャ文庫)