笠森観音（笠森寺） [千葉県]

千葉県長生郡長南町に笠森観音という名前のお寺があります。

わたしは仏像が大好きで、京都や奈良には年に4回ほどのペースで通った日々もありました。
山に恋してしまってからは関東甲信越をあちこち大移動することが多くなり、寺・仏像めぐりは数年に一回程度しか行かなくなりましたが、古都の香りのするお香を焚いていると、想いはいつもかの地へ飛んでいきます。

千葉県にも歴史のあるお寺はいくつかあるのですが、今まで一度も観光目的で行ってみようとしたことはありませんでした。
どこかに行きたい、でも遠くまで行くほどの時間と体力の余裕がない…
そんな時、突然の思いつきで千葉の寺を調べ、この笠森観音に行ってみることにしました。

プカプカの暮らす街から40kmほど車を走らせていくと、山と呼ぶにはちょっと心もとない標高100～200位の小さな盛り上がりと、田園や自然林が広がります。
今まで千葉を走っていても意識したことのなかった自然風景の姿が、この日は不思議とみんな新鮮で美しく見えました。
その静かでゆったりした時間の流れる場所に、笠森寺（通称 笠森観音）というお寺があるのです。

延暦3年（784年）に最澄が開祖したと言われているそうです。
ここの本堂（観音堂）は重要文化財に指定されていて、古くからあった岩山を覆い隠すように四方懸造りという舞台造りになっています。
京都で有名な清水寺を小さくしたような感じです。（トップの写真がその本堂）

寺の周辺は千葉県笠森鶴舞自然公園にも指定されており、
自然に包まれた静かな景勝地となっています。（「infoちば」より抜粋）

安政6年 (1859年)に安藤広重が描いた浮世絵です。


昔はこんな造りだったそうです。現在の実物はこの絵の半分程度の大きさです。
足場は大半がコンクリートで固められていて、絵のようなむき出しの岩は本堂の軒下に少し残っているだけでした。(下の写真がそれ)

本堂の上まで昇ることができます。急な外階段をゆっくりあがっていくと、目の前に広がる景色。写真では木々に邪魔されてよく見えないけど、遠くに千葉県の低山の山並が広がっていて、なかなかの開放感です。
寺の周りを囲む古木達も昔はもっと背丈が低くて、景色はさらに丸見えだったんでしょうね…

本堂の中にはご本尊の十一面観世音菩薩像が祀られていて、これまた寺の創立当時のものらしいのですが、思った通り非開帳…
厨子の中に隠れて見えません。

厨子の前には金ピカで真新しい観音菩薩立像が祀ってあります。
多分中に隠されているご本尊のコピーなんだろなぁ…

本堂を降りて、寺を囲む自然公園の中の遊歩道を散策してみました。

　三本杉　大きくて立派なスギの木の根元がつながってます。樹齢何年くらいなんだろう



千葉の古くからの自然公園というのは、
不思議とどこも妙な空気が漂っていて、
普段歩く甲信越などの山の中とは少し違う感じがします。
人里に近いせいもあるかもしれませんが、
なんだか霊的なものを感じるんです。
（怖い方じゃなくて少し神聖な）
じっとりと重たい空気。
木々の間からこぼれる光の少ない感じ。
苔の匂い。しけった匂い。

しっとりとした古くて立派な木々はみんな背が高く、
森の中にあまり光を通さない為、薄暗いのがかえってその感覚を盛り上げます。
嫌いじゃないんだけど、ちょっと怖いような…

これはこれでひとつの魅力なのかもしれないなぁ…
神さまか、はたまた日本の妖怪がすぐ近くにいるような、神々しくてあやしい、重たい森林の空気。

 

笠森観音（笠森寺）公式ホームページ

笠森観音番外編、ここで出会った猫のお話→神さまの近くにいる猫